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花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
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総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
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牧野を腕の中に閉じ込める。
どこにも行かないように。
他の誰かが牧野の目に入らないように。
そう、俺の腕は柔らかな檻なんだ。
牧野を捕らえて逃さないようにする為の檻。
素直に抱き留められているこいつは、俺を見上げて、ふんわりと笑う。
そしてふっくらとした頬を俺の胸に添わせて、「こうしていると安心する。」と呟いた。
俺はちっとも安心なんか出来やしない。
こんな時間はいつこの手から零れ落ちてしまうか分からない。
檻の格子は隙間だらけで、今手にしている温もりは、ほんのひと時気を抜いただけでもするりとすり抜けてしまうかもしれない・・・という思いに苛まれてる。
牧野を抱き寄せているのに不安で手が震慄そうで。
確かな体温を感じているのに、背筋には冷たい感覚が走る。
幸せな筈なのに、身体中を針で刺されているかのような痛みに、瞼の裏がチカチカする。

「西門さん・・・?」
「・・・何だ?」

牧野が切なそうな目で俺を見上げて来た。

「ねえ、今夜は満月なんだよ。
知ってた?」

俺の胸に当てられていた掌が、いつの間にかきゅっと俺の服を握り込んでいる。
のんびりとした言葉とは裏腹に、視線も、手の動きも、必死に俺を求めているように感じられた。
牧野からそんな風に想われて嬉しくて、愛しくて。
その一方で胸がぐっと苦しくなる。

どうして俺は幸せだけに浸っていられないんだろう?
いつだって温かな気持ちは、ひやりとした危機感と背中合わせで。
愛しくて堪らない牧野を抱き締めてるのに、こいつを失くしてしまったらどうすりゃいい?って頭のどこかで考えてる。
口にはしないけど、きっとこいつも同じように思ってるんだろう。
そうじゃなきゃ、こんな切なそうな眼差しで俺を見上げてきたりしない筈だ。

「まだ寒いから窓開けて月見って訳にはいかないな。
月見団子とか食べたかったんだろ、つくしちゃんは?」

牧野の纏う切羽詰まった雰囲気を変えたくて、態とそんな言葉を掛けたのに、牧野はいつも通りに憤慨したりしない。
代わりに「ううん・・・」と小さく首を振って、もう一度俺の胸に顔を埋めてきた。

ああ、そうか。牧野も怖いんだ。
本当はこいつも俺と同じ気持ちでいる。
『安心する』だなんて言葉、自分に言い聞かせる暗示みたいなもので、本心では俺がいつか何処かに行っちまうかも・・・って思ってるから、こんな風に縋り付いてくるんだ。

改めてしっかりと力を込めて抱き締めて、互いの体温と鼓動を感じ合う。

「・・・もう少ししたら2人で桜を観に行こうな。」
「桜・・・?」
「そう。辺り一面に花びら舞い散らせて、地面を真っ白に染める桜の木。
観に行こうぜ。」
「うん、観たいな、そんな景色。」
「夏は温泉な。」
「夏なのに温泉?
冬に温泉じゃないの?」
「山の上に温泉宿があって。
そこの大きな窓から海が見える。
夜、その海に花火が上がるんだ。
それをお前に見せてやりたい。」
「へえ、それも素敵そう・・・。」

確かな未来を掴み取れない俺達の、小さな小さな約束。
そんな約束を繰り返して、明日への希望を繋いでく。
桜の花が咲く時も、海に花火が上がる時も、今日と同じく2人一緒にいられるように。
牧野を腕の檻に閉じ込めながら、そんな事を願う。

窓の外で輝く月の光が、今夜だけでも俺達と他の世界とを隔てる光の檻になればいいのに。
全ての憂いをその澄んだ輝きでかき消して。
俺には牧野だけ。
牧野には俺だけがいればいい。
他には何もいらないから。
何も望まないから。
朝が来るまで俺達をそっと見守っていてくれ。


_________



今日、3月7日は満月です。
満月にちなんだお話を何か…と考えて、こんな2人になりました。
ちょっと切なめ成分多め。
月の出は今日の夕方。
月の入りは明日の明け方。
一晩中、そっと2人の上に輝いてくれるはず。

花粉、すごいですね…
どこに行くにも柔らかティッシュ必携です。
花粉症の方、頑張りましょう!


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