アップルのiPad Pro炎上CMにサムスンが一撃 「クリエイティビティーはCrushできない」Marketing Dive

Appleらしからぬマーケティングの失敗から数日後、Samsungは「Galaxy Tab S9」を訴求する動画で、クリエイティビティーを「押しつぶさない(#UnCrush)」と約束した。

» 2024年05月18日 11時00分 公開
[Peter AdamsMarketing Dive]
Marketing Dive

 Marketing Diveが入手した情報によると、Samsungのモバイル部門は、クリエイティビティーに敵対すると批評家たちから不評を買ったAppleの新「iPad Pro」の宣伝動画に対抗する独自のスポットを公開した。

 「Crush!(押しつぶせ!)」と題したAppleの動画は、巨大なプレスが画材や楽器を押し潰して最新のiPad Proが生み出されるという内容だった。これに対してSamsungの動画「Creativity Cannot be Crushed(クリエイティビティーは押しつぶされない)」では、Appleの広告の余波と思われる残骸の中をさまよふ人物がボロボロのギターを手に取り、Samsungのタブレットの助けを借りて演奏を始める様子が描かれている。

制作を担った広告代理店は「これは単なる返答ではない」と語る

 Samsungの新たな動画は、競合のAppleがクリエイターたち(彼らはタブレットの大きなターゲット層でもある)を激怒させたから広告動画の失敗から立ち直る前に一撃を加える狙いがある。広告代理店のBBH USAと映像作家のゼン・ペイス氏は、Appleの失敗を受けて「Creativity Cannot be Crushed」をわずか数日で制作した。これは、マーケターや広告代理店が刻々と変化するソーシャルメディアでの会話をキャッチするために、厳しい納期を守らなければならないことを物語る。

 Appleはすでに「Crush!」について謝罪し、2年ぶりのiPad発売を盛り上げようと作られたこのクリエイティブのためのメディアプランの幾つかを止めた。最新のiPad ProはApple史上最薄のデバイスで、この広告では、ピアノや彫刻などのさまざまなオブジェクトを1つのコンパクトなタブレットに押し込む巨大な金属プレスを描写することで、その品質を示していた。

 「Crush!」にはさまざまな解釈が可能だ。iPad Proにはさまざまなメディア機能が集約されていることを示唆している他、TikTokなどで人気の、油圧プレスがあらゆるもの(キャンディーから毛糸のスプールまで)を破壊する動画を意識している可能性もある。

 しかし、多くの視聴者はこのApple内製の動画がクリエイティビティーへの攻撃と捉えた。生成AIが台頭する中、人間の手による芸術に対する感度は高まっている。AppleはiPad ProをAIに対応する装備として宣伝している(それはSamsungも同様だが)。

 Samsungは、Appleにしては珍しいマーケティングの失敗を機にGalaxy Tab S9シリーズをプッシュし、自社のCMを単なる揶揄以上のものと位置づけようとしている。このスポットでは、ミュージシャンが瓦礫の山からボロボロのギターを拾い上げ、Appleの「Crush!」に出てくるプレス機に似た金属製のプラットフォームの近くに座り、Galaxy Tab S9に表示された楽譜を頼りに歌をかき鳴らし始める。締めくくりには「Creativity Cannot be Crushed」のテキスト、そしてGalaxy Tab S9 SeriesのブランドとGalaxy AIの伝が映し出される。

 「これは単なる返答ではなく、全てのクリエイティブな魂を祝福するものだ。真のアーティスト、メーカー、クリエーターは、クリエイティビティーが常に道を見つけることを知っている」と、BBH USAのエグゼクティブクリエイティブディレクターであるエステファニオ・ホルツ氏はメールでの声明の中で言っている。

 「Creativity Cannot be Crushed」は現在、YouTubeとX(旧Twitter)で公開されており、「私たちは決してクリエーティブを押し潰さないでしょう。 #UnCrush」というキャプションが加えられている。Marketing Diveはこのスポットのの背後にあるメディアプランについて問い合わせており、返答を待ってこの記事を更新する予定だ(※)。

※編注:原文公開後の2024年5月17日、BBH USAのスポークスパーソンが、Samsungの「Creativity Cannot be Crushed」の広告はソーシャルメディアのみで展開しており、広告としては使っていないことを確認した。

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