死ぬ間際に見るという走馬灯、
言葉では知っていましたが、リアルに考えたことなんてありませんでした。
この物語には、走馬灯を描く旅をアテンドする会社〈ブレーメン・ツアーズ〉が出てきます。
なんとも怪しい会社ですが、不自然に感じることもなく引き込まれました。
「死ぬ間際に自分はどんな走馬灯を見ることになるんだろう?」
その走馬灯を描き換えることができるとしたら、
自分だったら依頼するのだろうか?
読んでる最中はずっとこんなことを考えていました。
この物語の主人公が16歳の高校生だっていうのもいいですね。
他人の走馬灯を覗く能力を見込まれ仕事の手伝いをすることになるんですが、
自分を捨てた母親との関係もあって、
彼女の視点から見ると、大切な関係にある人の走馬灯の方が気になるみたい。
「大切な思い出は、正しい思い出とは限らない」とか、
「幸せな思い出と、幸せそうな思い出というのは、違うんだ」とか、
「悔いのない人生が幸せな人生だと、みんな思っている」など
グッとくるこんな言葉から、自分と近しい関係の人のことも考えました。
<死>が常にフォーカスされて、そこから<生きる>ことが逆照射される。
テーマは重いけど、主人公が16歳と若いので全体的にさわやかな印象。
400ページを超える分量なのに、一気に読めてしまう。
読んでる最中ずっと良い気持ちでいられました。
ずっと以前ですが、職場の同僚に「重松清の作品が好きそう」って言われました。
そのときは唐突すぎて、しかもなんか決めつけられたのも嫌だったので、
複雑な気持ちだったのですが、
「好きかも・・・」
今なら素直に言えそうです。