際限のない拡大、置き去りの精神、喪失と喪失と喪失
「あなたには特別な能力があります」
ある日、男のもとへ現れた老紳士が告げた。
それは死者の能力を吸収する能力。
しかし使い道がなかった。
能力者たちの組織へ案内されたものの、特別なことをできないのは自分だけだった。
特別なようで、特別でない。
やがて老紳士が体調を崩して入院し、見舞いに行っていた男の目の前で死亡した。
男は能力を手に入れた。
それは能力者を探知する能力。
世界が少し違って見えた。
街へ繰り出した。
たくさんの能力者がいた。
彼らが死ねば、もっとたくさんの能力が手に入る。そのことに気づいた男は、さらに街を徘徊するようになった。
能力は増えていった。
際限なく。
組織も異変に気付き始めた。
もう、あとへは引けなくなっていた。