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「『遙か』よく知らんけどこんなん泣くしかなくない?」未プレイ勢をも魅了するネオロマイベントはすごい

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 「いや、ゲーム遊んでへんから細かいことは分からんけど、こんなん泣くしかないやん」と友人は言った。私は泣いていたので返事が出来なかった。『遙かなる時空の中で』シリーズ(以下、『遥か』)の20周年を記念して開催された、『遙か二十年祭』のことである。2020年9月19・20日に計4公演、『遙か』の中でも1~4の各タイトルにフィーチャーした、朗読劇メインのステージイベントだ。

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(画像は遙か二十年祭より)

 ネオロマ未経験の友人を誘って、Skypeで通話しながら見ていたのだが、キャスト陣の作品への熱い愛、その熱量をファンの元へ届けるためのスタッフの創意工夫、Twitterや公式チャット欄で飛び交う神子【※】の温かい言葉たち、そのすべてに心を打たれて感動してしまったのである。
 イベントが終わったあと、友人は様々な場面を反芻しながら、繰り返し「遊んだこと無かったけど、普通にめちゃめちゃ感動してしまったし、何なら泣きそうになった。絶対にプレイします」と決意して、Vita版の『遙かなる時空の中で3』を購入していた。とても正しい判断である。
 そう、本当に良いステージイベントは、ファンのために……というだけではなく、新規勢をも引き込んでしまう魅力があるものなのだ。

※神子
『遙か』のプレイヤーキャラは「龍神の神子」として異世界に召喚される。転じて、本公演のようなリアルイベントでは、演者がファンに向かって「神子様」と呼びかけるのが恒例になっている。

 本記事は『遙か二十年祭』の千秋楽、『遙かなる時空の中で』(以下、『初代』)にスポットを当てた公演のイベントレポートだ。ここまでお読みになった方はすでにお気づきだと思うが、筆者の主観たっぷりで、印象に残った場面を振り返っていく。「そうそう、楽しかったよね~!」とか「いや~私はこう思ったけどなあ」などと、思い出の縁にしていただければ幸いだ。

文/甘色


開演挨拶と閉演挨拶から心を鷲掴みにされる

 「そっから!?」となる人もいるかもしれないのだけど、ここからもうめちゃくちゃ良かったのだ。作中の登場人物が公演の注意事項等を説明するために「プラットフォーム」「アカウント」などのカタカナ語を使うのだが、一通り終わった後に「詩紋から教えて貰った」「天真から教えて貰った」などと、ワンクッション入る。これがめちゃくちゃ嬉しかった。平安時代のキャラクター、という設定をしっかり守っている。ごく細やかな部分だけれど、こういう気遣いが丁寧でとても嬉しかった。

 特に閉演挨拶を担当された源頼久役の三木眞一郎さん。「プラットフォーム」や「アカウント」などの発音が、非常にぎこちない「ひらがな発音」になっていた。演技の細やかさがすごい。

オンラインイベントならではのバラエティコーナー

 登壇者のうちひとりが回答者、残りは漢字一文字のヒントを出して、お題を当てるクイズゲーム。アクラム役、置鮎龍太郎さんの滑らかな司会で進んでいく中で、森村天真役、関智一さんの「ちょっと飛躍したヒント」に三木眞一郎さんが「それは個人の体験ですって(テロップを)出した方がいいかもね」と冷静な突っ込みが入るなど、20年の間に培われた、キャスト間の和気藹々とした絆を感じられた。

 バラエティコーナーには神子たちも参加できた。Twitterのアンケート機能を使い、「回答者と一緒にお題を予想して、4択のうちどれが一番ヒントとして適しているか」を投票する、という形である。公演のチャット欄や、#遙か二十周年祭り のタグが付いたツイートでも「え、答えが普通に分からない」「答えじゃなくてヒントを選ぶんだよね?」などと、登壇者と一緒に右往左往する様子が見られた。リアルイベントとはまた違う、オンラインイベントならではの楽しい時間だった。

メインドラマ「心に咲く向日葵」

  本イベントのメイン企画である「心に咲く向日葵」。あらすじは次の通りだ(公式サイトより引用)。

八葉による四神の解放は青龍を残すのみ──焦るアクラムに呼び出されるラン。命じられるまま強力な怨霊を生み出す。
穢れに弱い神子が倒れ、さらにアクラムの卑劣な罠により、神子が連れ去られてしまう。
神子を取り戻すため、あとを追う八葉の前に立ちはだかるランに、天真は必死に語り掛けるが──……。

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(画像は遙か二十年祭より)

 「ランちゃんが出るの! キャスト欄に桑島法子さんが居る!? 乙女ゲームのステージイベントで、ライバルキャラが声付き出演!?」と、筆者はもうあらすじを見た段階から大喜びしていた。実際に始まってみると、シリアスな場面が主体となっているけれど、朗らかで楽しいシーンも要所に挟まり、『初代』の上品な魅力が詰まった王道のシナリオだった。

 とりわけ嬉しかったのが、八葉の各コンビによる協力技の詠唱シーンがあったことだ。ボイスのみ参加だった、安倍泰明役、石田彰さんの声と、永泉役、保志総一朗さんの声がぴったり合わさっていたのを聞いた瞬間、筆者は思わず泣きそうになってしまった。
 遙かは乙女ゲームだけど、戦闘要素も含まれているアドベンチャーゲーム。その要素も拾ってもらえたのが、『遙か』の世界を余すことなく味わわせてもらえているようでうれしかった。

 公演後、制作担当者による「裏話」が公開されたのも、楽しいオマケだった。ドラマの中で詩紋が作っているお菓子、筆者も大変気になっていた。

永遠の神子・川上とも子さんの話題

 乙女ゲームにおいて、最大の魅力はもちろん攻略対象の男性キャラクター達なのだけど、忘れてはいけないのが、プレイヤーの依代であるヒロインたちの存在だ。筆者は『遙か』のヒロインである、「龍神の神子」達が大好きなタイプの神子だから、『初代』から『4』までの全作品でCVを担当された川上とも子さんの話題が出た瞬間、涙腺がボロボロになってしまった。

 関智一さんいわく、川上とも子さんが遙か祭に初めて登壇された際、「神子の皆さまから受け入れて貰えるか不安」と袖で泣いていらっしゃったそうだ。筆者も泣いた。乙女ゲームは様々な楽しみ方のある作品で、そこが魅力ではあるのだけれど、私にとっての『初代』は、元宮あかねという女の子がいることによって完成する物語だったからだ。

 Twitterや公式チャット欄でも、川上さんの声を懐かしむ意見が多数見られた。大変に残念ながら2011年に他界されてしまったが、神子たちの声が天国まで届いていればいいな、と思う。
 川上とも子さん。『遙か』の世界のヒロインたちに、声を吹き込んでくださって本当にありがとうございました!

ライブコーナー「遙かなる時空を越えて」

 『遙か二十年祭』はカメラワークも行き届いたイベントだったのだが、筆者が一番気に入ったのが、ライブコーナーで橘友雅役の井上和彦さんと隣の空席が一緒に映ったカットである。誰もいないその空間を見ていると、イベントを欠席されることが決まった藤原鷹通役・中原茂さんのことが思い浮かんだ。
 橘友雅と藤原鷹通は共に白虎を司る八葉で、例えばグッズが出る際など、セットで扱われることが非常に多い生み合わせだ。その橘友雅を担当した井上和彦さんと「空席」がともに映ったというのは、つまりそういうことなのだと思う。

 オリジナルキャスト全員の温かい円熟した声で紡がれる美しいメロディ。作品の情景を見事に描いた端整な日本語。耳に溢れる幸福感で脳みそがくらくらしていたところに、突然、エモの極みのような風景を見せつけられて、何が起こったのか分からなくなってしまった。Skypeで通話していた友人いわく、筆者は突然笑い出したらしい。感情が昂りすぎると、人間はバグる。

「本当にもう何もかも有難うございます」

 公式学パロは「そうそう! 公式学パロってこういうのが見たかったんだよ~」って感じだったし、キャラソンコーナーは、他の神子たちの思い出も一緒に振り替えることができてうれしかった。本公演の良かったところ、楽しかったところを挙げていくと、言及しなければいけない場面が多すぎてキリがないくらいだ。

 関智一さんの「ネオロマイベント登壇100回記念 花束贈呈」のコーナーでは、「八葉のキャスト全員で100回登壇を目指そう」「応援してくださる皆さんの声援は、どこに居ても僕たちの耳に届いています。ありがとうございます」と締められたのだが、お礼を言いたいのはこちらの方だ。20年以上にわたって、作品の世界にどっぷり浸れるイベントを開いてくれたスタッフの皆さま、そしてTwitterやチャット欄で一緒にイベントを盛りあってくれた神子の皆さま方、本当にありがとうございました。

 これからも神子の一人として、『遙かなる時空の中で』という作品を楽しんでいきたいと思います。

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著者
「『遙か』よく知らんけどこんなん泣くしかなくない?」未プレイ勢をも魅了するネオロマイベントはすごい_003
FGOやあんスタ、まほやくなどのソーシャルゲームが主戦場の新人ライター。FFやテイルズオブシリーズ等のRPGも好きだが、ペルソナ5で難易度イージーを選んでも、最初のダンジョンで心が折れかけるくらいゲームがド下手。最近は乙女ゲームの履修にも力を入れている。

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