フロント2輪+リヤ1輪の「トリシティ125」は、「ニュースタンダードシティコミューター」をコンセプトとして2014年に国内発売された。トリシティ125の2つの前輪は、コーナリング時には通常のバイクのようにリーン(傾斜)して自然な操作感を実現しつつ、直進時には高い安定性も兼ね備えているのが特徴だ。ヤマハは、トリシティ125のような車輪および車体全体がリーンして旋回する3輪以上のモビリティを、LMW(Leaning Multi Wheel=リーニング・マルチ・ホイール)と呼んでいる。

文:小川浩康 写真:コイズミユウコ

スマートキー、スマホ連携と最新機能も充実

従来のバイクユーザーに加えて、「二輪車に興味がない人」「小回りのきくコミューターを求める四輪ユーザー」「コミューターの新しい楽しさを期待する人」を想定して、新たなコミューターとしてLMWを開発したヤマハ。トリシティ125は、そのLMWの第一弾として2014年に登場した。

2018年にはVVA(可変バルブ機構)を装備し、高燃費と走る楽しさを両立したBLUE COREエンジンを新設計フレームに搭載。その後はカラー変更をしつつ、2023年にはBLUE COREエンジンを最新排ガス規制に適合。アイドリングストップ、静粛にエンジンをスタートするSMG(Smart Motor Generator)、スマートキーシステム、スマホと連携することで着信履歴や燃費管理が行なえるYコネクトに対応するなど、便利な機能が充実している。

フレームは強度と剛性バランスが見直され、ホイールベースは1350mm→1410mmへ延長。前後サスも見直され、自然な操縦性と接地感を実現している。このモデルからABSに代わり、前後ブレーキが連動するUBS(Unified Brake System)を装備。リヤの制動力配分を増やし、ブレーキかけはじめからスムーズな減速が可能になった。2024年3月に新色のマットグリーンが追加された。

Y-Connectの詳細はYAMAHAオフィシャルサイトにて公開中

TRICITY125の足着き性をチェック!

リーンしやすく、リーンした時に抜群の安定感がある!

フロントが2輪で、フロントサスは片側2本の合計4本。構成パーツが増えているので、車体を押し引きした際にはフロント回りに重さを感じた。ただ、ハンドル切れ角は通常のバイクと大差なく、押し引きしている時の取りまわし性は悪くない。

車体を直立させている状態でハンドルを切ろうとすると、フロントは2輪で接地しているので通常のバイクよりハンドル操作はかなり重く感じる。また、直進している時はフロント2輪の接地幅も変わらないので、通常のバイク以上の安定性が感じられる。ライダーが修正舵を当てなくても高い直進安定性が発揮されるので、街中を走行しているだけでも疲労が軽減されているのが分かる。

ところが、車体を曲がりたい方向に少し傾けると、フロント2輪もその傾きと同調するので、車体はスッと向きを変えていく。この時の車体の動きは通常のバイクのようの軽くてスムーズなので、コーナリングも非常にスムーズにできる。それでいてフロントは2輪で接地しているので、コーナリング中の姿勢は通常のバイク以上に安定している。

フロントからスリップダウンする感じがしないので安心してコーナリングができ、倒し込みもスムーズなので積極的にコーナリングを楽しみたいと思える。抜群の直進安定性と超スムーズな旋回性を両立しているのがLMW機構の特徴で、変速もATのトリシティ125はバイク経験の少ない人でも扱いやすいコミューターになっていると思った。

LMW入門として一度は乗っておきたい

トリシティ125の操作性は通常のコミューターと変わらないが、直進安定性ははるかに高く、滑りやすい雨の日や荒れた路面でも安心して乗ることができる。旋回性のよさはスポーツモデル並みだが、コーナリング中の安定性も通常のバイクよりトリシティ125のほうが高く感じられた。前後サスの衝撃吸収性もよく、とくにフロントはタイヤでも衝撃を吸収しているのが伝わってきて、乗り心地もかなりいい。こうした安定性とコーナリング性の両立がLMW機構ならではの特徴で、それを誰もが操作しやすいATで実現し、既存のバイクユーザー以外にも、乗りやすいコミューターとして訴求しているのがトリシティ125だ。

ただ、LMW機構は重量増にもなっていて、機構の大きさは足下やフロントトランクのスペースを減らしている。また、発進時にも車重が影響し、スロットルを開けてトルクが立ち上がってきも、ワンテンポ遅れてから加速力が発揮される。車体が動き出せば、その後の加速の伸びはスムーズで、交通の流れをリードする軽快な走りもできる。

押し引きの重さ、収納力の少なさといったコミューターとしてのデメリットはあるものの、抜群の安定性とコーナリング性を両立した走りの楽しさはLMW機構を持つトリシティ125ならではのものだ。ヤマハらしいスポーティな走りをATで楽しみたいという人には、まずはトリシティ125をおすすめしたい。

【2024年型ヤマハTRICITY125主要諸元】

・全長×全幅×全高:1995×750×1215mm
・ホイールベース:1410mm
・車重:168kg
・エンジン:水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒124cc
・最高出力:12PS/8000rpm
・最大トルク:1.1kgf
・燃料タンク:7.2L
・変速機:Vベルト式無段/オートマチック
・タイヤ:F=90/80-14、R=130/70-13
・価格:49万5000円

【試乗】安定性と旋回性が共存。トリシティ125はコーナリングも楽しい! ギャラリーへ  (20枚)

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