元営業社員を書類送検した周南署

　第一生命保険の徳山分室（山口県周南市）在職中に顧客24人から計約19億5千万円をだまし取ったとされる元営業社員女性について、「亡くなった」と同社側が一部の関係者に伝えていたことが17日、分かった。2021年5月にこの元社員=当時（89）=は詐欺容疑で書類送検されたが、山口地検周南支部は「年齢や健康状態など」を理由に同11月に起訴猶予処分とした。本人が問題について公の場で語ることはなく、使途や動機などの真相は明らかにならなかった。 元営業社員を巡る主な経緯 　20年7月に解雇された元社員は、同市から兵庫県内に転居し、被害者たちが起こした損害賠償請求訴訟も成年後見人が対応。本人は姿を現さなかったという。関係者の一人は今年に入り、「昨年暮れごろに亡くなった」と同社側から説明を受けた。 　同社は20年10月にこの問題について発表し、同12月、当時の稲垣精二社長が謝罪する事態に発展した。 　元社員について、同社広報は中国新聞の取材に「雇用関係は終了しており、現況について把握、回答すべき立場にはない」と説明している。 　元社員は同社在籍中に周南市で長く営業に従事。トップクラスの成績で、社内で唯一の「特別調査役」の肩書を与えられていた。勤続50年や特別調査役の就任を祝うパーティーには地元政財界の有力者が多く出席した。 　だが、その特別な地位が不正を助長したとみられている。同社の報告書によると、元社員は02～20年に「成績優秀者のみに認められた高い利子がつく自分専用の特別枠がある」などと顧客に架空の資産運用を持ち掛け、手書きの「お預かり証」を渡して現金を詐取していたとされる。言動を問題視する指摘もあったが社内で共有されず、不正の兆候が見過ごされていたという。 　同社が公表した被害者24人の多くは山口県内の在住とみられる。同社は21年3月、当初の方針を改め、被害の全額を元社員に代わって弁済する対応を発表した。 　同社広報は「被害者全員に対し、被害金額の弁済を完了している」と明らかにした。