【山根視来のMLS挑戦記/第4回】カップ戦の斬新なレギュレーションと超一流の元ドイツ代表ロイスの衝撃
PK戦では川崎での経験が活きる
今年の日本の夏は連日の猛暑と聞いていましたが、皆さん、いかがお過ごしでしょうか? MLSではリーグ戦の合間、7月末から8月末までにリーグスカップが行なわれ、ギャラクシーはラウンド32で敗退し、その後の2週間少々、少しのオフを挟んだ後、リーグ再開に向け練習に励んでいました。 【画像】セルジオ越後、小野伸二、大久保嘉人、中村憲剛ら28名が厳選した「J歴代ベスト11」を一挙公開! そのリーグスカップは盛り上げるため様々な方法が取られていました。カップ戦と聞けば、ルヴァンカップのような1年を通した形をイメージしそうですが、こちらは夏の約1か月で初戦から決勝まで駆け抜けます。 さらにMLSの全29チームに加え、メキシコリーグ(リーガMX)所属の全18チームが参加。アメリカ開催なので(去年のリーグの順位でホームとアウェーが決定)、グループステージでのチーバス(グアダラハラ/メキシコ)との一戦は、相手のホーム試合として、ギャラクシーのスタジアムにチーバスのサポーターが8割ほど入る形で開催されました。ちなみにメキシコのサッカー熱は高く、スタジアムの外では歌が響き、花火が打ち上げられ、一部で警察が出動する事態にもなったとか(苦笑)。 またグループステージを3チームずつで戦うのも珍しく(上位2位チームが勝ち抜け)、グループ内に必ず休みのチームが出たり、他クラブ同士の結果を受けて勝点計算をしたりと独特な駆け引きがあります。 さらに斬新なのは90分を終えてドローだった場合、グループステージからPK戦が導入されていること。90分で勝てば勝点3、PK戦で勝てば勝点2、PK戦で敗れれば勝点1、90分で敗れれば勝点0と、昔のJリーグのようなルールが盛り込まれています。実際にチーバス戦は2-2のスコアでPK戦へ。僕は6番目のキッカーでした。助走の際にキーパーに挑発されているのが見えましたが、タイミングを外して上手く決めることができました。 これは昨年の川崎で、天皇杯決勝のために(小林)悠さんから「ミキがやったら絶対に入る!!」と言われ、2か月ほどチームメイトに助けられながら猛特訓した蹴り方が改めて活きました。それまでPKはあまり得意ではなかったのですが、運ではなく駆け引きと度胸が大切だと再認識しましたね。 そして夏のニュースと言えば、皆さんご存知の元ドイツ代表、マルコ・ロイスがギャラクシーに加入したことです。そこから数日後には、恐らくドルムントでの昨シーズンのチャンピオンズリーグ決勝後、初と言えるくらいの練習のはずでしたが、その一発目でファーサイドに流れてきたボールを左足で、逆のポストへ向けて“えげつないボレーシュート”を決めていました。 周囲は「え...!?」と驚くばかりでしたね。さらに、そのシチュエーションでボールを受けたら難しいでしょという場面でも、トラップの角度で解決しちゃう。上手いって言葉がまさに当てはまるプレーの数々を見せてくれています。 以前、(南野)拓実に(トレント・アレクサンダー=)アーノルド(リバプール)のクロスについて訊いたことがあるんです。そうしたら「ピンポイントで狙い通りのものすごく良いクロスが上がる時ってあるでしょ。それを毎回蹴っている感じ」って話していましたが、それを思い出しました。 一流の選手ってほぼ毎回、僕らが理想とするプレーを体現するんだなと、これが本当の“質”なんだと実感しましたね。ちなみにロイスは英語も喋れるのでコミュニケーションを取っています。 最後にプライベートネタを少し。マリブビーチという家から30分ほどの美しくて大好きな場所があるのですが、先日そこでくつろいでいたら、鳥のフンを5発も落とされてしまって(笑)。あとはLAの山のほうでは僕が地球上で最も警戒するクマが稀に目撃されるようで、州立公園などでのトレイルには少し抵抗があったのですが、実際に行ってみたらこれがめちゃくちゃ気持ち良い!! 日本ではインドアでしたが、人間としての幅も広げている毎日です。 ※原稿はサッカーダイジェスト10月号(9月10日発売号)から転載 ■プロフィール やまね・みき/1993年12月22日生まれ、神奈川県出身。178㌢・72㌔。あざみ野F.C.―東京Vジュニア―東京VJrユースーウィザス高―桐蔭横浜大―湘南―川崎―ロサンゼルス・ギャラクシー。J1通算196試合・14得点。J2通算37試合・0得点。日本代表通算16試合・2得点。粘り強い守備と“なぜそこに?”という絶妙なポジショニングで相手を惑わし、得点も奪う右SB。 構成●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)