名将ビエルサがサッカー界の現状を憂う「注目すべき選手が減り、試合は面白くなくなった。衰退の一途を辿っていると確信している」
ウルグアイ代表を率いるマルセロ・ビエルサ監督が、フットボール界の現状を憂いている。 率いているチームが実践するプレーへの徹底的なこだわりぶりから“エル・ロコ(狂人)”との愛称で知られ、ジョゼップ・グアルディオラ監督などから称賛を受けるビエルサ監督。ウルグアイ代表とともに臨んでいるコパ・アメリカ2024では準々決勝でブラジルを破るなど、フットボール界を代表する名将としての手腕を遺憾なく発揮しているが、しかし指揮官本人は現状の同スポーツに大きな危機感を覚えているようだ。 アルゼンチン人指揮官はフットボールがビジネスに染まり、大きな金が動くようになったために、試合から面白みが消えたとの見解を示している。 「フットボールを見る人は増え続けているが、その魅力は失われ続けている。あらゆるスポーツの中で、このゲームを一番としたものを満たすことがなくなったからだ」 「このゲームは見え透いたものとなり、私たちが同じ方向に進み続ける限り魅力は失われ続けるだろう。私はフットボールはが衰退の一途を辿っていると確信している」 「ビジネスによって多くの人々がフットボールを見るようになったが、その成長曲線は断ち切られることになる。時間が経つに連れて、刮目すべき選手たちはどんどんと少なくなり、ゲームは面白さを失ってしまう。こうして人為的につくられた視聴者数の増加は断ち切られる」 「フットボールは5分間のアクションではなく、もっと多大なる何かだ。これは文化やアイデンティティーの形を表明するものなのだよ」 ビエルサ監督は、本来のフットボールがビジネスとは関係なく、経済的に困窮する人々のためのスポーツであったと説いている。 「フットボールに何が起こったのかを、フットボールがどういうものなのかを想像してほしい。これは大衆のものにほかならない。なぜならば、貧者は幸せに近づける力が足りないからだ。幸せを買う金がないからだ。だからこそフットボールは大衆のものであることを起源として、無料のものとして存在したのだが……貧者が変わらずに保つことのできた、わずかなものの一つであるフットボールは、もう彼らには属していない。なぜならエンドリッキや、パルメイラスのウィングは17歳という年齢で……(欧州に移籍してしまう)」 「私からこんなことを話さなくてはいけないのは辛い。批判しかされないわけだからね」 ビエルサ監督はさらに、審判をVARでサポートするようになったことも、「フットボールに大きな打撃を与えている」と苦言を呈した。 「審判に関する騒動は、決して健全なものではない。審判はとても難しい役割を務めているが、テクノロジーのサポートがあることによって、私たちは彼らをさらに冷淡に評価するようになった。それはフットボールに大きな打撃を与えている」 「騒動、議論、非難、責任追求を迫られる現状を、私たちは認めてはいけない。そうした執着は、フットボールがプレーされるべき環境を悪くするだけなのだから」