毎秒100テラビットで800キロ光通信 既存ファイバーで実現 世界初の長距離伝送、NTT
NTTは3日、既存の光ファイバー上で毎秒100テラビット超の長距離光増幅中継に世界で初めて成功したと発表した。日本の基幹光ネットワークの大動脈である東名間(約500キロメートル)を超える800キロメートルの光増幅中継の実現を確認。既存技術の3倍超の大容量化につながる技術として期待される。 【関連写真】8月29日には、端末からサーバーまで全て光信号で伝えるAPN技術で日本と台湾を結んだ 超長波長帯一括変換技術を新たに開発して実現した。基幹光ネットワークで使われている光ファイバー伝送システムは、受信側の光源と光信号を干渉させて光の振幅と位相を受信するコヒーレント受信と、デジタル信号処理を組み合わせたデジタルコヒーレント光信号を多数束ねている。それらを光のまま増幅中継し、目的地まで敷かれた光ファイバー上を長距離伝送している。ただ、送受信機の高度化だけの大容量化は理論限界に近づきつつあり、帯域拡大が求められている。 これまでは光帯域 14.1テラヘルツで最長伝送距離が400キロメートルだった。今回の成果は、新たに開発した超長波長帯(U帯)の一括変換技術を適用することで、既存のファイバー上で集中光増幅器のみを用いて、従来の陸上システムと同じ中継間隔(80キロメートル)を保ちつつ、毎秒100テラビットを超える伝送容量で800キロメートル以上の長距離光増幅中継に成功した。 今回の技術を短波長側への波長資源拡大技術とともに用いれば、20テラヘルツ超のさらなる広帯域化や、光ファイバー伝送路や伝送システム全体の特性に適した大容量化にもつながるという。 NTT未来ねっと研究所トランスポートイノベーション研究部の小林孝行グループリーダは「波長資源拡大技術は、波長当たりの高速化技術と融合することで、伝送容量と距離を大きく拡大する技術としても期待される」と説明。NTTが2030年代の実現に向けて開発を進める光技術による次世代情報通信基盤「IOWN(アイオン)」や、次世代高速通信規格6Gを進化させる技術として今後も研究開発を進める。
電波新聞社 報道本部