【阪神】「下克上」育成出身の野口恭佑プロ初安打 運も味方につけた記念の一打 趣味は筋トレ
<阪神6-5DeNA>◇7日◇甲子園 阪神野口恭佑外野手(23)が甲子園の七夕の夜空を彩った。 4点を追う5回、先頭の同学年小幡が左前打で出塁。無死一塁で代打登場した。1ボール。DeNA左腕ケイの直球を強振すると、打球は流れ星のように一直線のライナーで右前にはずんだ。 「めちゃめちゃうれしかったです。当たった瞬間抜けると思って一生懸命走った。三塁に行った瞬間、喜びが出てきました」 右翼度会が後逸する間に一塁走者がホーム生還し、自身も三塁まで進んだ。1軍昇格後6打席目で飛び出したプロ初安打。運も味方につけた記念の一打となった。前日6日深夜にルーズリーフにしたためた「明日はヒットが打てますように」の願いがかなった。 22年ドラフト育成1位入団。「プロに入れば一緒。そこからがスタートなので」。進路はプロ1本。九産大の恩師・大久保哲也監督(61)は「『育成でも行きたいです』とはっきり言っていました」と振り返る。 入学当初は体が大きい方ではなかった。飛び抜けた存在ではなかった。それでもバットを振る数は人一倍多かった。全体練習が終われば個別練習、寮でもウエートトレーニング。趣味は筋トレ。同級生で現広島の中村貴と競い合うように飛距離を伸ばした。 プロ入団時、母和香子さんに「何かほしいものある?」と聞いた。「自分のために使いなさい」と言ってくれた母はこの日も甲子園で観戦。初めてのお立ち台で「お母さんやったよー!」と叫んだ。仮契約の際には色紙に「下克上」と記した。ほんわかした笑顔の裏には熱いハートがある。 プロ初打点も記録した。2点を追う6回1死満塁、中堅フェンス手前まで飛ばす犠飛を放った。そこから緊張と全力疾走で両足がつり、8回の二ゴロ後に代走植田と交代した。 「これはやばいと相談して(笑い)。自分より(植田)海さんが走った方がチームのためになると思って諦めました。とりあえず体力をつけて、チームの戦力としてやっていけたら」 虎の次世代スター候補は最後まで天然ぶりで笑いを誘いながら、充実の表情で球場を後にした。【村松万里子】