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「終わった男」ライアン・ガルシアがWBCから追放

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:REX/アフロ)

 <私はWBC会長の権限を行使し、ここにライアン・ガルシアを当団体の活動から追放します。私たちは、いかなる形の差別も認めません。ライアンはメンタルヘルスと薬物乱用に関する私たちの支援を何度も断り、心配です>

 7月5日(金)の午前7時57分、マウリシオ・スライマンはX(旧Twitter)で、そう発信した。

Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 4月20日のデヴィン・ヘイニー戦で禁止薬物であるオスタリンを使用し、1年間の出場停止処分を受けたライアン・ガルシアの奇行がまたクローズアップされている。

 米国の独立記念日である7月4日、ガルシアは何時間にもわたってソーシャルメディアで暴言を投稿。その中には黒人に対する人種差別的な言葉や、イスラム教徒に対する侮辱もふんだんに含まれていた。

Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 元WBC暫定ライト級王者の言動を重く見たスライマン会長は迅速に動き、上記の対応をした。すると、無知な"お騒がせ男"も流石にマズいと感じたのか、謝罪と共に投稿をすべて削除。

 CBS Sportsのブレント・ブロックハウス記者は、この件について書いた。

 「ヘイニー戦前にガルシアが行った行動と、非常によく似ていた。ガルシアは狂った態度を続け、物議を醸す発言を繰り返してビールを飲みながら体重計に乗った」と。

Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 ガルシアがヘイニー戦から何かを学習したとか、反省しているなどということは無さそうだ。

 黒人に対する蔑視とは、あのモハメド・アリ、ジョー・フレージャー、"マーベラス"・マービン・ハグラーといったボクシングの発展に寄与してきた名チャンピオンたちの存在を否定することになる。

 ガルシアという男は、そういった常識がまるで理解できていない。ボクシングの歴史上、これほど無学な男も珍しい。精神面の問題を抱え、過去に試合をキャンセルした事実を踏まえると、しっかりとした治療が必要だと感じる。

Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 ブロックハウス記者は絶妙な文で締め括った。

 「とはいえ、1年近く出場停止中のガルシアがWBCから追放を食らっても、現在の停止以上に長い期間でない限り、それほど大きな問題ではない」。

 各団体やコミッションから永久追放を告げられる前に、ガルシアはメンタル治療を始めるべきだ。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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