通学中の高校生をトイレに連れ込んだ男に懲役5年判決 裁判長「なぜ被害者が抵抗できなかったか、考えて」
裁判長が説諭
「なぜ被害者が抵抗できなかったのか、考えて」
通学中の高校生を駅構内の多目的トイレに連れ込み性暴力を行ったとして不同意性交等罪で起訴された元会社員・大石哲也被告に対して8月6日、京都地方裁判所(増田啓祐裁判長)は求刑通り懲役5年の実刑判決を言い渡した。
大石被告は昨年12月13日の午前8時過ぎ、それ以前に2回痴漢行為を行った高校生が電車内にいるのを見つけ、犯行に及んだ。
裁判長は「ひとめで学生とわかる被害者に近づき、それ以前に痴漢をして抵抗されなかったのをいいことに、被害者の性的自由を著しく蹂躙した」「被害者はなんの落ち度もなくただ電車に乗っていただけであり、被害者やその両親の厳しい処罰感情は当然」とし、大石被告が逮捕当初から犯行を認め反省を示していることや、100万円の支払いを申し出たこと(被害者は受け取りを拒否)、実姉が更生の協力を申し出ていることを考慮したとしても「酌量減軽は相当ではない」とした。
判決言い渡し後、裁判長は比較的長めの説諭を行った。事件の悪質性を踏まえてのことと考えられる。内容は以下の通り。
「自らのやったことの悪質さを改めて認識してもらいたいと思います。電車内だけではなく、駅(構内のトイレ)でも行為に及んだ。悪質性が強い、執拗な犯行という評価はまぬがれません。
なぜ被害者が抵抗できなかったのか。よく考えてください。それだけ怖かったからです。自分のやったことがどれだけ被害者に恐怖を与える行為なのか、改めて考えてください。
服役中、早く刑期が終わらないかと考えるのが悪いとは言いませんが、自分の何が悪かったのか、自分を見つめ直す機会にしてください」
当時の状況を聞かれ
「頭が真っ白になって」
50代の大石被告は頭髪が真っ白で、年齢よりも老け込んで見えた。しかしその年齢に見合うような内省が裁判中に聞かれることはほぼなかった。
大石被告は平成10年(1998年)にも痴漢で罰金刑を命じられたことがあるという。今回、同じ被害者に2回痴漢を繰り返し、その後に犯行がエスカレートした理由について尋問中に弁護人や検察官から数回にわたって問われたが、「頭が真っ白な状態になって」「自分の中でかなりテンパっているというか興奮しすぎていたと思う」「はっきりした答えは出ていない」などと、その理由を説明することはできなかった。
逮捕後、大石被告は離婚し、娘は破談。また、30年以上勤めた会社を懲戒解雇されている。弁護人がこれらの事実に触れると大石被告は涙声になったが、被害者の父親は後日の公判で被害者参加をし、証言台で「自分や自分の家族のことを話すときは感情的になるのに、娘(被害者)について話す際は感情を見せない。自分勝手だなと感じた。理由を聞かれても『わからない』と言い、結局娘のことを何も考えていない」と断じた。
再犯防止のために性障害専門医療センターに通う意志を見せた大石被告。刑期満了後の「治療」について月に1回1万円ほどかかる費用をどのようにまかなうのかを聞かれると「姉と相談して協力してもらう」と答えるにとどまった。どれほど自分の加害行為を深刻に捉えているのかは、その表情からはわからなかった。
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