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「1年延期になっていなかったら出られなかった」全5試合で“最後のマウンド”を守った栗林良吏の「圧倒的な支配力」＜侍ジャパン優勝＞
posted2021/08/08 11:10
優勝を決め、キャッチャーの甲斐はマウンドに駆け寄り守護神・栗林を抱き上げた
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
JIJI PRESS
最後はやっぱりこの男だ。
この五輪で日本の守護神の座にどっかと座り込んだ栗林良吏投手（広島）が、またも米国打線の前に仁王立ちした。
2対0で迎えた9回の米国の最後の攻撃だ。2死から8番のN・アレン内野手に右前安打は許したものの、続く9番、J・ロペス外野手を1球で二ゴロに仕留めた。二塁手の菊池涼介内野手（広島）がガッチリ掴んだボールを二塁ベースカバーに入った坂本勇人内野手（巨人）に送球。ボールが坂本のグラブに収まるのを待てずに、本塁からは甲斐拓也捕手がマウンドに疾走していた。
背番号20と背番号10が抱き合い1つになった瞬間
背番号20と背番号10が抱き合い1つになった瞬間に、いくつもの身体がぶつかってくる。午後10時ジャスト。横浜スタジアムで日本代表「侍ジャパン」が悲願の金メダル獲得を決めた瞬間だった。
最後の最後まで決して楽な試合ではなかった。
日本が森下暢仁投手（広島）、米国はソフトバンクでプレーするN・マルティネス投手の両先発で幕を開けたゲーム。金メダルへの扉をこじ開けたのは、チーム最年少の8番打者のバットだった。
3回の攻撃だ。1死から村上宗隆内野手（ヤクルト）が打席に入る。カウント2ボール2ストライク。初回から快調に飛ばしていたマルティネスが、タイミングを外しにきた外角寄りのチェンジアップは、追い込まれて逆方向を意識していた村上にはおあつらえ向きの絶好球となった。引きつけて強く叩く。狙い通りに左中間に強い打球を弾き返した瞬間に、村上の手には確かな手応えが残っていた。
左中間席に飛び込む先制ソロ本塁打。
「森下さんが本当に素晴らしいピッチングをしてくれていたし、あの流れで何とか1点取ればジャパンの流れになるんじゃないかという思いで打席に立っていました。あの1点は本当に嬉しい1点でしたけど、チームで取った1点だと思っています」
村上は振り返った。
