それでもまぁ仕事だ
極力仲良くしようと話しかけたが、無視された
写真撮ろうとしてもカメラを構えると必ず消える
仕事で1人一枚写真に残すように言われていたが、マジで撮れない
「一緒に撮ろうぜー！」と肩くんで逃げられないようにしたら、
ガクンと膝をついて崩れ落ちた
「触らないで」とウザそうに言う
俺は写真を諦めた
どうせ皆顔の半分しか外に出てないんだから一人いなくても気付かないだろう

この班はスキー初心者の班だったが、
チビの子は運動神経が飛び抜けて違った
最初に多少イジワルなコースを見せて、
「こことか滑れるようになったら初心者卒業な」と言ったら、
教えてもないのに感覚で滑りおりやがった
もちろん他の女の子達は滑れるわけがないので、
遠回りしておりたんだけど、
待ってたチビの子は雪を丸めて顔より大きな雪玉を作っていた

そんなものを滑走する場所に置いとくわけには行かないので、
後から取り上げて遠くに放り投げた
チビの子は「いきなり何すんだよ！ボケ！さわんな！」と
暴言吐きまくって俺に雪玉を投げつけまくってきた
「いい加減にしろよ！」とキレたら、
「お前がいい加減にしろ、話しかけんな」と逆切れ
「雪玉なんか作って誰に当てるつもりだ！」
怒鳴りつけると周りの女の子も「謝れ」コール
チビの子は押し黙った

翌日集合時間前に集合場所にいったら、
俺担当の班がすでに集まってたが普通の雰囲気じゃない
チビの子を皆でかこっていた
「修学旅行の前に言ったよね？あたしらの視界に入んないでって」
「なんなん？ちょっとスキー上手いからってインストラクターの側ばっか滑って」
チビの子は滑りが上手かったので、単にコースを外れず
きっちり俺の後ろを滑れる為に俺の近くにいただけだった

「雪だるま作りたいとかガキじゃないの？」
「それで雪玉壊されてキレるとか馬鹿じゃないの？」
「なんで修学旅行きたわけ？来んなって言ったよね」
雪だるま潰されてキレる神経は分からないが、
なるほどその性格の悪さから嫌われてるんだなと納得

女の子達が「今日は病欠しろよ」と言って準備に行ったら、
チビの子の周りに別の女の子達が集まってきた
「大丈夫？」
「ごめんね、私達経験者になるから同じ班になれなくて」
「雪だるま後で一緒に作ろうね・・・」
心配するなら囲まれてる時に助けろよと思ったが、
チビの子にはそれをしてもらえるだけの人徳が無いんだろうな
「いや、寒いの嫌いだし、外だるいし、
　読みたい本持ってきてるから部屋で読んどくわ」
と手袋と帽子を脱ぎ捨てて帰っていった

結局その日も翌日もチビの子は来なくて、
班の女の子はチビの子の悪口ばかり
「チビの子仮病ですよぉ～」
「最低ですよね～」
「下手なくせに粋がって・・・」
「普段帰宅部で運動できないから」
「勉強しかできないガリ勉」
汚い結束力だった

三日目、スキーから帰るとホテルの前に雪だるまが大量に並んでた
しかも単なる丸じゃなくて、
うさぎ型とか亀型とかペンギン型とか恐竜型とか少しずつ違う
出迎えてくれたホテルのおばちゃんが
皆とスキー行けなかった子が作ったんですよと俺たちに教えてくれた
ホテルの中を覗くと、入り口のストーブの前で
指を真っ赤にして掻きむしってるチビの子がいた
それを見た班の子が片っ端から雪だるまを壊してて狂気を感じた

後でベテランのインストラクターに聞いたが、
その中学は毎年どこかの班でイジメとかある底辺中学らしい
教師も見てみぬふりだとか
その時俺が担当した班も、その「アタリ」班だったんだろうと言われた
学校一つが狂気にまみれてるようで不気味だった

修学旅行で3日もスキーってすごいな
運動苦手な子からしたら糞も楽しくない思い出だな

インストラクターにそこまで求めるのは違うと思う