何年も会っていなかった友人知人と久しぶりに再会すると、「ぜんぜん変わってないねー」という言葉が交わされ、一瞬で昔の記憶が蘇ることがあります。
一方で、「あんなに活発で明るい人だったのに...」と驚いてしまうほど、別人のように変貌する人もいます。
いったい何が影響しているのか?どうしてネガティブな方向へ変貌することがあるのでしょうか。
結論から先に言うと、
「なりたい自己像」のイメージを持っていない
「こんな自分でありたい」という目標がない
これによって、ある方向に無意識的に引っ張られてしまうからです。
このような現象について日頃から不思議に思っていた方、これから自分はどんなふうに変わっていくのだろうと漠然と考えることがある方、などに読んでいただきたい記事です。
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マイナス面の変わり方が大きい人
ここで言う「変貌」とは、顔にシワが増えちゃった!贅肉がついちゃった!という様な年齢による老化とはまったく違う、根本的な変化のこと。
見た目の老化の話ではなく、性格や行動や思いが変わったせいで、それが人相や生活に如実に現れている様な、そんな大変化のことです。
「あんなに行動的で友人も多く明るい雰囲気の人だったのに、引きこもりの様になって、人付き合いもしなくなった。背中が丸くなりうつむいた姿勢になり、表情が別人の様になってしまった...」
この様に、健康面や精神面でマイナスの方向へと変容していく原因は、先にも述べたように「なりたい自分像」を持っていないからです。
「なりたい自分のイメージ」や目標を持っていないと、どうなるのでしょうか!?
それは...
身近にいる人の、雰囲気や生活態度を模倣してしまう。
これは無意識レベルで起こってしまうこと。本人はまったく気づいていないはずです。
「まさか!そんなことがあるわけない!」と思ったら、周囲の人々のことを思い出してみてください。昔に比べてどんどん健康面や精神面でネガティブな方向へむかっている人はいませんか?
人はどんなふうに、無意識に身近な人のありさまを真似てしまうのか、説明していきますね。
人間は身近な人を真似てしまう
なりたい自分のイメージを持たない場合、人間は身近な人々、特に親や先生や上司などの影響を無意識に受けやすくなります。
たとえば、母親が病弱なため引きこもりがちで交友関係もなかった場合、娘もそのような人生を選ぶことがあります。そして、その様に無意識に選択したことは、年齢を重ねるにつれて自分自身の生活の質と健康に大きな影響を及ぼします。
アクティブに行動する年齢のときは自分らしい生き方ができていたとしても、歳をとると自分の親に似てくるのです。
この考え方は、社会心理学者アルバート・バンデューラの「社会学習理論」と深いつながりがあります。バンデューラは、人々が自分自身の行動を決定する際に、観察と模倣が重要な役割を果たすと主張しました。
私たちが目指すべき自己像を持っていなければ、私たちは無意識のうちに自分が最もよく観察している人々の行動を模倣し始めます。
しかし、自己像が明確な場合、そのような無意識の影響を受けにくくなります。
Albert Bandura
つまり、ボーッと生きていると、気づかぬうちに身近にいる人のようになっていくということです。
生物学的な面から見ても、私たちは自分の親や身近にいる人々から多大な影響を受けています。行動や思考パターンだけに限らず、私たちがどのように年を重ねていくかにも影響を及ぼすことを、多くの人に知っていただきたいです。
とはいえ、これは「必ずしもそうなる」のではありません。
意識的に目標設定をしたり「なりたい姿」を思い描いたりなど、自己像を創っていくことによって、無意識の方向性を変えることが可能です。
あなたは10年後、20年後、どんな自分になっていたいですか!?
なりたい自己像に向かっていくためにできることを、次の項目でお話ししていきます。
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なりたい自己像に向かっていく為にできること
哲学者のフリードリヒ・ニーチェはこう述べました。
「私たちは自分自身の最初の創造者であり、その後の改革者である」
ニーチェのこの言葉は、自己像の重要性を強調する一方で、それが固定的なものではなく、私たち自身の意志と行動によって変化し、成長できることを示しています。
その方法を3つご紹介します。
❶明確になりたい自分の姿をイメージする
❷具体的な「憧れの人」がいればより良い
❸影響を受ける人々を選びましょう
ひとつずつ具体的にみていきましょう。
❶明確になりたい自分の姿をイメージする
以下の質問について自分の中から答えを導き出してみてください。
🧶どのような人間になりたい?
🧶どのような人生を送りたい?
これらの質問に明確な答えがでたら、しっかりと自己像のイメージを持つことができる様になります。
「自己像」は、自分自身に対する認識を高めます。
持っている自己像によって、行動が変わります。「何を選択するか?」が違ってきます。人生の経験全体に影響を及ぼすものです。
なぜなら、私たちが持つ理想の自己像が人生の羅針盤となって、行動の指針を提供するからです。
「どのような選択をすべきか?」「何を避けるべきか?」について、ハッキリと素早くわかる様になります。生きていく上で必要不可欠なスキルだと言えます。
*関連する記事:
❷具体的な「憧れの人」がいればより良い
自分の中にはっきりとしたイメージがあることが大事です。しかし、人生何が起こるかわかりません。もしかしたら何かの影響を受けて、自己像が崩壊してしまうことが起きるかもしれません。
そんな時でも、実在する人間で「憧れの人」がいれば、その人の姿や声を思い出すだけで、リカバリーしやすくなるのです。
「憧れの人」の好ましいところを、普段から真似たりすることもできます。
心理学者のカール・ロジャーズは、人間が自己実現の過程で「自己」と「理想自己」との間のギャップを縮めることの重要性を提唱しています。
自分がどのようでありたいのか、そのビジョンを描くことで、ギャップを縮めることが可能になります。
理想の自己像のビジョンを持って、自分の成長と幸福、そして健康や精神の向上につなげていきたいですね。
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❸影響を受ける人々を選びましょう
先に述べたように、なりたい自己像を持たない場合は、歳を重ねるごとに、無意識的にいちばん身近にいる人を真似ていくようになります。
そうならない様に、明確な自己像を持つと共に、自分が影響を受けそうな人を選びましょう。自分がどんな環境にいるのか、は自己形成にとって大事な要因です。
ディスる言葉を投げかけられる環境で毎日を過ごしていませんか?褒めてくれる人は周りにいますか?感謝したり感謝されたりの交友関係がありますか?
自ら「影響を受ける人々」を選ぶことで、自分にとっての環境を整えていく。人生をより豊かで充実したものにすることは誰にでもできることなのです。
【まとめ】理想の自己像
「なりたい姿」である未来の自己像を設定することは、
・自分自身をどのように見るか
・どのように成長していくか
・どのように歳をとっていくか
を自ら「決める」ことです。
最終的には、理想の自己像を持つことが私たちの人生の質を向上させ、私たち自身と周囲の人々に対するポジティブな影響をもたらします。
自分が主導権を握り、自分自身の人生の航海者となるための鍵となるのです。ただ漂流するのではなく、自分自身の未来を自分で創造することができます。
つい見直しを忘れてしまうこともありますが、何歳になっても「なりたい姿」について見直しをして、その都度なりたい自分像を「決めて」いきたいです。
*無意識のうちに親を真似ることを「やめる」のも自立の一つ