ジャンカメハンターのぐりやんです。
本日の獲物はOLYMPUS OM-1初期型 ブラックボディーです。 M-1と共通の特徴を持つタイプで拙者的には「ほぼM-1」と呼んんでいるモデルです。
OLYMPUS OM-1
拙者が個人的に一番好きな一眼レフはオリンパスのOM-2なのですが、次点は僅差でOM-1なのです。
総じてOM一桁シリーズが大好きっ!てことで何台も持っていたりしますw
OM-1は発売当初M-1という名前でした。オリンパスの一眼レフとしてはPEN-FとFTが発売されていた訳ですが、35mmフルサイズ一眼レフとして最初に開発が始まったカメラがM-1だったのです。なぜ「開発が始まった」という枕詞なのかと言いますと、M-1が発売された1972年の前年、1971年にFTLという一眼レフが発売されたのです。
M-1の開発が始まったのは1968年でしたが、一眼レフで他社に遅れをとっていたオリンパスはM-1の開発の遅さに痺れを切らし、1969年に別チームによるM42マウントの一眼レフOLYMPUS FTLの開発を決定したのです。FTLの開発は急ピッチで進められ1年後の1970年発売を目指したということです。しかし発売は遅れ1971年になったのでした。そしてFTL発売の翌年、1972年にM-1が発売され、間もなく製造中止されたFTLは非常に短命なカメラとなったのでした。
M-1の特徴はなんといっても一眼レフなのに小さいってことです。発売された当時では、世界最小最軽量の一眼レフでした。触ったことがある方はわかると思うんですが、本当に小さいんですよね。
そしてMマウント(のちのOMマウント)のレンズも小さいです。
当時のカメラは高額でありデカくて重くて高そうなものが主流であり、売れ筋でもありました。特にキヤノンのF-1やニコンF2などのプロ向けカメラはデカくて憧れの的だったのです。そこに投入された小さな一眼レフは一見地味なものでした。しかし徐々に売り上げを伸ばしてゆき競合他社のシェアを食い始めたのです。当時の文献を調べていましたら、ある経済誌にOM-1は発売から2年後の昭和49年10月期(6ヶ月間)で9万4千台を売り上げ、年間売り上げは16万台に達したそうです。そしてOM-1は海外でも人気でその軽量さから輸送や輸出の面でもとても有利だったようです。OMシステムの輸出では50%が航空便を利用されたという記事も見つかりました。その軽量さは輸送コストにもメリットがあり物流にも少なからず影響を与えたようです。小型軽量は、企業側にもユーザー側にもメリットが大きかったのですね。まさにwin-winと言えるでしょう。そして世界一小さいM-1の登場はカメラ業界に色々な影響を与えていくことになります。特にPENTAXはM-1の対抗する製品として、小型軽量化に重点を置いて開発されたMXで世界最小最軽量の座を奪っています。そして競合各社とも一眼レフの小型化に舵を切っていく事になるのでした。
ほぼM-1って何のこと?
OLYMPUSから登場した革新的な小型一眼レフカメラM-1は、あのドイツの名カメラM3を製造する大御所メーカーLeitz社からケチがつくことになります。そしてすぐにOM-1という名称に変更されたのです。OM-1は徐々に小改良が加えられてゆき、改造なしでモータードライブが使えるOM-1MD、改良型のOM-1Nとなります。
名称 | 発売時期 | |
M-1 | 1972年7月(S47) | オリンパスの初のシステム一眼レフカメラ |
OM-1(初期型) | 1973年5月(S48) | ライツ社からのクレームで名称変更 |
OM-1(中期型) | 1974年10月?? | 底蓋以外MDと共通 M-1の特徴ほぼ消滅 |
OM-1MD | 1974年10月(S49) | モータードライブ対応 スローガバナ変更 |
OM-1(後期型) | 時期不明 | OM-1MDとOM-1を統合 |
OM-1N | 1979年3月(S54) | 主にフラッシュ関連の変更がおこわれた |
上の表はM-1からOM-1Nにマイナーチェンジするまでの変遷を拙者独自の見解で表したものです。M-1からOM-1中期型までは底蓋がモータードライブ対応のものとなっておらずモータードライブを使うにはメーカーで改造してもらう必要がありました。OM-1中期型はOM-1MD発売後も併売(価格差5千円)され、その後統合されてOM-1MDからMDの表記が無くなったOM-1後期型になります。オリンパスHPにはOM-1MDはスローガバナが変更されたと書かれていますが、これがOM-1Nと同じタイプの少し音が大きい新型シャッターへの変更だったのかも知れません。
拙者が持っているOM-1(中期型:MDと併売されていた時期のもの)ではシャッター音は最初期のものと同じです。ですからOM-1(中期)で旧シャッターを使いMDでは新シャッターを使っていたのかも知れません。旧シャッターの在庫が払底したところで中期型とMDを統合したと考えれば自然な気がしています。実際たくさんのOM-1を収集して比べてみれば事実が判明するかも知れませんが、そこまでの財力は残念ながら持ち合わせておりませんw
まあこうやって、どうでもいい想像をするのはマニアにとっては楽しい時間ですから、アイツの戯言って事でご容赦いただけると幸いですwww
以上のように少しずつ改良されていったOM-1なのですが、M-1からOM-1に名称変更された直後の初期型OM-1はM-1と共通の特徴を持つものが存在するのです。(拙者は、ほぼM-1と呼んでいる)
M-1とOM-1の変更点を比べてみると色々とあるのですが
- レンズマウントのネジがマイナスから(プラス)
- プリズム押さえ金具が4本のコイルバネ(板バネ)
- 巻き上げレバー基部の金具がある(廃止)
- ミラーボックスのプラスネジネジ(廃止)
- フィルム圧板のサイズが小さい(大きい)
- フィルムガイドネジの本数が4本(2本)
- ファインダー接眼レンズの位置が浅い(深い)
- 巻き戻しレバーのネジがマイナス(プラス)
- 巻き戻しノブ内に補強リブが無い(有る)
- ブラックボディ塗装の下処理にメッキ有り(無し)
- 露出メーターに低照度自動警告スイッチが有る(廃止)
- 三角形の吊環(丸い吊環)
- 明らかに静かなシャッター音(シャッター音が大きくなる)
これらの並び順は、概ね消える順に時系列で並べてみたものです。
概ね1番目から順に消えてゆきます。
その他にもあるかもしれませんが、拙者が知る限りこんなところです。
前に触ったことのある極最初期のOM-1では、1、2、3、5、6、7、8、9、11、12、13の特徴を持つOM-1でした。
今回入手したOM-1では5、6、7、8、9、10、11、12、13の特徴があります。
上の写真は左のものは押さえバネ以外M-1と共通です。具体的にはプリズムに銀色の保護シールが貼り付けられておりプリズムの樹脂カバーはテッペン部分のみです。M-1と極初期のOM-1は金具が4本のスプリングを使ったものでした。
プリズムに49.4.04のスタンプがあるモノはの裏蓋デートコードはス42でしたから1974年2月から4月あたりの製造だと思われます。ですから初期型OM-1の最終期のものだと思います。
もう一台手元にあるOM-1中期型ではプリズムに50.12.09のスタンプがあります。M-1からの特徴はシャッター音のみで、そのほかM-1と共通する特徴はありません。裏蓋デートコードはS5Z6なのでおそらく1975.12.6を表していると思われますから1975年末の製造、つまりOM-1MDと併売されていた時期の中期型という事になりますね。
結果M-1と共通の特徴を持つ初期型OM-1(拙者の言うところのほぼM-1)はOM-1MD販売開始と前後して完全に姿を消したと言えそうです。
購入時の状態と状態と入手後の状態確認
OM-1ブラックが陳列されていたのは、某ドフのガラスケースの中で値札には、2KY+税「ジャンク品、プリズム腐食で巻き上げできずシャッターも切れません」と表示されていました。巻き上げレバースタックはOM一桁の持病ですしプリズム腐食もこれまた持病ですから、OM一桁ジャンクとしては定番の故障状態。おそらくスタックは簡単に治るだろうから腐食の酷さがどれぐらいかを確認してみます。
早速ケースを開けてもらい手に取って状態を確認しますと、プリズム腐食はそれほど酷くありませんから、おそらく何らかの対策がされていると思います。
外観は中々キレイで巻き上げレバーに定番の素人分解痕はナシ。アタリは右肩に一箇所だけ。外観のキレイさ、プリズムの対策などから、大事に使われていたと予想。
シャッター周りの故障の状態はと言いますと、シャッタースタックではなく巻き上げスタックと予想。セルフタイマーもスタックしておりました。ミラーアップ操作をしてもミラーが上がりきらないというよくある症状も出ています。
総じての評価は完全なジャンクな訳ですが、プリズム腐食が軽度なこと、ブラックボディである事、動かない部分は直せそうな事、最初期の特徴があることから瞬時にお持ち帰り決定となりました。
家に持って帰ってきて早速細かいチェックです。が、その前に巻き上げスタックをサクッと直しちゃいました。原因はいつもの巻き上げギアダンパーでしたから我々マニアにとっては簡単な修理なわけです。シャッターが動くようになったところでシャッター速度のチェックをします。低速から高速まで問題ありません。
電圧変換型アダプターを使い電池を入れてみると露出計は問題ありませんでした。
次にプリズムのモルトをチェックするため軍艦部を開けます。
やはりモルトは除去済みでした。しかし新たなモルトは貼られておりませんし処理に丁寧さがない。何故かマステが貼られております(後に検索したところマステは純正のようです)のでプロの修理では無さそうです。しかしながら、OM一桁にありがちな分解痕は有りませんでしたから、OMマニアが修理したものかもしれませんね。
流れで修理開始
マニア以外は気づかないでしょうが拙者はマニアなんで、接眼レンズの異状に気づきました。接眼レンズが浅いほぼM-1なのに接眼レンズが奥に入っています。どう言うことかと言いますと、M-1や最初期のOM-1は接眼レンズが浅い位置にあるはずなんです。それなのに接眼レンズが奥まっていたんですね。これはおかしいって事で注意深く確認すると接眼レンズの接着が剥がれて奥にズレいる事が判明しました。
接眼レンズのフレームを外すのは大変ですからプリズムを一旦下ろして、内側から接眼レンズを押し出し接着しておきました。ミラーアップ不良の修理は大変なので次回の楽しみにとっておきます。ミラーアップなんて使わないですからね。
そして組み立て最終チェックをしていると、裏蓋がうまく閉まらないことに気づきました。
これどうも解せませんので良〜く確認してみると裏蓋のヒンジ部分にアタリがあり変形していました。それが原因で裏蓋ロックピンの動きも悪いようです。裏蓋を外してヒンジ部分を分解を開始しますと、ロックピンが抜けません。少しずつギザなしラジペンで引っ張って何とか摘出に成功!
このミニチュアギザ無しペンチは長年使っていますが、拙者的に特にオススメしたい工具の一つです。
抜き取ったロックピンを確認するとグニャリと曲がっていました。
運悪くネジ穴がある部分に衝撃が加わり曲がってしまったようです。
早速修正に取り掛かります。ヒンジのパイプ部分は潰れないようにパイプ内径にピッタリのドライバーを差し込んだ状態で叩いて修正し、曲がったロックピンは折れないように注意しながら修正しました。ヒンジ部分の変形は全くわからなくなり、ロックピンはスムーズに操作できますし裏蓋の締まりの悪さも解消しました。
最終チェックとコンディション
ジャンクとはいえ、拙者の見立て通り良質なジャンクでした。シャッターは全て正常で巻き上げとセルフタイマーもOKになりましたし露出計も問題なし。OM一桁にありがちなホットシュー劣化による塗装の痛みもありません。ファインダーには腐食が少しあるけれど問題ないレベルで、外観は右肩に若干のアタリがありる以外はキレイ。ミラーアップしてもミラーが上がりきらない問題は未修理のままです。
今回のOM-1ブラックのコンディションは、並品に限りなく近い「難あり品」に認定です。
あとがき
最後まで読んでいただき感謝です。
前々からOM-1初期のブラックが欲しかったのですがやっと出会うことができました。しかもラッキーな事に最初期です。OM-1は徐々にコストダウンされていったと言われています。コストダウンが悪い訳ではありませんが、最初期ブラックのコストをかけた塗装とか、シャッター音の違いなどマニア心をくすぐるんですよね。気になる貴方はググってみてください。情報はたくさん出てきますから。OM沼にハマっても責任は取れませんから悪しからずwww
コメント