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せっかくだから俺はこの中国製x86「兆芯KX-7000」を選ぶぜ。その性能を検証してみた

 今日のIntel以外のx86互換プロセッサといえばAMDだが、実はもう1つあり、それが中国・上海兆芯集成電路有限公司(以下、兆芯)だ。

 正確に言えば、海光情報技術有限公司が「HYGON」を発売しているが、こちらはAMDのZenをベースとして中国向けに最適化された製品となるため、今回は割愛する。

 兆芯は、台湾VIA Technologiesと上海市政府が共同出資した半導体メーカーとなり、台湾VIA Technologies傘下だったCentaur Technologyが手掛けたIPの提供を受け開発されている。現在Centaur Technologyの人員はIntelに買収され、台湾VIA Technologies自体もx86プロセッサとチップセットの技術/知的財産権の一部を兆芯へ売却しているため、結果的にWinChip、Cyrixから続くx86互換プロセッサの流れは兆芯が引き継いで設計していると言えるだろう。

 本稿を執筆している時点で流通している兆芯のCPUは、2019年にリリースされた「KaiXian KX-6000」シリーズが主流だ。既に登場から5年経過しているが、本来であれば後継製品となるKaiXian KX-7000シリーズは2021年に発売される“予定だった”。

 筆者が2022年にKaiXian KX-6000シリーズを入手してレビューした記事が以下となる。

 遅れに遅れ、2023年の12月にようやくKaiXian KX-7000シリーズがリリース。

 KaiXian KX-7000シリーズのKaiXian KX-7000/8搭載製品については、2024年の5月頃、Lenovoの「Kaitian P90z G1t」(ThinkStation P2筐体を使用)や神舟(HASEE)からようやく発売されたが、中国から日本へ10万円越えのタワー型デスクトップPCを輸入するというのはなかなかハードルが高かった。

 そして2024年の8月下旬頃より、KaiXian KX-7000/8は中国の自作PC市場でひっそりと流通を始めることになる。今回筆者はこのタイミングでCPUとマザーボードを購入した。

 KaiXian KX-6000シリーズまではすべてBGAパッケージだった。そのためマザーボードにCPUが実装されており、完成品のPCか組み込み向けのマザーを購入する必要があったが、KaiXian KX-7000シリーズのデスクトップ向けについてはLGA1700を採用しているため、マザーボードとCPUが分離。その結果ユーザーは好きなデザインのマザーボードを選ぶことができる。

 ……のだが、執筆時点では1種類しか入手できない。

CPU:KaiXian KX-7000/8

 まずはCPUから見ていこう。今回入手したKaiXian KX-7000/8はLGA1700パッケージを採用しており、ぱっと見Intel製CPUに見える。

 実際にIntelのCPUを横に並べてみたが、サイズは一致している。細かな違いこそあるものの、多くのユーザーは、シルク印刷を見なければこれが兆芯製なのかIntel製なのか判断が難しいだろう。

 厄介なところは、兆芯製とIntel製でそれぞれ内部構造が異なるところ。KaiXian KX-7000/8をIntel LGA1700用マザーボードへ取り付ける、もしくはその逆をすると、何かしら破壊されてしまう可能性もある(筆者は流石に試していないが……)。

 もちろん良い点もある。それはCPUクーラーの互換性だ。

 マイナーな規格を作ってしまうと、そのために専用のCPUクーラーを用意する必要があるが、物理的にIntelのLGA1700と同じLGA1700版のKaiXian KX-7000/8であればその心配はない。

 内部についてはどちらかと言えばAMDに近くチップレット構成を採用しており、CCD(CPUダイ)とサウスブリッジと統合グラフィックスを内包したIOD(I/Oダイ)に分かれている。

写真左がKaiXian KX-7000/8、右がIntel Core i9-13900K

 KaiXian KX-7000/8環境でCPU-Zを開くと以下のようになる。

 AVX-512はさすがに対応していないようだが、AVX2などメジャーな拡張命令セットに対応している。注目すべき点としては中国の暗号アルゴリズムであるSM2(楕円暗号)、SM3(ハッシュ関数)、SM4(ブロック暗号)に対応しているところだろう。

CPU-Z Ver.2.11.0x64での表示

 KaiXian KX-7000/8は3つのバリエーションが存在している。兆芯のWebサイトのスペック表からの直訳となるが以下の通りだ。

 今回筆者が入手したものは、最大動作周波数が3.6GHzのモデルとなる。

【表】主な仕様
基本情報
製品シリーズKaiXian KX-7000シリーズ プロセッサ
アーキテクチャコード名センチュリーアベニュー(世紀大道)
発売日2023年Q4
プロセッサ仕様
プロセッサモデルKX-7000/8
コア数/スレッド数8コア/8スレッド
最大動作周波数3.7GHz3.6GHz3.5GHz
キャッシュL2キャッシュ 4MB、L3キャッシュ 32MB
主な用途デスクトップノートブック・クラウド端末・一体型
対応メモリ
最大メモリ容量128GB
最大メモリ周波数DDR5-4800MHz/DDR4-3200MHz
メモリの種類UDIMMSO-DIMM
最大メモリチャネル数デュアルチャネル
拡張インターフェイス
PCI Expressバージョン4
PCI Expressレーン数2416
USB最大USB 4×2、USB 3.2 Gen 2×2、USB 2.0×2
SATASATA 6Gbps×3
統合グラフィックス
モデル名C-1190
3D/2Dサポート
Direct Xバージョン12
Open CLサポート1.2
Open GLサポート4.6
対応するビデオコーデックデュアルチャネル4Kデコード、シングルチャネル4Kエンコード(H.265 HEVC/H.264 AVC)をサポート
ディスプレイ数3
出力DP/HDMI/VGA
先進技術
仮想化技術VT-x
I/O仮想化VT-d 2.5
命令セットx86、x64
拡張命令SSE4.2/AVX/AVX2
温度監視/過熱保護対応
Cステート対応
Pステート対応
セキュリティと信頼性
高度な暗号エンジン(ACE)対応
SHA-1アルゴリズム対応
SHA-256アルゴリズム対応
国家秘密アルゴリズムSM2/SM3/SM4
乱数発生器対応
NXビット対応
パッケージ
パッケージLGAFCBGA
サイズ45mm×37.5mm32mm×42mm

統合グラフィックスも進化

 KaiXian KX-7000/8の統合グラフィックスには「ZX C-1190」を搭載している。

 筆者が以前使用したKaiXian KX-6000は「ZX C960」だったが、その後統合グラフィックスが進化したKaiXian KX-6000GのZX C-1080、そして今回のKaiXian KX-7000/8のZX C-1190と2世代分進化している。

 ZX C960ではファイナルファンタジーXI(FF11)のベンチマーク程度しか動作しなかったが、ZX C-1190ではDirectX12、OpenCL 1.2、OpenGL 4.6とサポートも多くなった。速度も4倍になったとのことだが、そもそも元のスコアが低すぎたため4倍程度でどうにかなるのか心配だ。

 KaiXian KX-6000GのZX C-1080では、兆芯が約27%の株を持つ中国Glenfly製のAris GT10C0が使われていると言われており、今回のZX C-1190もその改良版が使われていると推測される。

 実際にAris GT10C0とZX C-1190のドライバを見比べると、

  • arise→cx4
  • gf→zx

と名前を置き換えたような箇所も見受けられた。

Glenfly Arise-GT10C0

マザーボード:XC-KX700M D4

 続いてマザーボードの紹介だ。

 マザーボードについてはノーブランドの「XC-KX700M D4」となる。無名の中華マザーかと言えばそういうわけでもなく、実はASUS製である。

 なぜASUS製かと言えばいくつか根拠があり

  • MACアドレスのベンダー割り当てがASUS
  • ASUS中国担当のエリアマネージャーTony Yu氏がこのマザーボードの試作品をbilibiliで2024年4月に紹介した(しかしその動画は現在削除されている)
  • ASUS独自のLANGuardロゴ入りのLANポート
  • TPMヘッダーがASUS仕様
  • オーディオドライバのinfファイルにASUS XC-KX700M D4,Zhaoxinの記述がある

という点に基づく。

 フォームファクタはmicroATX、型番末尾のD4という点からも分かる通り、DDR4メモリをサポートしている。KaiXian KX-7000自体はDDR4、DDR5両対応のメモリコントローラを搭載しているが、今回はDDR4のUDIMMを使い検証を実施する。

 メモリスロットは2本で、microATXの廉価マザーでは良くある構成だ。

 CPU補助電源は4ピンとなる。今日のマザーボードでは8ピン(4+4ピン)が主流のため少し新鮮だ。

 BIOS ROMの付近にASUS向けのTPM 14ピンSPIヘッダーがあるため、ここに別途TPMセキュリティモジュールを取り付けると、セキュアブートが利用できるようになる(はずだ)。KaiXian KX-7000/8はIntelのPlatform Trust Technology(PTT)やAMDのFirmware TPM(fTPM)のように、CPU側にTPMを搭載する機能はないようだ。

背面のI/Oパネルには

  • シリアルポート
  • ミニD-Subピン
  • DisplayPort
  • HDMI
  • 有線LANポート(LANGuardロゴ入り)
  • USB 3.2 Gen 1×4
  • USB 3.2 Gen 2×2

が配置されている。また、ほかにも前面パネル用に

  • USB 3.2 Gen 1×4
  • USB 3.2 Gen 2 Type-C
  • USB 2.0×2

のヘッダーが実装されている。

背面のI/Oパネル

 オンボードデバイスについては、LANが「Motorcomm YT6801」、オーディオが「Senary Audio(Conexant CX20632)」となる。LANのドライバについてはWindows 11をインストールしても自動で認識されず、個別にインストールが必要なタイプのため、セットアップ中にネットワーク接続が前提となってきたWindows 11では少々厄介に感じた。

 なお、マザーボードにドライバは一切付属しなかった。ASUS製とはいえ、ASUSのWebサイトに型番が掲載されているわけでもなく、兆芯のWebサイトにもまだKaiXian KX-7000シリーズのドライバは公開されていないため、統合グラフィックスのZX C-1190の評価ができない恐れがあったが、今回は筆者の気合いで入手できたため解決した。

 しかしBIOSアップデートなど今後のサポートはあまり期待できそうにない。

執筆時点で兆芯のWebサイトにはKaiXian KX-7000シリーズのドライバは公開されていない

 UEFIについては、KaiXian KX-6000シリーズと同じくBYOSOFTが手がける。グラフィカルなUIではなく、昔ながらのBIOS風だ。

UEFIはBYOSOFTが手がける。ロゴもBYOSOFTだ
今では珍しいBIOS風デザイン

DDR4 3200でしかPOSTしない謎仕様

 XC-KX700M D4については、いつも筆者が使用しているCORSAIR VENGEANCE LPXやCrucial Ballistix Sport LTといったOCメモリではQ-CODE「2E」が表示されPOSTしなかった。低いクロックで動作するなら理解できるがPOSTしないのは想定外だった。

 ほかに手持ちのJEDEC仕様のDDR4メモリも使ったが、同じくQ-CODE「2E」で全滅……。CPUかマザーボードの不良を疑ったが、販売店より「OCではないDDR4-3200のメモリを使え」とアドバイスをいただき、秋葉原で急遽購入。無事POSTするようになった。

 そんな人はいないと思うが、XC-KX700M D4でPOSTしない読者がいるのであれば参考にして欲しい。

JEDEC仕様のDDR4 3200を使わないとQ-CODEに「2E」が表示されて起動しない
ドスパラで購入したDDR4 3200のサムスンの純正モジュール。モバイル会員であれば無料でメモリ相性保証が付くため、今回のような何も信じられない時に重宝する

 なお、原因はUEFIのDRAM Transfer Rateがデフォルトで3,200MT/s固定となっている点だ。そのため、DDR4-3200に対応したメモリがなければ初回起動ができない。1度起動してからUEFIで「BY SPD」に設定すると、搭載したメモリがDDR4-3200に対応していれば3,200MT/sに、対応していなければ1,600MT/sで起動することになる。ちょっと両極端過ぎると思うのだが、起動しないよりはマシだと思うためBIOSアップデートで対応してほしいところだ。

DRAMクロックのデフォルトが3,200MT/sとなっているため、初回起動のハードルが大幅に高くなっている

ベンチマーク

 さて、ベンチマークに移ろう。

 KaiXian KX-7000/8は前世代の製品であるKaiXian KX-6000シリーズと比べてコンピューティングパフォーマンスが2倍になっているとのことなので期待したいところだ。

 今回のテスト環境はKaiXian KX-7000/8に加えて、前回のKaiXian KX-U6780Aとの比較で使用した第8世代のCore i3-8100環境を準備している。前回はボロ負け状態だったので実質リベンジマッチである。

 また、執筆時点でコストパフォーマンスの高い構成としてRyzen 5 5600Gの環境も追加した。

 一部外付けビデオカードを使うベンチマークもあるが、ローエンドのRadeon RX 6400を採用した。Radeon RX 6400はPCI Express 4.0×4のため、この3つの環境で唯一PCI Express 4.0に対応するKaiXian KX-7000/8のみ、本来のパフォーマンスを発揮できる状態だ。

 また、今回はKaiXian KX-7000/8環境用のTPM2.0モジュールの手配が間に合っていないため、暫定的に「BypassTPMCheck」と「BypassSecureBootCheck」を使い、強制的にWindows 11をインストールしている。

テスト機材一覧
CPU兆芯 KaiXian KX-7000/8 3.6GHz(8コア8スレッド)Intel Core i3-8100 3.6GHz(4コア4スレッド)AMD Ryzen 5 5600G 3.9GHz (6コア12スレッド)
マザーボードXC-KX700M D4ASUS PRIME H370M-PLUSGIGABYTE B550I AORUS PRO AX 1.0
メモリDDR4-3200 16GB×2 (Samsung純正)DDR4-3200 16GB×2 (Samsung純正)
※DDR4-2133動作
DDR4-3200 16GB×2 (Samsung純正)
SSDCFD販売 CSSD-M2M1TPG4VNZ 1TB (NVMe SSD)
GPU1ZX-C1190UHD グラフィックス 630Radeon Graphics
グラフィックスドライバKX-7000 Win11 64bit Universal Driver (30.00.23.05-43.00.05)Intel UHD Graphics 630 Driver (31.0.101.2130 )AMD Software: Adrenalin Edition 24.8.1
GPU2Radeon RX 6400 VRAM 4GB
グラフィックスドライバAMD Software: Adrenalin Edition 24.8.1
電源Thermaltake Toughpower iRGB PLUS 1050W PLATINUM (1,050W/80PLUS Platinum)
OSWindows 11 Pro 64bit 23H2

CPU-Z Ver.2.11.0.x64

 まずはCPU-Zに搭載されているCPUベンチマークからだ。シングルスレッドの性能はCore i3-8100に及ばないが、コア数が2倍のKaiXian KX-7000/8はマルチスレッドで逆転している。

Cinebench R23

 CPUで3DCGレンダリングのベンチマークを行なう定番のCinebench R23でテストを実施した。シングルコアではCore i3-8100の約6割といったところでこちらも及ばないが、マルチコアの場合はコア数が2倍の効果もあり、ほぼ同等といったところだ。

PCMark 10 Express

 PCMark 10のスコアとなる。PCMark 10にはExpress、無印、Extendedの3種類ベンチマークが選べるが、KaiXian KX-6780Aの時と同様、無印以降は完走できなかったため、Expressでの実施となる。さらに、ExpressでもOpen GLを使用するSpreadsheet Scoreとの相性が悪く完走しなかったため、カスタム設定でOpen GLを無効にしている。よって総合スコアは出ないため個別の項目のみとなる。

 結果としてはKaiXian KX-7000/8はCore i3-8100に追いつけていない。ただ、KaiXian KX-U6780Aと比べて+1,000~2,000ほどスコアの伸びがあり、差は縮まりつつある。

3DMark

 3DMarkのDirectX 12ベンチマークとなる「Time Spy」、DirectX 11ベンチマーク「Fire Strike」、DirectX 12の統合グラフィックス向けの「Night Raid」でテストを実施した。

 ここからKaiXian KX-7000/8の統合グラフィックスとなるZX-C1190の性能が重要になってくる。

 特にTime Spyのスコア42は、DirectX 12に対応しているビデオカードの中では最弱クラスなのではないだろうか?

KaiXian KX-7000/8はCPUスコアに比べてグラフィックスのスコアが低い

3DMark(Radeon RX 6400)

 続いてビデオカードにRadeon RX 6400を使い統合グラフィックスを無効にした場合の結果だ。

 冒頭にも記載した通り、Radeon RX 6400はPCI Express 4.0×4の仕様となるため、KaiXian KX-7000/8のみPCI Express 4.0×4(約8GB/s)、それ以外はPCI Express 3.0×4(約4GB/s)での動作となる。

 結果としては統合グラフィックスよりも差は縮まり、Night RaidについてはKaiXian KX-7000/8がCore i3-8100を上回った。どちらかと言えばCPUよりもRadeon RX 6400の性能が頭打ちになっているような結果だ。

 統合グラフィックスを使わずKaiXian KX-7000/8をCPUのみで使用する場合、CPU負荷の少ないタイトルやローエンドビデオカードで動くレベルのタイトルであれば問題なく動作しそうだ。

3D Mark -CPU PROFILE TEST-

 続いて3DMarkの「CPU PROFILE TEST」でテストを実施した。使用するCPUスレッドごとにベンチマークを実施する内容だが、CPU-ZやCinebench R23と似たような結果となった。

 KaiXian KX-7000/8は1スレッドあたりではCore i3-8100に及ばないが、コア数が2倍となるため、8スレッド以降はCore i3-8100を超える結果となった。とはいえそれでもRyzen 5 5600Gの半分の性能となる。

ドラゴンクエストX ベンチマークソフト

 DirectX 9.0c世代のゲームとなる「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」での結果だ。

 CPUとしては1スレッドの性能が重要となる世代のゲームのため、KaiXian KX-7000/8の場合マルチスレッドでのアドバンテージは生かせずCore i3-8100には及ばなかった。統合グラフィックスでは「やや重い」判定となった。

 ビデオカードとしてRadeon RX 6400を使った場合でもスコアは順当に向上するものの、Core i3-8100の差は縮まらないため、依然CPUの性能差が出ていると考えられる。KaiXian KX-7000/8とは関係ないが、Ryzen 5 5600GはVega世代のRadeon GraphicsよりもRadeon RX 6400の方がスコアは下がった。

ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク

 MMORPGのファイナルファンタジーXIV のベンチマーク結果だ。

 2024年4月に新しく配信されたファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマークで、第1次グラフィクスアップデートに対応したものとなる。

 KaiXian KX-7000/8の統合グラフィックスであるZX-C1190ではベンチマークが起動しなかったため、すべての環境でRadeon RX 6400を使っている。

 結果としてはCore i3-8100に及ばないが、「やや快適」判定となるため、ビデオカードを別途準備すればKaiXian KX-7000/8でもプレイは可能だろう。

CrystalDiskMark

 NVMeのSSDの速度をどれだけ引き出せるかのベンチマークとしてCrystalDiskMarkでテストを実施した。SSDはPHISON PS5018-E18コントローラを採用したPCI Express 4.0世代のCSSD-M2M1TPG4VNZを使用している。

 3機種の中でKaiXian KX-7000/8のみPCI Express 4.0に対応しているため、理論上はもっとも性能が引き出せると考えられる。

 結果は、確かにKaiXian KX-7000/8のみシーケンシャルで8キューの場合はリード/ライトともにPCI Express 4.0の性能が発揮できているが、ランダムの場合は逆転される結果となった。ストレージへ周りについてはもう少し最適化が必要だろう。

消費電力

 最後に消費電力だ。今回はCinebench R23をマルチスレッドで動作させている時とWindowsが起動した5分後のアイドル状態の時の電力となる。

 KaiXian KX-7000/8は性能の割に消費電力は高めに思えるが、ほかの2環境が元々省エネ構成のため、デスクトップPCとして考えれば許容範囲なレベルだろう。

日常作業であれば問題ないレベルに到達か

 今回は兆芯の最新のx86プロセッサであるKaiXian KX-7000/8を使ってみたが、Core i3-8100に「ボロ負け」だった前回と比べて、「良い勝負」くらいには性能が向上していたように思える。とはいえ、勝てているところはマルチスレッドでの動作がほとんどのため、第8世代Coreシリーズでより上のセグメントのCPUを用意すれば差は再び開くだろう。

 また、統合グラフィックスのZX-C1190については「最新の技術に対応してみた10年以上前のビデオカード相当」という感想だ。

 ベンチマーク結果を見ると、正直CPUの足かせになっているようなイメージだが、KaiXian KX-7000/8でゲームをプレイしようとする人はただの物好きなため、兆芯自体もターゲットにはしていないだろう。今後も性能は伸びていくだろうが、Webブラウジングやオフィス作業であればそこまで問題にはならないため、AMDやNVIDIAに対抗するレベルの製品がすぐに出てくる可能性は低い。

Skyrim SEはFullHD Mid設定(バニラ)で20fpsくらいだ

 以上より、日常的作業であれば問題ないレベルという感想だ。

 あとはこれが安価で中国でばら撒かれれば……というところだが、既にIntel N100シリーズを搭載した爆安ミニPCが君臨している現状、SM2/SM3/SM4といった中国独自の暗号化が必要になる用途を除き、「何か」がなければ今のような「ひっそり」とした売り方から変わらないだろう。

 参考までに、今回のKaiXian KX-7000/8の環境はCPUが日本円で約4万円、マザーボードは約2万円+送料である。

 さて、KaiXian KX-7000/8までは前からロードマップ上にあった製品であり「いつ出るのか」を待つだけだったが、この先についてはまだ何も情報がない状態となる。そのため筆者は兆芯から新製品の情報が出ることをひたすら待つ日々が続きそうだ。

 次回も性能2倍でRyzen 5 5600Gあたりと良い勝負ができる製品が出ると良いのだが……果たしていつになるだろうか。