中国官営メディアが「漢字は韓国のもの」というキム·ジンミョン作家の主張を紹介し、事実と違うと反論した。
官営環球時報は12日、キム氏が先月1日、韓国のあるテレビ番組に出演し「韓国人が歴史的誤解を持っていて漢字は韓国人が作ったものではないと信じている」という荒唐無稽な発言をしたと伝えた。
実際、キム氏はSBSビズの「ビッグクエスチョン」という番組に出演し、漢字は中国東側のウンホ地域の甲骨門から始まり、これは東夷族が作ったもので、東夷族の中で残った人々が韓国人という点を根拠に挙げ、漢字は中国人ではなく韓国人が作ったものだと主張した。 ユーチューブにも掲載されている該当映像は、90万回を超える再生数を記録している。
キム氏は2015年に出版した「文字戦争」という小説でも、漢字は韓国人が作ったものだと主張した。
(引用ここまで)
今日の最後のエントリはちょっとすごいですよ。
漢字韓国起源説の謎を解きます。
さてさて、8月の頭頃に「月刊朝鮮(朝鮮日報の発行する月刊誌)で『韓国国立博物館では漢字を中国の文字と表記している』と騒いでいる」ってニュースをピックアップしました。
【これはひどい】韓国メディアが「国立博物館が『漢字は中国の文字』と解説文に書いている」とクレーム……ああ、そこまで「漢字」の意味が分からなくなっているんですね(楽韓Web過去エントリ)
この時、別途に楽韓さんは──
「韓国では漢字は東夷族が作ったものである、との説が存在があり、当該記事でも述べられている」
「そして韓国では東夷族=韓国人とされている」
「つまり、この記事ではうっすらと漢字韓国起源説が述べられている」
……といった話を紹介しました。
漢字韓国起源説が「韓国人=東夷族」って論拠で行われているのですね。
そして、8月の終わり頃には韓国語学科の大学教授が「漢字は我々が作った文字であることは確実な事実だ」と述べている記事を紹介しています。
韓国人大学教授「漢字は我々が作った文字であることは確かだ」と漢字韓国起源説を堂々と述べる(楽韓Web過去エントリ)
こちらでは「韓国人に『漢字が韓国起源である』との話はそれなりに受け入れられている説」であることを語りました。
大学教授が語るほどにかなり一般的な話、説であるってことですね。
ですが、まだ疑問が、それも根本的な疑問が残るはずです。
「なぜ、そのような漢字韓国起源説が語られているのだろうか」って話です。
あ、冒頭記事は小説家が「漢字韓国起源説」に言及して、中国の英字紙である環球時報に突っこまれたって記事です。
まあ、斯様に漢字韓国起源説はあちこちで語られているって記事でそれ以上の話ではありません。一種のダミー記事です(笑)。
この漢字韓国起源説3部作の最後ですから、なぜ韓国では「韓国漢字起源説」がこれほどまでに浸透しているのかを解き明かしたいところです。
「最大の謎解き」が必要となるでしょう。
これはまず、1970年に朴正熙によって漢字が禁止されたことが原因、遠因になります。
その後、韓国ではハングルオンリーになって、現在では自分の名前すらも漢字で書けない韓国人が圧倒的多数となっています。
幾度か漢字復活をしようとの運動が出たりするのですが、もうすでに教師からして漢字を知らない世代になってしまったので尻すぼみに終わっています。
北朝鮮も完全に漢字を排斥しているので、朝鮮半島から漢字はほぼ消滅しました。
さて、なぜ漢字禁止、ハングル全面採用が韓国漢字起源説につながるのか。
それは漢字復興派が「漢字は我々の祖先が作った文字だから、使い続けなければならない」と言い出しているからなのです。
こちらの記事をごらんください。
[ハングルの日特集③] 「漢字は我が民族の東夷族が創製した」(時事ジャーナル)
漢字教育の重要性を強調する学者たちは、漢字が中国だけの文字ではないと主張する。 漢字の原型となった甲骨文字を韓国民族の東夷族が作ったという主張だ。 全国漢字教育総連合会の故チン・テハ理事長が最も代表的な学者だ。
漢字は漢族の文字という意味だ。 「東夷族漢字創成説」を主張してきた学者たちは、漢字の名称から改めるべきだと指摘している。 チン理事長は「漢字という名称は漢代に漢族によって作られた文字だという錯覚に陥らせる。 しかし、漢字は漢代はおろか秦と周の代を遡及し、漢の建国から約1400年以前、殷の代にすでに文字が非常に発達して書かれたことが分かる」とし、「今後、漢字という名称は対内的に古ハングル、対外的には東方文字としなければならない」と強調した。
(引用ここまで・太字引用者)
チン・テハ氏は韓国で代表的な漢字教育復興派。「全国漢字教育総連合会」の理事長でした。
なぜか日本のWikipediaにページあったりしますね。
あと太字部分で第1部の月刊朝鮮の記者が「国立博物館で『漢字は中国の文字』などと書くな!」としたのかも理解できることでしょう。
このチン・テハ氏こそが「韓国人=東夷族であり、我々の祖先こそが漢字を創ったのだ」って主張を行い、「だからこそ我々は漢字を使わなければならないのだ」との主張をはじめた人物なのです。
ついでに「韓国人は当時遼東半島から東アジア全域に拡がってその領土を持っていた」って例の「輝かしい韓国史観」の持ち主でもあります。
彼がこの主張をする以前の2000年前後よりも前には「漢字韓国起源説」はなかったように思われます。
まあ、結果としては漢字教育は復活せずに「漢字韓国起源説」だけが独り歩きする結果になったわけですけどね。
韓国では早期にブロードバンドが普及したこともあって、この説がネットユーザーの目に触れることが少なくなったのでしょう。
そして、韓国人の自尊心、琴線に触れたのです。
その結果、こうして「どこから生まれたものかは知らないが、韓国人の多くがなんとなく『漢字韓国起源説』を知っている」ものとなったのですね。
いかがでしたでしょうか、漢字韓国起源説3部作。
けっこうな大作だったといえると思います。最初はnote用に書いていたものなのですが、さすがにこれを本誌にあたるこちらで書かないわけにはいかないよなってことで仕上げてみました。
なかなかの仕事をやってのけたのではないですかね。
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