NewJeans「Ditto」「OMG」MVは2010年代への回帰? K-POPのMV史を振り返る
12月にリリースされたNewJeansの新曲「Ditto」「OMG」のMVは2作ともテイストが異なりながらも、メッセージ性を感じさせるような作風で大きな反響を得た。
MVを制作したDolphiners Film(イルカ誘拐団)はネット広告などさまざまな映像コンテンツに進出している映像メイキングスタジオだ。世界三大広告祭と言われる「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」や「ニューヨークフェスティバル(NYF)」での入賞経験もあり、2021年Kakaoエンターテインメントに買収された。
名前を知られるきっかけとなった韓国の有名シェフ、チェ・ヒョンソクを起用したCanonの配信用CF「チェ・ヒョンソクのフォトキック」では、時にショッキングなストーリーでカメラと共に様々な運命に遭遇するシェフの姿がドラマチックかつユーモラスに描かれた。
同じくスターシェフのペク・ジョンウォンが主演のオンラインゲーム・MMORPG『V4』の広告「ペク・ジョンウォンが教える自己管理法」では100人のペク・ジョンウォンが登場するなど、元々は映画制作を志して集まった映像スタジオということもあり、ひねった展開がインパクトを残すプロットが特色だ。スタジオ初期にヒップホップのMVを撮ったことはあるもののK-POP関連のMVは今回の「Ditto」「OMG」が初めてで、当初のテーマの話し合い以外は基本的に全てプロデュース側から任されて制作したという。意味深長なメッセージと反転的プロットは様々な意見を呼び起こしているが、K-POPのMVの歴史を紐解けば、このようなストーリーとメッセージ性を含ませた手法は、日本で第一次KPOPブームが起こった2000年代後期から2010年代前期にかけてのMVへ回帰したかのような印象だ。
2010年前後はストーリー性のあるMVが人気に
2000年代のMVは、よりドラマチックな物語が込められた長尺のものも多かった。まだスマホや携帯電話よりもパソコンやTVで映像を見ることが多かった時代、大きなビジュアルソースであるMVに結末が気にならざるを得ない物語や、ショッキングな展開を加えることは、それそのものが楽曲の大きな広報となっていた。
例えば、Leessang「Ballerino」(2007年)は衝撃の展開が韓国ではかなり話題となったMVだ。
BIGBANG「LIES」「HARU HARU」(2008年)はストーリー仕立てのMVだが、それぞれの曲の歌詞にリンクした内容が特徴だろう。「犯罪」「病」「死」といったアイドルにしてはネガティブな要素が満載の内容だが、当時流行していた韓国ドラマのストーリーのように、交通事故や病気といった衝撃的な要素が登場するMVはこの時代には珍しくなく、特に当時「不良的なかっこよさ」のイメージもあったBIGBANGには「ナイーブさゆえに逸脱し傷つく青少年たち」という姿がピタリとはまったのかもしれない。
BTSのミニアルバム『花様年華』シリーズがリリースされた2015年当時、これらのMVの影響を感じたアイドルファンは少なくなかったのではないだろうか。
IUやINFINITEなどを手がけた映画監督ファン・スアによるMVも、独特の物語性が印象的だった。
特にIUの「You&I」(2011年)は、「above the time」(2019年)とストーリーが繋がっているという部分が時代を超えて話題を呼んだ。
T-ARAの「Roly-Poly」はリリース年の2011年5月に公開され、韓国で大ヒットを記録した映画『サニー 永遠の仲間たち』をリファレンスしたストーリー仕立てのMVで、12分という長尺だ。これらのMVの特徴は最低でも5分以上、長いものでは10分以上という長めの尺で、ストーリーの内容も歌詞とリンクしているものが多かった。