リアルサウンド連載「From Editors」第23回:ガメラは表情が魅力の怪獣だ 17年ぶりの新作『GAMERA -Rebirth-』を観て
「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。
第23回は、特撮とメタルが好きな信太が担当します。
巨大特撮イヤーに再認識した“ガメラならではの魅力”
2023年は巨大特撮がとにかくアツい。
筆頭は、11月3日公開予定の『ゴジラ-1.0』でしょう。初代『ゴジラ』の公開年=1954年にも近い、戦後まもない日本を舞台にした新しいゴジラの物語を山崎貴監督がどう描くのか、世界中から注目が集まっている作品です。また、この「From Editors」でも以前紹介した『ウルトラマンブレーザー』(テレビ東京系)も、隊員同士の緻密なコミュニケーションを核にした脚本&演出で、毎週見応え抜群なウルトラシリーズになっています(※1)。
そして、ゴジラ、ウルトラマンと来たら、忘れてはならないのが「ガメラ」です。9月7日、ガメラシリーズとしては実に17年ぶりとなる新作『GAMERA -Rebirth-』がNetflixで配信開始されました。本作はガメラ初のアニメーションシリーズで、監督はアニメ『GODZILLA』シリーズなどで知られる瀬下寛之氏。ゴジラと並んで日本特撮を代表する怪獣であるガメラですが、今年はその両方の新作が公開されるという胸躍る年なのです。三度の飯よりガメラが好きな筆者は、『GAMERA -Rebirth-』全6話を一気に観終わりました(以下、具体的なネタバレはせずに所感を綴らせていただきます)。
さて、「ゴジラと並んで日本特撮を代表する怪獣」と書きましたが、筆者は「ガメラって、ゴジラとどう違うの?」と周囲の人によく聞かれます。確かに、ゴジラに対してガメラはオルタナティブな存在と言いますか、どういう怪獣なのかが一般的にはあまり浸透していないかもしれません。しかし、今回の『GAMERA -Rebirth-』を観れば、ガメラがどんな魅力を持つ怪獣なのか、予備知識なくともよくわかると思います。ストーリーもジュブナイルものの成長譚として面白く、1989年の夏を舞台に、小学校6年生の主人公4人が様々な怪獣(と巨大な陰謀)に遭遇していくドラマになっていて、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』が好きな方にも刺さるのではないでしょうか。主人公たちの内面性や過去を掘り下げていく物語だけでもグッとくるものがあり、特に第3話でSFオタクなジュンイチを取り巻く4人の信頼関係を見て、大切なものを思い出したような気持ちになりました。ガメラはその営みを遠くから見守るような存在として登場するのです。
つまるところガメラは、昭和〜平成まで一貫して人類の味方、特に“子供の味方”であり続けてきました。描き方や設定は作品ごとに全く異なりますが、緑の血を流し、巨大な敵を前にしてボロボロになりながらも、人間(または地球)を守るために戦い続けるーーそんな姿こそ“ガメラらしさ”であり、『GAMERA -Rebirth-』でも主人公の少年たちを守りながら、回を追うごとにボロボロになっていく姿に、「ガメラだなあ」と感慨に耽ってしまうのでした。
もっと言うと、ガメラは動物的な本能よりも、明確な“意志”を持って戦う怪獣です。そこを徹底的に突き詰め、社会的なシミュレーションとリアリティ重視の脚本に落とし込むことで、特撮史に残る傑作となったのが平成三部作(『ガメラ 大怪獣空中決戦』『ガメラ2 レギオン襲来』『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』)ですが、そのあたりから意志を持ったガメラの“表情”がどんどん魅力的になっていきました。今回の『GAMERA -Rebirth-』ではアニメーションになったこともあり、そうやって苦しみながらも戦うガメラの表情が、さらに鮮明に見えるようになったのは素晴らしかったです。ガメラの必殺技のバリエーションも見事で、平成三部作では「火球」以外にも様々な大技で敵を倒してきましたが、『GAMERA -Rebirth-』では持ち前の回転ジェットを活かした「回転系」の必殺技に磨きがかかっていて、思わず「おおっ!」と声を上げてしまうほど迫力満点な技が見どころでした。
ちなみに余談ながら、怪獣の“表情”をどれだけ魅力的に撮れるかは、特撮の面白さを左右する大きなポイントです。その点で筆者が感銘を受けたのは、今年放送から25周年を迎えた『ウルトラマンガイア』第38話「大地裂く牙」。ミサイル攻撃で致命傷を負った罪のない怪獣・ティグリスが、最後の力を振り絞って抵抗するも、力尽きて涙を流しながら死んでしまうシーンです。自己都合で他の生物を殺してしまう人類の愚かさを描いたショッキングな話で、今でもたまに観返しては涙してしまいます。怪獣がドロドロと血を流す演出もわりと珍しく、そういう意味では『ガイア』のティグリスは、ガメラと通ずる“表情を見逃せない怪獣”と言えるかもしれません。