『どうする家康』松本潤が“すべての地獄”を背負う家康に あまりに辛い千姫の境遇
『どうする家康』(NHK総合)第46回「大坂の陣」。豊臣が大仏を再建した方広寺の鐘に、徳川家康(松本潤)を呪う言葉が刻まれたという。家康は茶々(北川景子)が徳川に従い、人質として江戸へ来ることを要求する。豊臣への忠義を貫く家臣・大野治長(玉山鉄二)は激怒し、両家の仲介役である片桐且元(川島潤哉)の暗殺を計画する。家康はついに14年ぶりの大戦に踏み切ることになった。
第46回は、豊臣と徳川をつなぐ家康の孫娘・千姫(原菜乃華)の苦悩と、信長(岡田准一)や秀吉(ムロツヨシ)と同じ地獄を背負いあの世へ行く心づもりで戦へ臨む家康の重々しい表情が強く印象に残っている。
両家を仲介する且元を非難し、治長と茶々、そして豊臣秀頼(作間龍斗)が且元の暗殺を計画するのを、千姫はただ一人、不安げな面持ちで聞いていた。秀頼は不安げな千姫に「余は徳川から天下を取り戻さねばならぬ」と自らの意志を伝えた上で、たとえ戦になろうと千姫の祖父である家康や父・秀忠(森崎ウィン)が手出しすることはないだろうと励ました。けれど、千姫は浮かない顔をしたまま、秀頼に問いかける。
「あなた様は本当に戦をしたいのですか? 本当のお気持ちですか?」
自身が徳川の孫であること、秀頼が豊臣を背負っていることを、千姫が理解していないわけではない。千姫は純粋に、夫である秀頼自身を案じているのだ。切実に問いかける千姫の佇まいから戦を望まない彼女の性分が伝わってくる。秀頼は千姫の問いかけに「余は……豊臣秀頼なのじゃ」とだけ返した。腹を据えた顔つきには見えなかったものの、秀頼は豊臣を率いる決意を固めている。秀頼を悲しそうに見つめた千姫が、今にも泣きそうな顔で力なく俯くのが切ない。
徳川の孫娘である千姫だが、豊臣の家妻でもある。戦いを前に、茶々や秀頼が家臣たちを鼓舞する中、茶々は千姫に「お千や。そなたも豊臣の家妻として皆を鼓舞せよ」と言う。千姫の複雑な胸中を思うと心が痛む。けれど千姫は、おずおずと前へ歩み、「豊臣のために……励んでおくれ!」と声を張る。伏せた目に本心を押し殺す様が感じられたが、家臣らに視線を向ける懸命な姿には、秀頼が“豊臣秀頼”であるように、自身もまた豊臣の人間として役目を果たそうと努める気概が感じ取れる。とはいえ、やはり本心は戦い自体を望んでいない。士気が高まる家臣らを強気の構えで見つめる茶々とは対照的に、千姫は苦しそうに息を呑んだ。