『虎に翼』第9~14週の“週タイトル”の意味を解説 物語とシンクロする秀逸な言葉の数々
社会への違和感と戦い続けて弁護士になるも、無理がたたって倒れてしまい、法曹界への道を諦めて家庭へと入った寅子(伊藤沙莉)。
NHK連続テレビ小説『虎に翼』は第9週で第1話の冒頭に戻り、第10週からは裁判官編と題して、物語は新しいフェーズへと突入した。週タイトルは引き続き、“女”という言葉が入ったことわざや慣用表現に「?」をつけたもの。第9~14週までのタイトルの意味を踏まえながら、内容を振り返っていく。
第9週「男は度胸、女は愛嬌?」
「男は度胸、女は愛嬌?」とは、「男にとって大切なものは、物事に動じない強い度胸で、女にとって大切なものは、にこやかでかわいらしい魅力だということ」(※1)。
終戦を迎えるも、直道(上川周作)、直言(岡部たかし)、優三(仲野太賀)と、立て続けに猪爪家の男性陣が亡くなってしまう。大人の男性がいなくなった猪爪家で、高校を卒業したばかりの寅子の弟・直明(三山凌輝)は、大黒柱として働きに出ると宣言。違和感を感じながらも何も言えない寅子だったが、偶然目にした「日本国憲法」と優三からもらった言葉に背中を押されて立ち上がる。
第9週は、直明の度胸ある言葉を優しく否定し、寅子が「一家を支えたい」「もう一度法曹界で働きたい」と度胸を見せた週となった。直言のある意味で愛嬌ある死に様も印象的だった。
第10週「女の知恵は鼻の先?」
「女の知恵は鼻の先」とは、「女は目先のことにとらわれ、遠い先のことを見通す思慮に欠けているというたとえ」(※2)。
「裁判官として働きたい」と、法曹会館へ直談判に向かった寅子。久藤(沢村一樹)の後押しもあって、司法省で民法改正に携わることに。結婚後の名字についての議論では、法曹界の重鎮・神保(木場勝己)の意見に違和感を覚えるも、一度逃げ出したという負い目から、自分らしさを出せないでいた。そんなとき、穂高(小林薫)から、寅子を法の道へ招き入れたせいで不幸にしたと詫びられる。寅子は、「自分は好きでここにいる」と激昂する。
好きで戻ってきたのだから、自分にできることをやろうと、再び「はて?」と相手に疑問をぶつけられるようになった寅子。家制度の必要性を語る神保に対して、自分の意見をはっきりと述べる。
第10週は、やっと自分の意見が言えるようになった寅子が、民法を通して未来の人々の生活に想いを馳せる週となった。未来のために、好きな自分でいようと、自分自身を鼓舞する寅子の姿は、とても晴れやかだった。
第11週「女子と小人は養い難し?」
「女子と小人は養い難し」とは、「女性と器量の小さい人は扱いにくいということ」(※3)
学友であった花岡(岩田剛典)が、違法である闇市の食べ物を拒否して栄養失調で亡くなったことに大きなショックを受ける寅子。翌年、家庭裁判所準備室に異動となった寅子は、家事審判所と少年審判所の合併のための話し合いを進めていくが、双方の志の高さから話し合いは進まない。上司となった多岐川(滝藤賢一)からは熱意が感じられず、挙句に花岡の死を批判する言葉を口にする。寅子は多岐川の言葉に納得できないながらも、家庭裁判所設立に向けて尽力する。
第11週では、志の高さから生きづらくなってしまったり、扱いづらくなってしまう人物が愛情深く描かれた。小人(器量の小さい人)と言葉で定義するだけでは見えてこない事情があることを説いた週となった。