『ブラックペアン』S2はなぜ実現? 伊與田Pが大切にする“嘘だからこそ伝えられる真実”

『ブラックペアン』S2を伊與田Pに聞く

 数々の話題作を生んできたTBS日曜劇場。数ある歴史の中で、「6年ぶりの続編」というだけでもチャレンジだが、「演じる役者は同じでも主人公が違う」という異例の試みが行われている『ブラックペアン シーズン2』。主演を務める二宮和也を中心に、プロデューサーの伊與田英徳はいかにして本作を作り上げたのか。放送を前にその狙いを聞いた。(編集部)

二宮和也×竹内涼真の6年間の変化は?

――初回放送を控えた今のお気持ちは?

伊與田英徳(以下、伊與田):この時期は、やっぱり不安が8割ですね。本当は楽しみ8割にしたいんですが、放送日が迫ってくると、だんだん不安が大きくなってくるんです。とくに今回のような続編の場合、すでにパート1を応援してくれている方のポテンシャルがある状態からスタートするので、その期待に応えるためにはいろいろなことがうまくいかなくてはいけない。さらに言えば、「シードされているチーム(優勝候補)は優勝しなきゃいけない」といった思いがあって。「優勝する」なんておこがましいですが、それくらいのプレッシャーがありますね。

――とくに「日曜劇場」は、日本のドラマ界における特別な枠だと感じます。伊與田さんが「日曜劇場だからこそやらなくてはいけない」と思うことはありますか?

伊與田:やはり先輩が作ってくれて、長い歴史の中いろんなバトンを繋いでやってきた枠なので、少しずつ受け継がれているものがある気がします。かといって、昔のやり方が踏襲できているというわけでもないでが、かといって「踏襲しなくてはいけない」ということでもないんですけどね。今、一番面白いと思うことをそれぞれの方がやればいいと思いますが、どこかに伝統のようなものが刻まれているとも感じています。

――今回の『ブラックペアン シーズン2』は、原作者の海堂尊さんからのご提案だったそうですね。

伊與田:シーズン1の打ち上げのとき、「ちょっとちょっと」と裏に呼ばれたので「先生を怒らせるようなことをしちゃったのかな」と思ったんですよ(笑)。そうしたら「面白かったから、続編をやってほしいんだ」と言われまして。でも、そのとき渡海の続編となる原作はなかったので、新たに書いてくれるのかなと思ったら「書きません」と(笑)。そこから「天城というキャラクターがあって、それを二宮さんがやったら面白いと思うんですよ」と言われて、「なるほど」というところから今回の企画がスタートしました。

――続編において、同じキャストが違う役を演じるというのはかなり珍しいですよね。

伊與田:そうですね。でも、これはなかなかの名案なんです。普通、続編というと今までのキャラクターを全部背負っていかなければいけませんが、天城はゼロからスタートさせるので、続編であって続編でない。だから今までご覧になっていた方も楽しめるし、シーズン2から観る方でも十二分に楽しめるんです。そこは、海堂先生さすがだなとあらためて感じています。

――シーズン2では、新たに西浦正記監督が演出を担います。フジテレビで多くの作品を手がけられてきた方ですが、どのような点に期待してオファーされたのでしょうか?

伊與田:西浦さんは幅広い作品をやっていらっしゃいますし、年齢が僕と1つ違いなんです。局は違えど同じ時代を走ってきた方なので、いつかご一緒できたらと思っていました。その中でいろいろなタイミングが重なって、今回お声掛けしたら「ぜひ」と即答していただけて大変ありがたかったですし、ラッキーだなと思いました。実際にやってみると、やはり発想力が豊かでとても面白い演出をされる方だなと思いますね。

――西浦監督ならではと感じるのはどんなところでしょうか?

伊與田:今は台本を“自分の型”にはめないとできない監督が多いような気がしますが、西浦監督は台本に寄り添う演出ができるんです。すごく柔軟なんだと思いますね。台本にスーッと溶けていくような、台本の色に染まれる素晴らしい監督だなと。きっと手腕がなければそこには辿り着けなくて、懐の深さと実力がなければできないことだと思います。一方で、オーストラリアロケではロケ地を生かしたダイナミックな映像もあるし、カジノのシーンではドキドキハラハラもある。医療シーンもテキパキと仕切りながら、そこに演出のピークを持っていく手腕は、やはりさすがだなと思います。

――本作は、二宮さんはじめキャストのみなさんと意見を出し合いながら制作されていると聞きました。

伊與田:二宮さんの場合はいろんな意見も言うけれど、それを押し付けるわけではないんです。だから一緒に作っていて楽しいいんです。「これはどうかな」「こっちはどうかな」とコミュニケーションを取りながら、少しずつ積み上げていく。その中で突然、突拍子もないことをやってきて、それが面白いんです。“積み上げるもの”と“とんでもないことをやる”という2つのバランスがいい、面白い人だなと思います。

――その印象はシーズン1から変わらないですか?

伊與田:変わらないですし、6年経って磨きがかかったように思います。作品に対するモチベーション、台本に対する誠実さや発想力が増幅している気がしますね。

――シーズン2では、竹内涼真さん演じる世良雅志が研修医から医師へと成長していますが、竹内さんご自身の変化を感じるところもありますか?

伊與田:シーズン1のときには、何でも受け入れていましたけど、今は監督にも「僕はこう思うんですけど、どうですか?」と意見を出したり、二宮さんともコミュニケーションを取りながらお芝居を作っているので、すごく頼もしく思いますね。「ああ、ここまで頑張ってきたんだな」と、そのやり取りをほほえましく見ています。役自体も研修医から医師になったこともあるとは思います。、手術シーンもしっかりとやっていただいているので、6年経って成長したキャラクターになっているなと思います。

――新キャストの方も参加されますが、特に研修医パク・ミンジェ役を演じるキム・ムジュンさんは日本のドラマ初出演です。実際にご一緒されてみていかがですか?

伊與田:彼が来ると現場が明るくなります。いろんなことに前向きで、いろんなことに興味を持っていて。きっと日本語を勉強中だとは思いますが、まるで言葉を覚えて嬉しくて仕方がない赤ちゃんのように、楽しそうにお話されています。新しく日本という場所に来て、言葉だけでなく撮影方法のちょっとした違いにも興味を持って、一個一個楽しんでいるのが伝わってくるので、逆にこちらが元気をもらえているような状況です。

――キャストのみなさんともコミュニケーションを?

伊與田:二宮さんにも竹内くんにもかわいがられていますよ。飛び込むのが早くうまいですし、適応力があるなと思います。韓国が今、世界でリードし始めているのは、このバイタリティがあるからなのか、と。もちろん彼だけに言えることなのかもしれませんが、そう思わせてくれるくらいに好感が持てるし、ポジティブなパワーがあります。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる