プライベートジェット機のパイロットがレディットに登場。
仕事上の役得や、キャリアの懸念について、みんなの質問に答えてくれました。

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プライベートジェットのパイロットになって約15年。ATP(航空運送用操縦士)のライセンスを持っていて、CE-500(サイテーション500シリーズ)、CE-525(サイテーションCJシリーズ)、EMB-550(エンブラエル・レガシー500/プレトール600)の型式証明を取得した。また、シングルエンジンのターボプロップ機であるピラタスPC-12NGXにも乗ってる。

現在、操縦している最大のジェット機は、航続距離4,000マイルで、乗客は9人。
価格は2,300万ドルで西海岸からハワイ、ニューヨークからロンドンをノンストップ。

いわゆる「チャーター便」(1回限りのジェット機レンタル便)を販売する営業所勤務、フルタイムのチャーター便機長、そしてプライベートフライト部門のチーフパイロット兼運航部長を務めてる。

有名人や、あまり知られていないが裕福な人たちを乗せ、数多くのフライトをこなしてきた。

なんでも質問してくれ。

翻訳元






Q.  プライベートフライトで起きた最もクレイジーな出来事は?


A. 多くの人がプライベートジェットの後部座席は放蕩の場だと思い込んでいるが、正直なところ99.9%は退屈な場所だ。たまにタバコに火をつけようとする人がいて、コカインと思われる小瓶を見つけることがある。




Q. 顧客からチップをもらうことはありますか?また、プライベートチャーターにはどんな特典がありますか?


A. チャーター便のパイロットはたいていチップを期待できる。
私がチャーター便を操縦していたときに好きだった乗客の一人に、今は引退してしまったが、シカゴ・ベアーズの有名なフットボール選手がいた。彼をラスベガスによく飛ばしたが、必ず1,000ドルのチップをくれた。

その他の特典としては、ホテルのポイント集めなどがある。
マリオットのホテルに滞在し、十分なステータスとポイントを貯めたので、個人的な休暇はすべて無料だ。レンタカーも同様。

乗客が素敵な目的地に行くときはもちろん、彼らが早く帰りたいときのために近くに泊まるのが普通なので、そこで楽しんでいる。だから、もし彼らがアイスランドに1週間滞在するのであれば、私も滞在することになる。





Q. JFKジュニアとコービー・ブライアントのパイロットは、空間識失調(操縦者が空間的な方向感覚を失うこと)で墜落したと思いますか? 


A. 100% そう思う。
 たまたまコービーの墜落地点から10分ほどのところに住んでいて、近くの空港を拠点にしているので、その辺りのことはよく知っている。
残念ながら避けることはできなかっただろう。ヘリコプターも非常に古く、現在のような素晴らしい装備はほとんどなかった。もし私が同じルートを飛ぶとしたら、どんなに霧が濃くても、計器に地形をグラフィカルに表示させる。



Q. 顧客の中で、最も有名な人物は誰だった? 


A. 詳しいことは言えないが、元大統領、バットマンを演じた人、最近分裂した有名なカントリーバンド、さまざまなオスカー受賞者と候補者。




Q. なぜプライベートジェットは民間旅客機よりはるかに高い高度を飛ぶのですか? 


A. 高く飛べば飛ぶほど消費する燃料は少なくなるから。
普通の旅客機よりも大幅に軽量であるため、推力と重量の比率が高くなり、天候、乱気流、直行ルートなどの利点があり、同じ目的地まで飛ぶのにも必要な燃料をより少なくすることができる。要するに、エンジンが適切な推力を提供するのに十分な大きさになるよう、重量が軽くなっているから。
大型の737型機では、燃料と45,000人の乗客を満載するため、エンジンを胴体程の大きさにする必要がある。

L. プライベートジェットは機内高度が高い(内圧が低い)ということですか?それとも、サイズが大きいので、より高い圧力を維持できるのでしょうか?もしそうなら、耐用年数にどのような影響があるのでしょう?

A. 787型機なら機内高度はかなり低いと思うが、プライベートジェットは他の機体より内圧が高い。
私が飛ばすジェット機の 1 つは 9.5 PSI で、43,000 フィートで飛行する場合、キャビンは約 4,500 フィートの気圧だ。一部の旅客機は、35,000 フィートでも 6,000 フィートの気圧。圧力容器は、寸法が小さいほど堅牢に作るのが簡単だ。
耐用年数に関しては、エンジンや機体が耐用年数に達するまで航空会社が使用することはない。



Q. なぜこの特殊な職業を選んだのですか?どのように長所と短所を比較しました?


A. 私にとって、プライベートジェットは空のフェラーリ、民間旅客機はバスのようなものだ。
航空会社の人たちを非難するつもりはないが、このジェット機の洗練されたデザインに惹かれた。
また、毎週のように同じ大きな民間空港を訪れるのとは対照的に、オーナーの気まぐれで新しい目的地を探検できるという考えも気に入った。

L. 素晴らしいアイデアだ!客層によって勤務時間が不規則になることもある?どれくらいのワークライフスケジュールを保つことができる?

A. 会社によって大きく異なる可能性がある。大手のチャーター便運航会社には固定スケジュールを提供するところもあるし、パイロットが2人いる小さなオーナー企業にはオンコール制を期待するところもある。私は大体1-2週間前にはスケジュールを把握している。
パイロット不足の中、たとえ飛行機を駐機させることになっても、要求があれば適切な休暇を与えられるという点では、状況は良くなってきている。




Q. 飛ばして最も楽しかった飛行機は?訪れた空港で素晴らしかったところは?


A. ピラタスPC-12は、これまで乗った旅客機の中で最も楽しい機体だ。
シングルエンジンのターボプロップだけど、操縦するのがとにかく楽しい。

それ以外では、ステアマンデカスロンなど、クールな曲技飛行をする飛行機にも乗れた。




Q. 高高度を飛ぶなら、キャリアを通じて放射線の影響が蓄積されることを心配していますか?


A. 以前はそうでもなかったが、何度か表面的な皮膚がんを切除してから気になるようになった。

L. CDCによると、ニューヨークからロスまでのフライトで、およそ2-6ミリrem(0.035ミリシーベルト)のX線を浴びる。つまり、レントゲン検査1回だ。
大西洋を横断する飛行では、条件次第だが2-3回分。このようなことを何年も続けるパイロットにとっては、これは本当に危険なだろう。

A. 私たちパイロットが十分に議論していないことだ。
そのこと
について考えたくないだけなのかもしれない。私たちのほとんどは飛ぶことに情熱を注いでいるから、そういったことは無視したいんだけど、パイロットが引退した後の平均余命はかなり悪い。




Q. UFOを見たことはありますか? 


A. たいていは、近づくにつれて気象観測用の気球だったとか、説明できる。
一度だけ、説明のつかない金属的なものを見たことがある。素早く方向を変えるなど、特におかしな動きもしなかったが。

L. 普通に動いているだけ?ホバリング?

A. 当時はどんな旅客機よりも高いところを飛んでいたが、この物体はさらに上空に見えた。
航空交通管制に気象観測気球がこの地域にあるかどうか尋ねたが、ないと言われた。
中国のスパイ気球だったかもしれないが、一定の方向に高速で移動しているように見えた。
高度が高い場合、基準となるものがなく、自分との相対的な関係を判断するのは難しい。




Q. 民間航空機の旅は、プライベートジェットの旅よりも全体的に安全だというのは本当ですか? 


A. プライベートジェット業界の裾野は広く、一括りにすると数字が歪んでしまう。
事故のほとんどは、年配の金持ちがジェット機を購入し操縦を学びに行くことで起こるものだ。
正直なところ、彼らは飛ぶべきでないのだが、誰も止めることができない。
その反面、大企業のフライト部門や大規模なチャーター便会社は、一流航空会社に匹敵する安全文化を持つことができる。



Q. プライベートジェットのパイロットになることは、民間パイロットに比べてキャリアアップなのでしょうか、それとも単にキャリアの道が違うだけなのでしょうか? 


A. ほとんどの場合、異なるキャリアパスだ。
一部のプライベートジェット運航会社はパイロットの待遇が良くなく、大手航空会社に転職するひともいる。
私の同僚2人は、ターミナルでの経験や手に負えない乗客、年功序列で管理されることを嫌っていた。




Q. バレルロールをやったことはある?


A. ジェット機ではないけれど、何度も。趣味で曲技飛行をしたこともある。
チーフパイロットの上司が、乗っていた小型ジェット機ファルコン10をバレルロールさせたことがある。乗客は乗っていなかった。




Q. いくら稼いでますか? 


A. 私ぐらいのレベルなら、本拠地やスケジュールなどいくつかの要素に基づいて25万~35万ドルを期待できる。




Q. プライベートジェットを最も安く利用する方法は?


A. ジェット機は座席単位ではなく時間単位で売られているので、安いシングルエンジンのターボプロップかライトジェットを見つけ、各座席を埋めるのに十分な数の友人を見つけ、費用を折半すればできる限り低コストになる。例えば、フェニックスからラスベガスまで7人乗りのジェット機で1泊往復すると7,500ドルかかるかもしれないが、それを7分割するとか。




Q. 初心者が仕事としてジェット機を操縦できるようになるまでには、どれくらいの時間がかかるのでしょうか?そこに到達するまでにかかる費用は?


A. 毎週どれだけの時間を費やすかによる。
例えば、週に1回、1時間ずつ教習を受けるのと、毎日2時間ずつ教習を受けるのとでは、1回の教習に対するコスパが変わってくる。自家用免許の取得には少なくとも40時間が必要で、ほとんどの人はもう少し必要だ。あなたが希望するレベルに達するには、最終的に750時間くらい必要で、すべての免許を取得する必要がある。
費用は、すべて終わると6桁になることもある。軍隊にいたことがあれば、飛行訓練の大部分を優遇されて支払うことができる。また、学生ローンだけでなく、様々な奨学金や学資援助がある航空大学もある。




Q. 飛行中に見た最も印象的な大気現象は?


A. セントエルモの火
初めて見たとき、フロントガラスがプラズマの球体に変わったように見えたのを今でも覚えている。




Q. フライトの途中で、別の場所に行きたいとリクエストされたことはありますか?


A. シアトルからニューヨークへ向かうフライトで一度あった。
シカゴに近づくにつれ、クライアントがお気に入りのステーキハウスがあることを思い出し、立ち寄れないかと尋ねてきたことがある。それ以外では、目的地の天候によってフライトの途中で目的地を変更することがよくある。



Q. 自動操縦の時間をどう過ごしてますか?


A. 常に目を光らせ、あらゆるサインに気を配っている。
また、頻繁に無線通信を行い、周波数を変更してる。それ以外では、交代で食事をしたり、トイレを使ったり、メールをチェックしたり、事務仕事をしたり、ポッドキャストを聴いたり。




Q. 以前、飛行機によく乗っていたときは、2時間のフライトでもいつも以上に疲労を感じていました。仕事の後は疲れていますか?プライベートジェットは旅客機よりも気圧差が少ないと聞いたので。


A. 疲労を軽減するために、気圧差の改善は驚くほど効果がある。
プライベートジェットで1日に5時間のフライトを何度も繰り返せば疲れも感じるが、他機の10時間のフライトに比べればそれほどでもなかった。




Q. どのようにしてこの職業に就きましたか?また、その職業で成功した理由は何だと思いますか?


A. いつも空への情熱を持っていたから。
祖父は第二次世界大戦で飛行機に乗っていたし、13歳くらいのときには、すでに両親にフライトレッスンを受けさせて欲しいと懇願していた(レッスンを受けるのに年齢制限はない)。そのあとフロリダの航空大学に行き、残りの免許を取得した。


重要なスキルの一つに、平常心を保つことが含まれる。
漠然としているように聞こえるかもしれないが、いざというときパニックになったり、熱くなったりするような人は、緊急事態に次ぐ緊急事態ばかりの環境ではうまくいかない。その他の重要なスキルは、学び続けることへの渇望だ。パイロットなら、訓練と学習は一生続く。




Q. 他のパイロットに比べて給料は高い?


A. 航空会社のパイロットは今、大幅な昇給をしている。
以前は、中小航空会社の初任給はとても高いとは言えず、優秀な大企業パイロットの収入に追いつくまでに15年間汗を流さなければならなかった。最近はその逆で、民間航空会社はキャッチアップする必要が出てきている。最近、ガルフストリームのパイロットが年収35万ドルを稼ぐのを見かけるかもしれないが、デルタ航空では年収40万ドルを簡単に超えてしまう。




Q. エンジェルフライト(亡くなった人の遺体を運ぶフライト)の経験はある?


A. 自分の小型飛行機を所有していたときにあった。
とてもやりがいのある仕事だったし、敬意とサポートが受けられることをうれしく思う。
以前チャーター便を運航していた会社にいたとき、オーナーが元軍人だったので退役軍人の治療のためのフライトを何度か行った。
一番好きだったフライトは犬のレスキューで、30匹の犬を飛行機に乗せ、保護施設から800マイル離れた養子縁組センターまでフライトした。



Q. 飛行機で行くのに、一番面白い空港は?


A. アスペンのようなチャレンジングなところが好きだ。
セントマーティーンやフロリダ州セントピーターズバーグのアルバート・ホワイトなど、海沿いにある空港も楽しい。




Q. キャリアを始めたのは何歳ですか?始めるには遅すぎり年齢はあったりしますか?


A. 若くしてキャリアをスタートできたのは幸運だった。
28歳当時はパイロットとして最年少で、すでにプロとしてジェット機以外を操縦した経験もあった。

遅すぎる年齢があるかどうかは難しい。新しいことを学ぶ能力次第だ。
パイロット不足が叫ばれている今、70歳以上の高齢のパイロットを雇っている民間航空会社もある。航空会社の定年は65歳だが、高齢のパイロットを許可しないメキシコの国際線などを除けば操縦することはできる。




Q. 今は副操縦士と一緒に飛ぶとおっしゃいましたね。通常は同じパートナーと飛ぶのですか、それとも違う人とでしょうか?

待ち時間に副操縦士と一緒に過ごすことはありますか?

顧客から遊ぼうと誘われたことはありますか?


A. フライトチームの規模にもよるが、イエスだ。
みんな本当に仲が良く、採用プロセスの重要な部分(性格やチームの結束力の特徴)だ。
待ち時間は、自分のことをするのが好きな人もいれば、部屋にこもるのが好きな人もいる。
普段は夕食を共にするくらいだが、時には一緒に出かけることもある。

クライアントから遊びに誘われたことはある。
何年も前にラスベガスのナイトクラブで、ベルベットロープの向こう側がどんな感じなのか見てみたことがある。



Q. ジェット燃料の代わりにバッテリーで飛ぶ飛行機についてどうお考えですか?


A. 安全に飛ぶできるのなら、大賛成だ。
いつの日か、バッテリーの密度がそこまで上がると確信している。




Q. 空港での自家用機の駐機料金は?


A. ジャクソンホールやアスペンのような人気のある私営空港では、着陸料だけで1000ドル、ランプで一泊するごとに数百ドル、格納庫に入りたい場合はもっと高くなる。




Q. 怪しげな貨物を運んだことはありますか?


A. 以前、金の延べ棒を積んでフライトをしたことがある。
他にはチャーター便で亡くなった愛犬ジャーマンシェパードの遺骨を、子供サイズの棺に入れて持ち帰ったこともある。



Q. マレーシア航空MH-370便が消息を絶ったとき、何が起こったと考えていますか?


A. これは本当に不可解なことで、いつか学ぶべき答えが見つかることを願っている。
パイロットの自殺説は信じられない。全員が気絶したことで与圧が失われ、燃料切れで機体が墜落したと考えていたが、それではコース変更の説明がつかない。いろいろな説を聞いたが、どれもしっくりこない。