クレーンゲーム詐欺とパチンコ店のガセイベントは同類なのか?
その日は、クロロエリア長とゴトー店長とで事務所でくっちゃべっていた。
その会話の内容としては、以下のようなどうしようもなく低能な話である。
最近、入社した女性アルバイトのサヤカさんに、やけに顔が似ている女が出演しているAVを最近見たとゴトーが話をしており、クロロが「まさか本人なわきゃねえだろ」といった感じでバカにしていたのだが、実際にその動画を見てみると本人にクリソツだったので、度肝を抜かれたといった話である(で、その後、実際に本人に確認してみたらマジで出演していた為にその後解雇になった。※実話)。
そして、その間、事務所で掛かっていたテレビからはとある事件のニュースが聞こえてきたのだが、その内容とは以下の通りである。
クレーンゲーム詐欺
「旅行者狙わせた」補佐役を逮捕
クレーンゲーム機を景品が取れない設定にして客から現金をだまし取ったとしてゲームセンター運営会社の社長ら6人が詐欺容疑で逮捕された事件で、大阪府警は25日、社長の補佐役で従業員の指導をしていた佃(つくだ)明典容疑者(30)=大阪市中央区松屋町=を同容疑で新たに逮捕したと発表した。佃容疑者は「旅行者を狙わせた」と供述しており、府警は、被害申告しづらくトラブルになりにくい観光客が主に狙われたとみている。
逮捕容疑は今月上旬、社長の大平(おおだいら)剛史容疑者(33)らと共謀し、大阪市内の2店舗で、景品が取れない設定にしてあるゲーム機で遊ばせた女性客計4人から料金計約47万円をだまし取ったとしている。「間違いない」と容疑を認めているという。
保安課によると、従業員の指導マニュアルは大平容疑者の指示で佃容疑者が作ったとみられ、客にどこから来たかを尋ね、3回まで無料のサービス券を渡した上で、だます手順が記されていた。まず、無料で遊ばせたうえ、500円程度から挑戦させ、失敗を続ける客に「これまでの景品を全部あげる」などといって、景品を積み増し、料金を1万円までつり上げていく手法だったとみられる。
これまで把握された被害者は東北から九州の16都府県の36人だったが、23日の逮捕後、新たに80件以上の被害相談が寄せられた。最高で、府内の女性が165万円使っていたという。府警は23日の家宅捜索で5店舗から計約4400万円や12台のゲーム機を押収。被害はさらに広がる可能性があるとみて調べる。
府警は25日、両容疑者ら7人を送検した。
引用元:毎日新聞 2017年12月25日 11時37分
以上のニュースが耳に入ったクロロエリア長は、言葉を発した。
「とんでもねえ、悪人がいるもんだな」
「左様でございますなあ」
ゴトー店長が相づちを打つ。
「UFOキャッチャーの景品ってよう。
風営法で上限が800円までって決まってるらしいじゃん。
なんでこの店はニンテンドースイッチとか、数万円もする品を景品にしてるんだ?」
「おそらく、無許可で営業しているのでございましょう。
よく怪しいドライブインなどで、明らかに800円以上の景品が入っているのはその為でござりまする」
実は、ゴトーは元ゲーセンの店長だった。
それだけにゲーセンの内部事情に詳しかったのである。
ゴトーは続けて話をする。
「クレーンゲームはすべて機械の設定によって、管理されておりまする。
UFOキャッチャーであれば、アームの強さが左右で50段階ほど設定でき、ツメの角度や大きさも変更することが可能な上、アームの長さなどでも難易度が変わってきまする」
「なるほどね。
スロットの設定は6段階しかないけど、組み合わせ次第で無限の設定方法があるんだね」
そう。
パチンコやスロットの設定以上に、景品ゲームの設定は実に多種多様なのである。
ちなみに、穴に棒を通せば景品がもらえる、このファンファンタジアという機械は、何回目に穴を通すことができるのか設定することができる。
つまり、100回と設定したら、1~99回はどれだけピンポイントでボタンストップしても、自動的に棒が穴からズレてしまい最初から通らないようになっているわけである。
で、100回目以降にピンポイントでのボタンストップに成功した時に、初めて棒が穴に通るといった仕組みになっているというわけである。
そして、ハサミを移動させて上手く糸が切れれば景品ゲットとなる「バーバーカット」という機械においては、ハサミを切る力を調整できるようで、機械の設定次第ではまったく切れないような調整も可能であるらしい。
その為、犯人はこの機械を使って詐欺行為を働いた模様。
「それにしても、景品を積み増して料金を1万円まで釣り上げるとは、凄まじい詐欺でござりまするな。
1回500円という景品ゲームもありえませぬ」
ゴトーは呆れたように話す。
たしかに、通常だと1プレイ100~200円の景品ゲームを10000円にまで釣り上げるとは、レートが50~100倍である。
そして、それっていうのはスロットでいえば1メダル1000円~2000円であり、
1ゲームあたり6000円、ジャグラーでビッグが当たれば一撃65万円ゲットとなる。
1プレイ1万円なんてクレーンゲームは完全にヤバいだろ。
やってることは闇スロと変わらない。
「まあ、どこの業界でも悪い奴がいるからな。
絶対に取れない景品をもう少しで取れるなんて嘘をつくのはマズイだろ。こんなことやっていては商売は長続きしない。
パチンコ店もそれと一緒だ。だからコンプライアンスを遵守した営業を心掛けるんだぞ。わかったな!」
「はっ!わかり申した」
以上のような流れで、この件に関する話は終了した。
そして、クロロエリア長は年始の営業の話へと話題を切り替えた。
年始の営業に関して
「のうゴト―よ。
年始の営業はどう考えておる?」
このクロロエリア長の質問に対して、ゴトーは流暢に答える。
「はっ!1月1日から1月8日までは完全正月営業でぶっこ抜き、1月9日から徐々に緩めていこうと思いまする」
「なるほどね。
となると、1月6日(土)から1月8日(祝)までの3連休はどうする?
その辺でも雑誌イベントを当て込んでくる法人もあると思うし、何か動かないと3連休とはいえ集客は怪しいぞ」
以上の、クロロエリア長の質問に対して、ゴトーは以下のように切り替えした。
「はっ!1月6日(土)から1月8日(祝)までの3日間は、屋台イベントで賑やかそうと思っておりまする」
クロロ「屋台イベント?何を作るんだ」
ゴトー「はっ!焼きそばでござりまする」
「てめえ!バカ野郎!!」
ゴトー「なっ!?どうされましたクロロエリア長?」
クロロ「屋台で焼きそばなんざ作っても集客に繋がるわきゃねえだろ!
もっと、営業に繋がることを考えろ!バカが!!」
ゴトー「はっ!申し訳ありませね!!」
以上のような形で、ゴトーはクロロエリア長にドヤされたわけであるが、ゴトーとしてもどうにも納得することができなかったので、クロロエリア長に反論することにした。
ゴトー「お言葉ですが、クロロエリア長。
3連休中のアクションとして、屋台焼きそばがNGなのであれば、他に何をしたらよいのでござりましょうか?
反対したからには、代替案を述べてほしいでござりまする」
ゴトーの言うことも最もである。
他人のアイデアを否定するだけでは、例え上司といえども納得することはできない。
やはり、否定したからには代替案を出すべきであろう。
すると、クロロは次のように口を開いた。
「いや。屋台でいい。
でも、焼きそばはダメだ。
やるならフランクフルトにしろ」
なぜ、フランクフルトであればOKなのだろうか?
続けてクロロエリア長は話す。
「いいか。
1月6日(土)~1月8日(祝)までの3日間は“炎の店長屋台”というタイトルでフランクフルトを販売するんだ。
ポスターは俺がデザインしてやる」
そして、その後作成したポスターは以下のようなものだった。
これを見たゴトーが、一息ついたあとに言葉を発する。
ゴトー「あのう。クロロエリア長・・」
クロロ「どうした?」
ゴトー「これでは、完全にこの3日間は毎日66台の設定56が20スロコーナーに存在することを示唆しておりまする。利益確保に重要なこの3日間に設定を入れるのでござりまするか?」
クロロ「バカな。んなことするわきゃねえだろ」
クロロは少し間を置いて続けて話す。
クロロ「いいか。うちの20スロは全部で240台だから上手く中間設定を使って誤魔化すんだ。
まずは、ハーデスとまどマギ2をオール3で営業しろ。
ハーデスでは設定3からGGの初期ステージがハーデスに選択される確率が低設定の3倍にアップされる。だから、ハーデスステージが何度か確認されれば彼奴らは、適当に全56だと勘違いしてくれるだろう。
そして、まどマギ2も同様だ。
まどマギ2の設定3に関しては、弱チェからのCZ当選率が設定1~2の6倍に膨れ上がる。
従って、弱チェでCZに当選すれば彼奴らは勝手に56だと勘違いしてくれるだろうよ」
▽GG中のハーデスステージ(アナザーゴッドハーデス)
▽CZ魔女の結界(まどか☆マギカ2)
ゴトー「流石はクロロエリア長。名案でございますなあ・・」
ゴトーは目を丸くして言葉を発した。
その後、クロロは話を続ける。
クロロ「あとあれだ、バジリスク絆はオール2にしておけ。
あの台で奇数挙動を見せるのは流石にイメージ悪いから、オールピンだけはやめておけよ。
絆キッズもブーブーうるせえだろうしな」
ゴトー「はっ!分かり申した」
クロロ「ただあれだな、流石に56を66台となるともうちょっと色を付ける必要があるな・・。
よし、バラエティコーナーに1/3で4を入れるんだ」
ゴトー「バラエティコーナーでござりますか?」
クロロ「そうだ。
ぶっちゃけ、ハーデスとまどマギ2をオール3、バジリスク絆をオール2で営業した程度では、流石に66台の56はガセだったと思ってくるパチプーが存在する可能性があるだろ。だからそういう時の為にバラエティだけ1/3で高設定を入れておくわけだ」
ゴトー「なるほど」
クロロ「特にガセイベントを開催する時にはこれはかなり有効な手段なんだよ。
中途半端に凱旋や番長3に設定を入れても、所詮ガセと思われるか、いたずらに利益を放出してしまうだけだ。
しかし、そのような状況においても、普段設定を入れることがないバラエティに設定が入っていると、印象が残りやすいのである程度ユーザーは納得してくれるというわけなんだよ。
例えば、バラのエウレカAOやゴッドイーター2に明らかに高設定という台が存在したら、やっぱ印象残るだろ」
ゴトー「なるほど!名案でございますなあ!!」
クロロ「これはガチで設定を入れたくないときに、ユーザーからの視点をズラすという戦略だ。
苦し紛れの手段だが、けっこう有効なんだぜ」
以上のようなやり取りを終えたあとに、クロロエリア長とゴトーは1月6日~8日の営業に向けての準備を進めた。
ホールスタッフには、ジェットカウンターにて「6~8日の3日間は毎日設定56が66台以上入ります!」といった情報を帰る客に伝え、地域の爆サイなどの掲示板においても、一般ユーザーを装ってその情報を拡散しまくったのである。
むろん、実際には1月6日~8日の3日間は設定56が66台はおろか、1台たりとも存在しなかったのである。
そして、それから数日後、とある営業会議の帰りに車内にてクロロエリア長はゴトーに言葉を発した。
クロロ「ゴトーよ」
ゴトー「はっ!何でございましょう?クロロエリア長」
クロロ「去年、クレーンゲーム詐欺で捕まった、経営者はほんとどうしようもねえ奴だよな。
絶対に景品が取れないのに「今やめたら損ですよ」とか言って、景品を積み増して煽ることによって、プレイを促進して金をむしり取るとは・・。
経営者としてあるまじき行為だと思うし、俺は絶対に許せないね」
ゴトー「はっ!誠おっしゃる通りでございまする」