落ちているゴミを率先して拾う人は偉いのか? 前編
寒い冬の時期だった。
朝早く出勤した私は、立体駐車場に車を止め店舗に向かった。
当時の私は主任だったのだが、誰よりも早く出勤していた。
店鍵を持たされており、最終出入り口で警備を解除すると、ホール内を通過して速やかに事務所へと入った。
事務所に入った私は、まずは事務所の暖房をONにした。
その後、ホールコンピューター・監視モニター・ハードディスク・配電盤・事務所のPCなどを手際よく立ち上げていった。
以上の作業を終えるのに、なんやかんやで大体10分。
その後、前日の遅番の引き継ぎノートの確認を終えると、個人的に抱えていた仕事をここぞとばかりに進めた。
私は通常の出勤時間よりもいつも1時間も早く出勤している。
この習慣に関しては、今も昔も変わらない。
私は人一倍要領が悪いので、常に余裕をもって出勤したいと思う性分だったのである。
平社員や班長の時代は店鍵を持っていなかったのだが、店鍵を持っている主任や店長が店舗に到着する前から、駐車場に待機して待つことがほとんどだった。
そして、主任以上になってからは、自分で店鍵を持つことができたので、他の社員よりも1時間ほど早く出勤して個人的に抱えている仕事を前倒しで進めることが多かった。
まあ、通常のできる社員であれば、他の社員と同じ時間に出勤しても、問題なく仕事がこなせると思うのだが、前述したように私は要領が悪かったので、誰よりも早く出勤して誰よりも遅く退社する。万事この調子だった。
また、どんな状況であろうと早めに出勤して仕事に備えることに入念だった。
前述の引き継ぎを見た後には、朝礼でみんなに話すべきことを考えたり、その日やるべきことを整理してどういった段取りで進めようかなど、あらゆるシミュレーションをして仕事に望んでいたのである。
まあ、逆にいうと融通がきかない人間だったので、早めに出勤しないと落ち着かない性分だった。
例えば、時間ギリギリに出勤することなどありえなかった。
慌ただしいまま仕事をスタートすることが、本当に大嫌いだったので常に余裕を持って出勤するタイプの人間だったのである。
朝のミーティングにて
「クロロ主任お早うございます」
「おうクロロ。おはよう」
「おはようございまあす!クロロ主任」
副店長から班長、そして平社員まで、
その後、続々と社員が出勤してきたのだが、8時40分の時間になると社員ミーティングを開始することとなった。
通常、パチ屋ではアルバイトを含めた全体朝礼が営業開始時間の1時間前に存在するのだが、その全体朝礼の前に社員だけのミーティングを行っている店舗がほとんどであると思う。
その理由としては、アルバイトをどう使うかということも含めて、落とし込みレベルが社員以上といった伝達事項も多いので、アルバイトも含む全体朝礼の前に社員ミーティングを行っていたというわけなのである。
全体朝礼の20分前に実施した社員ミーティングでは、主任である私と副店長。
そして、班長2人と平社員4人の計8人だった。
(大型店なので人数はかなり多かった)
その後、1日の業務の流れやその他の伝達事項などを、みんなに伝達したわけなのだが、社員ミーティングが始まってから10分後、もうミーティングを終えようかというタイミングで店長が出勤してきたのである。
ちなみに、店長は基本的に自由人であるので、早番・中番・遅番どれで出勤しようが自由だった。
特にその店舗では社員の人数が揃っていたので、店長自らがホールに出る必要はなく、好きな時に出勤して好きな時に帰るといったライフスタイルだったのである。
だから、社員ミーティングに遅れてきた店長にツッコミを入れる社員は存在しなかったし、店長は早番出勤の際にも時間ギリギリに来ることが多いので社員ミーティングの蚊帳の外だったわけなのである。
ただ、ミーティングが終了するタイミングで店長が来たので、ミーティングの進行役であった私は店長に聞いてみた。
「お早うございます店長。
ちょうど社員ミーティングが終わるところなのですが、店長から何かありますでしょうか?」
すると、店長は若干イラついた表情で言葉を発した。
「みんなに質問なんだけどさ。
立体駐車場から最終出入り口までの間に、駐車場にマックやコンビニ弁当のゴミとか沢山落ちてたよね。
それに気づいた人いる?」
以上の質問に対して、一同は手を上げた。
店長は続けて話す。
「じゃあ、そのゴミを拾った人は?」
以上の質問に対して、手を上げた社員はいなかった。
「そりゃそうだよな!
俺が出勤した時に落ちていたわけだから、ゴミを拾った人が誰一人いなかったわけだよ。
出勤時に、駐車場にあれだけゴミが落ちていて誰も拾わないなんて一体どういうことなんだ!
自分たちの店舗を誰が守っていくんだって!視界に入ったゴミさえも拾えないようだとどうしようもねえだろ!」
店長がイラついていた理由が理解できた。
どうりでいつもと雰囲気が違うと思った。
遅れてきた店長は、立体駐車場から最終出入り口までの間に落ちていたゴミを一通り拾ってから事務所に入ったわけなのである。
人は怒りを抱えている時は何となく雰囲気に現れるものだ。
私は、未だにあの時の店長の雰囲気が脳裏に焼き付いている。
社員一同は、店長の指摘に反省することとなった。
「すみませんでした」という言葉を一同が発した後に、その後の全体朝礼へと移行したわけなのである。
続きは明日書こうと思うのだが、
今回の店長の発言に対して、あなたの見解をお聞かせいただきたい。