【投稿日】 2023年6月13日 【最終更新日】 2023年6月25日

債権譲渡とは、文字通り「自分が管理している債権を第三者に譲渡すること」です。

債権は目に見えない財産のため、権利が誰にあるのか可視化されにくくなっています。

債務者から見るとその権利が誰にあるのかが明確ではありません。

そのままでは、権利者ではない人に権利を譲ってしまう可能性も生まれがちです。

そこで、民法では債権譲渡があった際の「対抗要件」について規定しています。

対抗要件とは、「自身が権利者であると主張するための条件」です。

今回は、第三者に対して行う「第三者対抗要件」について解説していきます。

第三者対抗要件とは?

「第三者対抗要件」とは、権利を譲渡した人・譲渡された人の間で有効な権利関係、法律関係を、第三者に対して主張するために必要な要件のことを指します。

「第三者対抗要件」は、権利・法律関係を当事者間だけで有効とさせる「成立要件」と対比されます。

「第三者対抗要件」は、あくまで第三者に対して対抗するための要件です。

第三者対抗要件の具体例は以下です。

  • 不動産物権変動における登記(民177条)
  • 動産物権変動の引渡し(民178条)
  • 指名債権譲渡の確定日付ある通知・承諾(民467条)あるいは債権譲渡登記(債権譲渡特例法2条)

第三者への対抗要件が問題となるのは、「二重譲渡」が発生したときです。

二重譲渡とは、権利が複数の人に譲渡されてしまうことを指し、「譲渡された人のうちの誰が正当な権利者であるのか」を明確にすることが大切になります。

もし仮に、譲渡先が2つ以上の複数であっても「二重譲渡」という表現になります。

第三者対抗要件は3つずつ

第三者対抗要件は、不動産と動産ごとに内容が異なります。

不動産の場合は以下の通りです。

  • 通知
  • 承諾
  • 債権譲渡登記

動産の場合は以下の通りです。

  • 通知
  • 承諾
  • 引き渡し

それぞれの資産においていずれかの要件があれば、権利を譲渡された人は第三者に対して権利者である主張を行うことが出来ます。

債務者への通知

譲渡人が債務者へ債権譲渡の通知を行うことで「対抗要件」を得られるようになります。

この通知自体は必ず譲渡人が行う必要があり、譲受人が通知を行っても意味がありません。

一般的には、譲渡人が内容証明郵便を使って債務者へ通知を行うことが多いです。

口頭での通知でも問題はありませんが、債権の内容や金額、譲渡の日付などを明確にする必要があるため、書面での通知が望ましいとされています。

なお、債務者の保証人へ通知を行う必要はありません。

債務者本人へ通知を行えば、連帯保証人に対しても債権譲渡の効力が生まれます。

債務者からの承諾

承諾とは、債務者本人から債権譲渡の承諾を得ることです。

承諾は、譲渡人と譲受人どちらに対して行われても同じ効力を持ちます。

こちらの承諾も、口頭ではなく書面で承諾書などを作成することをおすすめします。

債権譲渡登記(不動産の場合)

不動産の場合、「債権譲渡登記」という制度を使うことができます。

債権譲渡登記を利用すれば、多数の債権譲渡を一度に登記して債務者以外の第三者に対して対抗要件を有することが可能です。

債権譲渡登記については、特例法により以下のように細かく定められています。

債権譲渡登記

第二条 法人が債権(指名債権であって金銭の支払を目的とするものに限る。以下同じ。)を譲渡した場合において、当該債権の譲渡につき債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされたときは、当該債権の債務者以外の第三者については、民法第四百六十七条の規定による確定日付のある証書による通知があったものとみなす。この場合においては、当該登記の日付をもって確定日付とする。

2 前項に規定する登記(以下「債権譲渡登記」という。)がされた場合において、当該債権の譲渡及びその譲渡につき債権譲渡登記がされたことについて、譲渡人若しくは譲受人が当該債権の債務者に第八条第二項に規定する登記事項証明書を交付して通知をし、又は当該債務者が承諾をしたときは、当該債務者についても、前項と同様とする。

3 前項の場合においては、民法第四百六十八条第二項の規定は、前項に規定する通知がされたときに限り適用する。この場合においては、当該債権の債務者は、同項に規定する通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由を譲受人に対抗することができる。

4 前三項の規定は、第七条第一項第二号に掲げる事由に基づいてされた債権譲渡登記の抹消の登記について準用する。この場合において、前項中「譲渡人」とあるのは「譲受人」と、「譲受人」とあるのは「譲渡人」と読み替えるものとする。

債権譲渡登記完了後に、譲渡人または債務者へ債権の譲渡と登記を行ったことについて登記事項証明書を交付して通知を行うか、債務者の承諾を得るかすれば、債務者に対する対抗要件を得ることができます。

ただし、債権譲渡登記制度を利用できるのは、譲渡人が法人である場合のみです。

申請自体は東京法務局にて行う必要があります。

引き渡し(動産の場合)

動産の場合、動産に関する物権の譲渡の対抗要件として「引き渡し」が必要になります。

動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。

上記の通り、第三者対抗を行うには引き渡しが必要になります。

引き渡しとして認められる方法として、現実の引渡(民法182条第1項)、簡易の引渡(民法182条第2項)、占有改定(民法183条)、指図による占有移転(民法184条)が挙げられます。

第三者も対抗要件を備えていた場合は?

第三者も対抗要件を備えている場合もあります。

その時に優先される対抗要件とは、「確定日付の有無」「日付の前後」によって決まります。

例えば、AとBという対抗要件が存在したとして、「Aは確定日付有の通知、Bは確定日付無の通知の場合は、Aが優先」となります。別のパターンでは、「A、Bどちらも確定日付有の通知で、Bの方が早い日付の場合、Bが優先」となります。

債務者は優先順位が高い方へ弁済を行えば問題ありません。

しかし優先順位が高いかどうかがわからない場合には下手に弁済を行うのではなく、弁護士に相談して判断を仰ぐべきです。

誤って無権利者へ弁済をしてしまうと、別のトラブルになりかねません。

「登記がなくても対抗ができる第三者」とは?

民法177条に「登記をしなければ、第三者に対抗することができない」とあります。

しかしながら、ある特定の第三者側に対しては、登記が備わっていない権利変動の効果を認めさせることは可能です。

これらの第三者に対しては、権利を主張したいと思った場合、登記を備えていなくても対抗できます。

以下からは、登記がなくても対抗できる第三者の具体例について解説します。

具体例1:無権利の名義人、及びその譲受人・転得者

無権利の名義人、及びその譲受人、転得者は「登記の欠缺を主張する正統の利益を有する第三者」にはなりません。

具体的には以下が挙げられます。

  • 登記簿上所有者として表示されているだけの架空権利者
  • 目的物などのの仮装譲受人
  • 消滅した債権を被担保債権とする抵当権者
  • 相続を放棄した者からの相続を譲受人

具体例2:不法行為者・不法占拠者

二重譲渡が行われ、未登記建物を第三者の不法行為により毀損した場合、不法行為者に対して損害賠償請求を行うことができます。

具体例3:背信的悪意者

背信的悪意者とは、「故意に人を陥れたり騙したりする者」のことを指します。

民法第177条の条文には「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」という記載があるのです。

背信的悪意者の具体的な例は、以下です。

  • 買い手に高値で売りつけた者
  • 買い手に害意をもって、売主を嗾けた者
  • 詐欺・強迫により登記申請行為を妨げた者

第三者対抗要件は主に3つ!

第三者対抗要件は、不動産か動産かによってその内容が少し異なります。

不動産の場合、「通知」「承諾」「債権譲渡登記」が、動産の場合、「通知」「承諾」「引き渡し」が対抗要件となります。

しかし不動産において、登記がなくても対抗できる第三者も存在するため、対抗要件について検討する際は「相手がどのような立場にいるのかも調べる必要がある」と認識しておきましょう。

対抗要件手続きなどで分からないことがある場合には、弁護士に相談し、要件をしっかり抑えるべきです。

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