先日、政府は携帯電話契約の解約に伴う違約金を、一定期間不要とする「初期契約解除ルール」を実現する、電気通信事業法の改正案を閣議決定しました。複雑化する通信プランへの理解が不十分なまま契約させられたことによる、消費者からのトラブルや相談が相次いでおり、「初期契約解除ルール」により無償解約可能な期間を設けることで、消費者の保護に繋げます。
改正案は総務省主導で提出されたもので、改正草案をまとめる際、2年契約の更新制度見直しや端末の返品も議論されていましたが、携帯各社からの強い反対があり、これらは結局含まれませんでした。
そのため、今回の消費者保護策で実現されるのは、あくまで「通信契約の無償解約」のみ。端末は返品できず、代金の残債は支払い続けることになります。
最近、携帯キャリア各社は、新たな「違約金」を新設しました。これがSoftBankの「一括購入割引」であり、NTT docomoの「端末購入サポート」です。端末代金を安くする代わりに、8ヶ月以内や1年以内の解約・契約変更・機種変更に対して、約3万円~5万円の違約金を別途支払わせるというもの。
これらの違約金は、基本使用料の2年自動更新契約の違約金9500円(税別)とは別個のもの。あくまで端末代金を安くしたことによる代償として課されるものです。つまり「初期契約解除ルール」の対象外。そのため端末や通信契約に問題があるなど、すぐに解約したケースでは、9500円の解除料金は免除されるものの、その他の約3万円~5万円の違約金は請求されることが考えられます。
どうして携帯各社は、政府の消費者保護策の抜け穴を突いて、違約金を設けてまで、安売りを続けるのでしょうか。それは日本の携帯電話市場が、携帯各社の主導で構築されてきたからです。SIMロック付きの端末代金をタダ同然でばらまき、その端末で自社の通信回線・通信サービスを使わせることで、長年、各社は莫大な利益を上げてきました。
ところが5月以降、SIMロック解除が義務化されます。キャリアの販売網で販売された端末が、自社以外でも使えるよう、SIMロックを解除しなければならなくなります。つまり長年の商慣習の大前提が崩れかねない状況です。携帯端末を、あくまで通信料金・サービスで儲けるための付属物としか見做していない携帯キャリアは、消費者保護ルールの穴を突いた違約金を設けてでも、安売りを続けたい魂胆があるのでしょう。
総務省は端末代金と通信料金を完全に分離せよと言ってきましたし、その都度、携帯各社は販売の仕組みに変更を加えてきましたが、それが紆余曲折、こんなに惨状になるとは、一体誰が予想できたでしょうか。今後、auも追随して違約金を新設するのでしょうか。SIMロック解除義務化まであと1ヶ月。各社の動向を注視していきたいところです。