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FiiO M15S レビュー。据置級の圧倒的駆動力と超高音質、最強のAndroid搭載携帯DAP

 Androidデジタルオーディオプレーヤー「FiiO M15S」を購入したのでレビューします。

 本機は、DACチップに据置用のESS Technology ES9038 Proを搭載した化け物みたいなDAPです。携帯音楽プレイヤーのくせにスピーカーさえも鳴らせる余力があります。

 ちなみにこのチップを2基も搭載したFiiO M17というさらに意味の分からない化け物プレイヤーも存在するのですが、価格は26万9500円、厚さ28mmで重量610gと重鈍で、携帯できなさそうなので手が出ませんでした。

 しかしFiiO M15Sはチップ数を1基にした「上から二番目のモデル」で、厚みを18.9mm、重量を345gに抑え携帯性も向上、価格も15万2900円とお手頃になっています。ハイエンドDAPには、さらに高額な高級製品もあるなか、安い部類です。

高さ140×幅80×厚み18.9mm

 ズボンによってはポケットにも入ります。各ボタンや充電、出力端子への可達性もしっかり考慮された上質な革ケースも付属しており、筆者は装着状態で常用しています。

 もちろん3.5mmアンバランス接続、2.5mm/4.4mmバランス接続での出力に対応。

 強力なDACチップを搭載するのみならず、I/V部、ローパスフィルタ部、ゲイン調整部、ヘッドホンアンプ部の多段構成の設計で、回路上には高精度・低雑音のフィルム抵抗を採用し、高いチャンネルバランスと低歪み性を実現。さらにパナソニック製の低損失金属化フィルムコンデンサをローパスフィルターとして採用することで高調波や位相歪みを抑制しているほか、デジタルとアナログ回路間の電磁波干渉も銅ニッケル合金シールドで抑制。音質に徹底的にこだわった仕様となっています。

 肝心の音質は、FiiOらしくやや寒色寄りで、ノイズなく高解像度。クリアな高域、ふくよかな中域、深い低域で、あらゆる音を元気に、緻密に鳴らしわけるサウンドに好感。

 OSはAndroid 10。ディスプレイは18:9比率の5.5型HD(1440×720)液晶。このため標準のプレイヤーによるローカル音源の再生だけではなく、SpotifyやApple Music、Amazon Music/Audibleなど現代的なコンテンツを豊富に利用可能。YouTubeのMVも楽しめます。

 ストレージ容量は64GBでmicroSDカード対応。6200mAhの大容量バッテリーを搭載したことで、外出先でもたっぷり音楽を楽しめます。

 処理性能はSoCはQualcomm Snapdragon 660で実行メモリ4GBなど、スマホとしては化石レベルですが、Android搭載DAPとしてはこれでもマシな部類です。

 音量はツマミで120段階から調節可能。時計回りが音量大、反時計回りが音量小。ほどよい抵抗感もあり、個人的には快適です。ケース装着時には上部にカバーをつけられるため、気休め程度の誤動作防止効果も期待できます。

 左側面ボタンで次曲送りや再生停止も可能。

 最大1200mWのバランス出力に強化する「第二世代DC給電モード」に対応、QC 3.0 / USB PD 2.0で充電することで、強力なゲイン「Super High」や「デスクトップモード」が解禁。

 家で机上に置いて据え置きとしても活用可能。なのでもちろんスピーカーを接続してもOKというポテンシャルの高さが魅力です。

 デスクトップモード使用時はDAP内蔵電池ではなく直接供給電源で動作するため、電池を労り長寿命化する効果もあり。家でも電池劣化を恐れずガンガン使い倒せるというわけ。

 さらに充電器こそ付属しませんが、冷却ファン搭載スタンド「DK-3S」が付属。普通にスタンドとしても利用できるだけでなく、長時間の発熱対策も可能。

 ただでさえ音質の良い本機ですが、DC給電モードではさらに次元の高い音質を楽しめます。より力強く音圧が増し、音像もくっきり、高音域もクリアに、より良い音を楽しめます。

 音の確認用になりがちな分析的で面白みに欠けるモニター系イヤホン・ヘッドフォンの恩恵のひとつが、音源や再生機器の真価を冷徹に映し出す点。ソニーのMDR-EX800STなどを用いても、高音質音源と本機ならばあっと驚く音を鳴らしてくれるのは妙味です。

 メーカー自身も「チャチな機器で使うな」と説明するなど、鳴らしにくいことに定評のある平面磁界駆動型イヤホン「TinHiFi P2Plus Commemorative Edition」。上流機器がショボいと低域が弱々しくなるのですが、本機ならば、全域でしっかりと明瞭で高解像度、それでいてキレと厚みのあるサウンドを楽しめます。女性ボーカルの曲も魅入らせてくれますが、高音の刺さる感じはなく、聴きやすさもあります。特にビシバシと力強く弾ける低域が素晴らしく、ロックもいけますし、ジャズを鳴らせば厚みがあって芳醇。音場や空間的広がりもイヤホンとしては良好で、オーケストラもしっかり演奏してくれます。

 インピーダンス300Ω、感度105dB/mwのSIVGA SV023や、鳴らしにくいことに定評のあるゼンハイザーHD 800S。古いDAPやスティックDACなど非力な機器では十分に鳴らしきれない、音量が取れないといったことが起きますが、本機ではそういったことはなく、圧倒的駆動力にて余裕で鳴らしきるのは感服です。あらゆるイヤホン・ヘッドフォンの真価を引き出せるのがFiiO M15Sの魅力と言えるでしょう。

 Bluetoothチップ「QCC5124」を搭載、Bluetooth 5.0に対応しており、LDACやaptX HDといった高品位コーデックにも対応します。ただ本機の高品位な回路設計やES9038 Proチップの実力は、電気的に接続しない無線イヤホン/ヘッドフォン機器には反映されることはありません。

 では全く無意味かというとそうではなく、Bluetooth受信(レシーバー)機能の存在があります。あくまでストリーミング音楽再生等の操作はスマホで行い、音楽再生中にスマホから音を無線で本機に飛ばし、それを本機と有線イヤホン/ヘッドフォンで聴くというもの。ここの無線伝送を高品位なコーデックで行うことで、本機の高音質を活かすことが可能です。

 なお、Bluetooth受信機能やUSB DAC機能を包括したメニュー系統画面は、右側面の最下部のボタンから迅速に呼び出せます。

 このメニュー内には、「Roon Ready」ネットワークプレイヤーモードも搭載。ちなみにDC給電モードとは別に「Pure Music」なるモードもあるのですが、こちらは通常利用時との音質的な差異はあまり感じられませんでした。

 Android搭載DAPにしては高性能な部類のSnapdragon 660を搭載したことで、一見、音楽再生にまつわる動作上のほとんどの問題が無くなったように思えます。

 しかし、Apple Music等での曲間の交差転換(クロスフェード:曲終わりと次曲始まりを重ね合わせて演奏し、円滑に切り替える)演出が途切れる事象がたまにあるのが筆者の不満です。

 やはりDAPであれど性能が高いに越したことはありませんし、古いSoCはOSアップデートの制約にもなります。もちろん出る数量が数万台にもならないようなニッチな機器では高度なSoCの選定が難しい事情も理解はしていますが、筆者としては、今後の機種ではより良いSoCを搭載することを望みます。

 前述の通り、FiiO M17といった上位モデルと比べても、相対的に小さく軽いのは素晴らしいです。ポケットにギリギリ入るかどうかのサイズとしては最強のDAPだと思います。

 ただやはり絶対的な大きさと重量はあります。あくまで入門機のDAPを試してから、物足りなくなってきた場合やより高みを目指したい場合に、ステップアップとして検討すべき機種だとは思います。

 価格面では15万円。決して安い買い物ではなく、ハイエンドスマホを買う程度の値段。しかし筆者はオーディオの世界がより広がって大いに満足しています。

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