目次

  1. 1. 空き家を無償譲渡する方法
    1. 1-1. 周辺地権者や知人に譲る
    2. 1-2. 不動産会社に譲る
    3. 1-3. 空き家バンクを利用する
  2. 2. 空き家を無償譲渡したときの税金
    1. 2-1. 個人から個人への無償譲渡の場合
    2. 2-2. 個人から法人への無償譲渡
    3. 2-3. 法人から個人への無償譲渡
    4. 2-4. 法人から法人への無償譲渡
  3. 3. 空き家を贈与する場合の注意点
    1. 3-1. 贈与契約は書面によらないと解除されることがある
    2. 3-2. 負担付贈与の場合は契約不適合責任を負う
  4. 4. まとめ

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空き家を無償譲渡する方法について解説します。

1つ目は、周辺地権者や知人に譲るという方法です。
周辺でレストランや診療所を行っている事業者は、来客や従業員用の駐車場用地を探しているケースがあるため、無償なら譲り受けてくれる可能性があります。
また、隣地所有者も自分の土地が広がるため無償なら取引してくれるケースがあります。

2つ目としては、不動産会社に譲るという方法です。
更地価格が取り壊し費用よりも上回っているようなケースでは、不動産会社が古家付で購入した後、取り壊して更地して転売することができます。

更地価格と取り壊し費用のバランスにもよりますが、無償なら不動産会社が譲り受けてくれる可能性は十分にあります。

3つ目としては、空き家バンクを利用するという方法です。
空き家バンクとは、地方自治体が行っている空き家の売却や賃貸の情報サイトになります。

空き家バンクは不動産会社が取り扱ってくれないような物件でも売り出すことが可能です。
あえて古い空き家を物色している購入検討者が情報を見にくるため、無償であれば取引の可能性は十分に出てきます。

この章では、空き家を無償譲渡したときの税金について解説します。

空き家を無償譲渡する場合、売主にも税金が発生する場合がある点が注意点です。
取引当事者の組み合わせによってどのような税金が発生するかが異なります。
取引当事者と税金の組み合わせは以下の通りです。

個人から個人への無償譲渡は「贈与」に該当します。
贈与した場合、売主(贈与者)には税金は発生しません。
それに対して、買主(受贈者)には贈与税が課されます。

贈与の場合に売主に税金が課されないのは、買主に重い贈与税が課せられているのに売主にまで所得税をかけると二重課税になってしまうという考え方があるからです。
買主(受贈者)に生じる贈与税に関しては、相続税評価額を元に計算されます。

個人から法人へ無償譲渡した場合、個人には所得税、法人には法人税がかかります。
個人は不動産を売却して譲渡所得が発生すると税金が課税されます。譲渡所得とは、売却益のことです。

無償譲渡すると、本来売主に課されるはずの税金が課されなくなってしまうため、無償で譲り渡した人に対しては時価で売却したものとして所得税が課税されます。
時価で売ったものとみなして計算される売却益のことを「みなし譲渡所得」と呼びます。

一方で、法人は価値のあるものを無償で譲り受けたため、受贈益が発生します。
そのため、買主側である法人には受贈益に対し法人税が課せられます。

売主側の譲渡所得は売却益のことですが、以下の式で計算されます。

・譲渡所得=譲渡価額-取得費―譲渡費用

譲渡価額とは売却額ですが、無償譲渡の場合、この譲渡価額が時価に該当します。
取得費は、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額です。
譲渡費用は、印紙税や建物取り壊し費用等になります。

みなし譲渡所得も売却益であることから、時価が取得費を下回っていれば無償譲渡しても税金は発生しないということです。

時価は不動産鑑定士による鑑定評価を取得しておくと間違いありません。
無償譲渡せざるを得ないような不動産は、適正な時価も限りなくゼロ円に近いことがあります。

例えば、不動産鑑定では、取り壊すことが最も有効な利用方法であると判断された場合、「取壊し最有効」という前提で鑑定評価が行われます。

取り壊し費用が更地価格よりも高いようなケースでは、鑑定評価額もほぼゼロ円とされることも多いです。
税務署に対する証拠書類としては、鑑定評価書を用意しておくことが最も安全となります。

法人から個人への無償譲渡した場合、法人は法人税、個人には所得税がかかります。
売主の法人は時価で譲渡したものとして、売却益が発生すれば法人税がかかることになります。

売却益が発生するという状態は、みなし時価が帳簿上の簿価よりも高いケースです。
みなし時価が帳簿上の簿価よりも低ければ、売却損が発生することになり税金は生じないことになります。

また、法人税は1年間の事業の利益に対して課税されるため、たとえ不動産売却で売却益があったとしても、全体で赤字であれば法人税は課されないことになります。

一方で、買主には本来価値のあるものを無償で譲り受けたとして一時所得が発生し、所得税が課税されます。
一時所得とは、個人の所得の種類の一つです。

法人同士の無償譲渡の場合は、売主にも買主にも法人税がかかります。
売主は時価で売却したものとみなされ、買主は時価相当額のものを譲り受けたとされるため、双方とも利益が生じれば法人税が課されることになります。

この章では空き家を個人間で贈与する場合の注意点について解説します。

個人間の無償譲渡でも、贈与契約は書面によらないと解除されることがあるという点が注意点です。

民法では贈与に関し以下のような規定を定めています。

【民法第550条】(書面によらない贈与の解除)
書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。

「書面によらない契約」または「贈与の履行が終わっていない」場合には、民法の規定によって契約が解除されるケースがあります。

特に他人との個人間で無償譲渡する場合には、書面にて贈与契約をしておくことがトラブルを避けるためにも安全です。

贈与の場合でも、負担付贈与の場合は契約不適合責任を負う点が注意点です。

負担付贈与とは、受贈者に一定の債務を負担させることを条件にした財産の贈与のことです。
例えば、空き家を贈与する代わりに残りの住宅ローンを完済して欲しい等が負担付贈与に該当します。

契約不適合責任とは、契約の内容に適合しない場合の売主の責任のことです。
売主は契約内容とは異なるものを売ったときに、買主から契約解除や損害賠償等を追及される責任になります。

通常の贈与では、贈与の目的物に瑕疵(かし:キズのこと)があったとしても、贈与者はこれを知りながら受贈者に告げなかった場合を除き、売主は契約不適合責任を負わないことになっています。
贈与の無償性を鑑み、売主は契約不適合責任まで負わなくてよいとされています。

一方で、負担付贈与は完全に無償であるとはいい難いことから、負担付贈与の場合には売主は契約不適合責任を負うことになっています。

契約不適合責任を回避するには、買主(受贈者)の了解を取り、贈与契約書に契約不適合責任を負わない旨の特約を入れ込んでおくことが対策となります。

以上、空き家の無償譲渡について解説してきました。
空き家を無償譲渡する方法は、「周辺地権者や知人に譲る」、「空き家バンクを利用する」といった方法があります。

無償譲渡では、贈与以外の取引では売主にみなし譲渡所得税または法人税が発生します。
贈与の場合は書面で契約した方がよい等の注意点がありますので、弁護士等の専門家にも相談しながら進めることをおすすめします。

(記事は2021年10月1日時点の情報に基づいています。)

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