(東京新聞 2024/07/08)
 東京都知事選で現職の小池百合子氏が3選を果たした。2期8年間の実績が評価され、子育て支援などの公約が支持されたとも言えるが、長期政権の弊害に陥ってはならない。他候補への投票を「批判票」と受け止め、謙虚な都政運営を心掛けてほしい

 小池氏は「世界で一番の都市」を掲げ、子育て支援策として無痛分娩(ぶんべん)費用の助成や保育無償化の拡大、高齢者対策で認知症専門病院の創設、防災対策では木造住宅密集地域の解消などを訴えた。

 小池氏の根強い人気に加え、都政刷新を求める票が石丸伸二前広島県安芸高田市長や蓮舫前参院議員らに分散したことも有利に働いた。自民、公明両党などによる組織的支援も奏功した。

小池百合子  2,918,015(42.8%)

石丸伸二   1,658,363(24.3%)
蓮舫     1,283,262(18.8%)
(2人の得票数)2,941,625(43.1%)

 小池都政の重要課題は3期目も少子化対策。保育所の待機児童削減や18歳以下への現金給付など子育て支援策を展開してきたが、出生率低下に歯止めがかからない。若者の暮らしやすさを向上させる総合的な対策が望まれる。

 明治神宮外苑の再開発は推進の立場だが、本紙の電話調査では多数の樹木伐採に反対する意見が7割に達する。既存の緑をどこまで守るかが引き続き問われる。

 関東大震災時に虐殺された朝鮮人の追悼式を巡っては、歴代都知事が送ってきた追悼文をやめ、批判を浴びた。歴史的事実を認めず哀悼の意も示さないようでは、政治家の資質に疑問符が付く。追悼文の再開を促したい

 小池氏が3期目を全うすれば、任期は通算12年間に及ぶ。過去に長期間務めた都知事を見ると、前半の実績が評価され、後半の失政で批判を浴びる例が多い。

 美濃部亮吉氏は財政危機を招き、鈴木俊一氏は都市博や臨海開発で行き詰まった。石原慎太郎氏は新銀行東京の巨額赤字が表面化し、沖縄・尖閣諸島の購入構想に固執したことは日中対立の火種となった。いずれも独善に陥ったことが失政の要因でなかったか。

 自民党派閥の裏金事件などで政治不信が高まり、厳しい視線は既存の政治家全体に注がれている。小池氏も例外ではいられない。

 都政3期目の舵(かじ)取りを担うに当たり、批判には謙虚に耳を傾け、丁寧に説明を尽くす姿勢が欠かせないと肝に銘じてほしい。