コロナ禍での開催を余儀なくされてきたが、確かな盛り上がりを見せている「Dリーグ」のサードシーズンは21日、1シーズン全12ラウンド中のクライマックスともいえるラウンド11が開催された。
今回も会場の有明ガーデンシアターは、ほぼ満席。会場ではマスク越しでの応援という規制はあるものの、地鳴りのように湧きあがる想いのこもった声援が立ち上がり、今回も観客のどよめきと共に盛り上がるムードを愉しく感じることができるラウンドとなった。
このラウンド11は、これまで既に6枠あるチャンピオンシップへの出場を決めた4チームに加え、残りの2チームが決まるまさに勝負の闘いでもあり、今回も全12チームが6マッチで総当たり戦となるバトル形式によって、これまで以上に緊張感みなぎる勝負が繰り広げられた。
◆ラウンド10 チャンピオンズシップ進出をかけた熱き終盤戦 フルキャスト・レイザーズが見事CS進出を決す! 前編
■WBCの興奮を持ち込んだインフィニティーズ
1stMATCH:Valuence INFINITIES vs. USEN-NEXT I’moon
先攻は独特の存在感が印象的なバリュエンス・インフィニティーズ。今回登場シーンでは、全員が前日の日本対アメリカの決勝が行われたWBCの興奮を持ち込み、ブレイキンとヒップホップを融合させたクールなストリートスタイルが売りのインフィニティが、バッティングやピッチングなどの野球のポーズを取り入れながらコミカルに舞台へと続くブルーの花道に上がり会場を盛り上げた。登場は面白さを前面にだしたインフィニティーズだったが、動と静、そしてやわらかさが際立つクールなブレイキン&ヒップホップを披露。見ていて気持ちのよくなるナンバーが届けられた。
対する後攻はDリーグ唯一のガールズオンリーチーム、アイムーン。今シーズンの2勝目を狙い、白いジャケットに黒パンツ、黒いスーツといったシャープな出で立ちで登場。SPダンサーにSALLYとEriの二人を迎え、いつになく大人っぽい雰囲気を押し出しながら得意のシンクロ感一杯のユニゾンを踊りきった。
どちらも印象豊かな仕上がりだったが結果は5-1でインフィニティーズが勝利を攫った。
2ndMATCH:SEPTENI RAPTURES vs. KADOKAWA DREAMS
先攻は毎回愉しく登場するラプチャーズ。医師と患者に扮した出で立ちで舞台に登場し、今回はどんな展開となるのか想像を逞しくさせてくれた。ナンバーが始まるとカーテンから各キャラが順々に出てくる“診察劇場”を展開。ローラー付きの椅子とカーテンのしきりを効果的に使ったフォーメーションも巧みに、診察室で巻き起こる患者と医師との対話を面白可笑しく見せながら、最後には患者全員が元気もりもりとなり医師を担いで退場という愉しいエンディングとなった。
後攻はCS初出場を狙うカドカワドリームズ。登場はブルーのジャケットを早々に脱ぎ捨て、舞台に集結。今回のテーマは奏でるという意味の「奏(そう)」。尺八や太鼓、三味線など歌舞伎や能を想起させる和風音を使い、出で立ちも和を取り入れ、キレのある鮮やかな動きと和の世界観で会場の空気を掴んだ。
会場が沸いたという意味ではラプチャーズもひけをとってはいなかったが、結果は0-6でカドカワのスウィープ勝利と相成り、この勝利でカドカワドリームズはチャンピオンシップへの進出を決定した。
3rdMATCH:Benefit one MONOLIZ vs. LIFULL ALT-RHYTHM
先攻はヴォーグのルーツに立ち戻り「ボールルーム」をテーマとしたモノリス。いつも刺激的で妖しい世界を展開するモノリスだが、今回はおもちゃ箱をひっくり返したような色鮮やかな衣装とフラッグを掲げ、SPダンサーにMarikaとHIHAを迎えてファッション性も豊かに賑やかなヴォーグという新しい表現を展開した。
対する後攻のアルトリズムのテーマは心の豊かさという意味での「Rich」。街中を舞台とし、警備員やサラリーマン他、街を行き来する人々全員が踊り出す演出からは、ハッピーで暖かな雰囲気と共に、小物とを上手く使った演出が光っていた。結果は0-6で小物と共に空間を上手く使った演出が光ったアルトリズムが今シーズン初のスウィープでの勝利を飾った。
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著者プロフィール
Naomi Ogawa Ross●クリエイティブ・ディレクター、ライター
『CREA Traveller』『週刊文春』のファッション&ライフスタイル・ディレクター、『文學界』の文藝編集者など、長年多岐に亘る雑誌メディア業に従事。宮古島ハイビスカス産業や再生可能エネルギー業界のクリエイティブ・ディレクターとしても活躍中。齢3歳で、松竹で歌舞伎プロデューサーをしていた亡父の導きのもと尾上流家元に日舞を習い始めた時からサルサに嵌る現在まで、心の本業はダンサー。