今回はU Royのアルバム

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「Smile A While」です。

U Royはレゲエのトースティングというスタイルを
確立したディージェイです。
それまでもジャマイカのサウンド・システムには、
曲のイントロや合間に掛け声をかけて盛り上げる
「掛け声係」のようなディージェイは存在したの
ですが、曲の歌の部分に「トースティング」という
しゃべりを入れたのは彼が最初だと言われています。
これはそれまでの音楽になかった大発明だったん
ですね。

このU Royのディージェイスタイルはジャマイカで
大流行し、I RoyやBig Youthなどの追随者を生み出し、
そのスタイルはやがて海を渡りアメリカでラップ
という音楽も生み出すんですね。
そのためこのU Royは、「元祖ラッパー」と言われる
事もあります。

U Roy (U ・ロイ)

今回のアルバム「Smile A While」は、1992年に
Ariwaから発表されたアルバムです。
Ariwaといえば80年代に入ってからイギリスで
「Dub Me Crazyシリーズ」など数々のダブ・アルバム
を作ったMad Professorのレーベルとして知られて
います。

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Mad Professor - Dub Me Crazy (1983)

このMad Professorはダブの制作者のほか、Sandra Cross
などラヴァーズロック・レゲエのプロデュースや、他
ジャンルのBeastie BoysやJamiroquai、Rancidといった
アーティストのプロデュースなど、幅広い活動で知られて
います。

Ariwa (アリワ)

そのMad ProfessorがU Royをプロデュースしたのが、今回の
アルバムなんですね。
70年代のルーツ・レゲエの時代から活躍するU Royと、
80年代から新しい感性をUKのレゲエ界にもたらした
Mad Professorの組み合わせがどういう化学反応をもたら
したのか?
そこが今回の聴きどころという事になります。

全12曲で収録時間は47分12秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Produced & Mixed by: Mad Professor & Black Steel
Production Coordination: Susan Andrews

Bass/Drums: Steel, Preacher, Mafia & Fluxy
Guitars: Black Steel, Jerry Lyons, Errol The General
Keyboards: Jermaine Cross, Steel, Sandra Cross, Mafia Sgt Pepper
Brass: Vin Gordon, Michael Brammie Rose, Winston Rose, Nile Hailstones
Harmonies: Sandra Cross, Steel, Aisha, Pepper, Sister Audrey,
Princess Sharifa, Dolores Young, Peacher, Jerry Lyons

となっています。

プロデュースとミックスはMad ProfessorとBlack Steelの
共同名義になっています。
楽器の演奏も含めて今回はこのBlack Steelの頑張りが、特に
目立ちます。

演奏はBlack SteelをはじめとしたAriwaのメンバーと
Mafia & Fluxy、ブラスにVin Gordonといった布陣です。
ハーモニーにSandra CrossやAishaなどAriwaのラヴァーズ
ロック系のメンバーが多く参加しています。

さて今回のアルバムですが、ハーモニーのメンバーを見ても
解るように、ラヴァーズロックにU Royのトースティングが
乗るという趣向のアルバムです。
そうしたラヴァーズロックも、サクサクとトースティング
しちゃうところに、このU Royの実力の奥深さがあります。
さすがに全盛期ほどの輝きはありませんが、いぶし銀の
魅力というか、自在な楽しさがあるのがこの人のトースティング
なんですね。
内容は悪くないと思います。

今回はバックで歌うアーティストもかなり歌のパートが多く、
半分はトースティング、半分は歌といった曲が多く入って
います。
歌のパートを担当しているアーティストは、Sandra Cross、
Yabba You、Steel、Aisha、Sister Audrey、Slim Linton、
Earl 16、Susan Cadogan、Sgt Pepper、Carroll Thompsonと
かなり粒の揃った顔触れです。
(この中のYabba Youとなっているのは、Yabby Youのようです。)

1曲目のSandra Crossが歌う「Smile A While」から、
いかにも楽しい雰囲気の曲が続きます。
ラヴァーズ系の曲が多い構成ですが、4曲目Sister Audrey
& Slim Lintonと歌う「Steppin Pon The Right Track」は、
60年代後半のロックステディ期のPhyllis Dillonと
Hopeton Lewisのデュエット曲「The Right Track」です。
これが空気感があって、すごくイイんですね。
次の5曲目「Freedom」も、Earl Sixteenのヴォーカルに
すごくキレがあって、U Royとの絡みにグッと来る1曲です。
やっぱりこの人の自在なトースティングは魅力的です。
Mad Professorもその辺は心得ていて、あんまり前に出ずに
U Royのトースティングを生かすことに集中した作りに
徹しています。

「ディージェイ・ダディ」という愛称で呼ばれるU Royで
すが、その暖かくユーモアのあるトースティングには変わらぬ
魅力があります。
活動も息が長く、現在まで変わらずに活動を続けているん
ですよね。
そうしたU Royという「生きる伝説」の歴史の1ページとして、
悪くないアルバムだと思います。

機会があれば聴いてみてください。

Daddy U-Roy Live Europe 1997



○アーティスト:U Roy
○アルバム: Smile A While
○レーベル: Ariwa
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1992

○U Roy「Smile A While」曲目
1. Smile A While (Featuring Sandra Cross)
2. I'm A Rasta Man (Featuring Yabba You & Steel)
3. A Chapter A Day (Featuring Aisha)
4. Steppin Pon The Right Track(Featuring Sister Audrey & Slim Linton)
5. Freedom (Featuring Earl 16)
6. The Hurt Is Good (Featuring Susan Cadogan)
7. Can't Do Them Time
8. Lip Service (Featuring Sgt Pepper)
9. More Love (Featuring Sister Audrey)
10. Choice DJ
11. Leaders Of The World (Featuring Yabba You)
12. Unity In The Comunity (Featuring Carroll Thompson)

●今までアップしたU-Roy関連の記事
〇U Roy & Friends「With A Flick Of My Musical Wrist: Jamaican Deejay Music 1970-1973」
〇U Roy「30 Massive Shots From Treasure Isle」
〇U Roy「Hold On Rasta」
〇U Roy「I Am The Originator」
〇U Roy「Jah Son Of Africa」
〇U Roy「Old School / New Rules」
〇U Roy「Rasta Ambassador」
〇U Roy「True Born African」
〇U Roy「Version Galore」
〇U-Roy「Dread In A Babylon」
〇Various「When Jah Shall Come」
〇Niney The Observer「Microphone Attack 1974-78」
〇Various「King Jammy Presents New Sounds Of Freedom」