今回はStand High Patrolのアルバム

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「Our Own Way」です。

Stand High Patrolは2000年に
フランスのブルターニュ地方で結成され
た、サウンド制作の中心人物Mac Gyverと
ディージェイでセレクターのRootystep、
MCのPupajim、トランペット奏者の
Meriadeg Guillantonの4人組のレゲエ・
ユニットです。

エロクトロニクスにダブやヒップホップの
要素を取り入れた「dubadub」という独特
のスタイルで衝撃を与えたグループで、
2012年にその独特のスタイルを貫いた
デビュー・アルバム「Midnight Walkers」
を発表し、その後も15年に「A Matter
Of Scale」、17年に「The Shift」、
18年にMarina Pとの共演盤「Summer On
Mars」、20年に今回の「Our Own Way」
と、順調にその経歴を積み重ねている
グループです。

また自身のレーベルStand Highを運営し、
アルバムは全てその自身のレーベルよりの
リリースとなっています。

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て5枚ぐらいのアルバムと、7枚ぐらいの
シングル盤をリリースしています。

Stand High Patrol

↓ディスクユニオンのこのアルバムの紹介
ページ左脇に、彼らの詳しい履歴が載って
います。
OUR OWN WAY/STAND HIGH PATROL|REGGAE

今回のアルバムは2020年にフランスの
Stand Highレーベルからリリースされた
彼らの4枚目のソロ・アルバムです。

「Our Own Way(我が道を行く)」という
タイトル通りに、人生を1日になぞらえた
ようなアルバムで、アカペラで歌われる
「Morning」から始まる全17曲入りの
アルバムとなっています。
(LPでのリリースもありますが、こちら
も全17曲LP2枚組のアルバムとなって
います。)
エレクトロニカ的なサウンドの中に、彼ら
独特の朴訥とした不思議な感覚が漂う、
彼らの「dubadub」スタイルの集大成とも
いえるアルバムに仕上がっています。

手に入れたのはStand Highからリリース
されたCDの中古盤でした。

全17曲で収録時間は67分38秒。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

All beats & vocals Composed, written & recorded by Pupajim at the Donjon Studio,
except track C2 composed by Mac Gyver
All tracks arranged by Pupajim, Mac Gyver & Rootystep -
Trumpet by Meriadeg Guillanton on tracks B3, B4, C2 and D2
Kette drum by I-Mitri Counteraction on track B2 -
Effects by Mac Gyver on all tracks

Mixed by Claude Smnick Bidima, Rootystep & Mac Gyver at Les Studios Bellarue 17
All tracks mastered at Studio Kerwax
Artwork by Kazyusclef

となっています。

全ての音楽の作詞作曲、録音はPupajimが
Donjon Studioで行っています。
ただしC2(10曲目「Every Plane」)は
Mac Gyverが作曲しています。
全ての曲のアレンジはPupajimとMac Gyver、
Rootystepが行っています。
B3(7曲目「In The Park」)とB4(8曲目
「Rain On The Window」)、C2(10曲目
「Every Plane」)、D2(14曲目
「The Sound Of Nature」)のトランペット
はMeriadeg Guillantonが演奏しています。
B2(6曲目「The Factory」)のケテ・
ドラムはI-Mitri Counteractionが演奏して
います。

ミックスはClaude Smnick Bidimaと
Rootystep、Mac GyverがLes Studios
Bellarue 17で行っています。
すべてのトラックはStudio Kerwaxで
マスタリングされています。

アートワークはKazyusclefが担当していま
す。
ジャケットは2つ折りの紙ジャケットで、
白と黒のみの木版画のようなデザインが、
このアルバムにさらに魅力をプラスしてい
ます。
またネットのYouTube上に挙げられた動画
も、彼らの世界観をうまく表現していて、
とても見事です。

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裏ジャケ

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ジャケット内側

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CD袋

さて今回のアルバムですが、レゲエという
枠組みには収まり切れないStand High
Patrolの独特な世界観が感じられる
アルバムで、内容はとても良いと思い
ます。

このStand High Patrolですが、初期の
アルバム「Midnight Walkers」のネット上
にある音源などを聴いてみると、80年代
半ばのデジタルのダンスホール・レゲエ
初期の、アウト・オブ・キーのKing Kong
の曲に近いような曲などがあるんですね。

STAND HIGH PATROL: Commando


最近フランスを中心としたヨーロッパの
現代のレゲエを勉強し始めましたが、こう
したレゲエにはデジタルに移行したばかり
の頃のダンスホール・レゲエの影響を強く
感じます。
この時代の突っ走るような電子音のリズム
の面白さが、このヨーロッパのレゲエには
まだ色濃く残っているんですね。
シビアな歌詞と電子音の突っ走るような
リズム、そのあたりがこのヨーロッパの
レゲエの面白さかもしれません。

そうしたアルバム・デビューをしたStand
High Patrolでしたが、その後はさらに
独特な電子レゲエの世界に突き進んでいる
ようです。
ダル~ン、ダル~ンとしたユル~い
ドラミングに、ベチャベチャっとした呟く
ようなMC、拙い縦笛の響き、突然の鶏の
鳴き声の効果音など、これがプログレなの
か?レゲエなのか?一瞬眩暈(めまい)を
覚えるような前衛的なサウンドに、彼らの
描く独特の世界観が綴られて行きます。

ただこの17曲で綴られた1日のドラマを
聴き込んでいるうちに、ユルいドラミング
がまるでルーツ期のLeroy Horsemouse
Wallceのイナタいドラミングのように聴こ
えたり、ヘタな縦笛がまるでAugustus
Pabloのエモーショナルなメロディカの
ように聴こえてきたりします。
そこで初めて「あぁ、コレは電子音で
ルーツ・レゲエを再構築したアルバムなの
だ」と、あらためて気付かされます。
一見電子音でアヴァンギャルドなサウンド
を作っているようで、実は電子音を使って
70年代のルーツ・レゲエの再現した、
非常にエモーショナルな作品なんですね。

このStand High Patrolというユニット
ですが、結成が2000年なのにアルバム
のデビューが12年と長い年月をかけての
リリースですが、その間に培われたダブと
電子音を融合した「dubadub」スタイルは
彼らのオリジナリティあふれるスタイル
で、レゲエという音楽をまた一歩進化させ
た独創性は、やはり高く評価すべきものが
あります。

1曲目は「Morning」です。
鳥のさえずりをバックに、アカペラで歌わ
れるイントロ曲です。
14曲目「The Sound Of Nature」と曲は
同じで、そちらはバックの演奏も付いてい
ます。

STAND HIGH PATROL - Morning


2曲目は「Sailing In Rough Seas」
です。
哀愁のあるピアノとキーボードのメロディ
に、ちょっとイナタい電子音のドラミング、
憂いのあるヴォーカル…。

STAND HIGH PATROL - Sailing In Rough Seas


3曲目は「Blues」です。
イナタいデジタルなドラミングに、
ちょっと抜けた感じの縦笛音とキーボード
のメロディ、表情豊かでちょっと
ユーモラスなヴォーカルがイイ感じ。

STAND HIGH PATROL - Blues


4曲目は「Dub O'Clock」です。
刻むようなリズムのギター音に、ダルンと
したキーボードのメロディ、語るような
MCワークがイイ感じ。

STAND HIGH PATROL - Dub O'Clock


5曲目は「Along The River」です。
イナタいドラミングに、オカリナのような
キーボードの拙いメロディ、語るような
歌うようなシング・ジェイのヴォーカルが
イイ感じ。

STAND HIGH PATROL : Along The River


6曲目は「The Factory」です。
心地良いパーカッションに、ユッタリと
したキーボードのメロディ、静かに語る
ようなヴォーカルがイイ感じ。

STAND HIGH PATROL - The Factory


7曲目は「In The Park」です。
デジタルなドラミングに、キーボードの
メロディ、語るようなヴォーカルに
コーラスがイイ感じ。
だいぶ遅れて入って来るアンニュイな
トランペットもイイ感じ。

STAND HIGH PATROL : In The Park


8曲目は「Rain On The Window」です。
雨粒のようなポンポンとしたデジタル音
に、情感のあるトランペットの調べ、
タクタクと打ち付けるようなデジタルの
ドラミング…。
レゲエというよりは電子ミュージック感の
ある曲です。

STAND HIGH PATROL - Rain On The Window


9曲目は「Jay's Life」です。
不安感を煽るような途切れ途切れのキー
ボードの電子音に、合いの手の入ったMC
の語り…。

STAND HIGH PATROL : Jay's Life


10曲目は「Every Plane」です。
デジタルなドラミングに、キーボードの
メロディ、エコーのかかったダブワイズ
したヴォーカル…。
後半に入って来るトランペット…。

STAND HIGH PATROL - Every Plane


11曲目は「Belleville Rap」です。
ユッタリとしたデジタルのドラミングに、
不安感を煽るようなキーボードの
メロディ、フランス語の語りがイイ感じ。

STAND HIGH PATROL - Belleville Rap


12曲目は「The Train」です。
流れるようなデジタルのキーボードの
メロディに、割れた鍋蓋を叩くような
デジタルのドラミング…。

STAND HIGH PATROL - The Train


13曲目は表題曲の「Our Own Way」
です。
デジタルの不穏な空気のキーボードの
メロディに、訥々と語るようなちょっと
コミカルなMC…。

STAND HIGH PATROL - Our Own Way


14曲目は「The Sound Of Nature」
です。
1曲目のアカペラ曲「Morning」のバック
が付いたヴァージョンです。
心地良いパーカッションのドラミングに、
刻むような生ギターと表情豊かなキー
ボードのメロディ、ユッタリと語るような
ヴォーカルに、合わせるようなコーラス・
ワーク…。
こちらも後半にエモーショナルな
トランペットが入ります。

STAND HIGH PATROL - The Sound Of Nature


15曲目は「Rainy Ragga」です。
流れる水音のようなエフェクトから、
金属音、ユッタリとしたキーボードの
メロディ、静かな男性の語り…。

STAND HIGH PATROL - Rainy Ragga


16曲目は「D Funk」です。
ユッタリとしたデジタルのキーボードの
メロディに、シンバル音、軽快なデジタル
のキーボード音、硬いデジタルな
ドラミング・・。
近未来感がある曲です。

STAND HIGH PATROL - D Funk


17曲目は「Last Day Of Winter」です。
ポンポンとしたキーボード音に、静かに
語り出すようなヴォーカル、金属を叩く
ような硬いドラミング…。

STAND HIGH PATROL - Last Day Of Winter


ざっと追いかけて来ましたが、息の抜けた
ようなスカスカの縦笛音や、ダルンとした
ドラム音など、このバンドが長い年月を
かけて結実して来たプログレッシヴな
レゲエの集大成的なアルバムで、内容は
悪くないと思います。

これをレゲエと呼んで良いのか?いけない
のか?いまだに迷うところがありますが、
少なくとも彼らの持つクリエイティビティ
(創造性)は本物で、聴き終わった後に
ズッシリとした手ごたえがあります。
やはり唯一無二の音楽を生み出した、彼ら
の精神性には心からの拍手を送りたいと
思います。
彼らの今後にはこれからも注目です。

機会があればぜひ聴いてみてください。


STAND HIGH PATROL : BREST BAY - LIVE / FESTIVAL DES VIEILLES CHARRUES 2022


STAND HIGH PATROL : OUR OWN WAY - LIVE / FESTIVAL DES VIEILLES CHARRUES 2022


STAND HIGH PATROL HALL - TELERAMA DUB FESTIVAL 2013 - PARIS


○アーティスト: Stand High Patrol
○アルバム: Our Own Way
○レーベル: Stand High
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2020

○Stand High Patrol 「Our Own Way」曲目
1. Morning
2. Sailing In Rough Seas
3. Blues
4. Dub O'Clock
5. Along The River
6. The Factory
7. In The Park
8. Rain On The Window
9. Jay's Life
10. Every Plane
11. Belleville Rap
12. The Train
13. Our Own Way
14. The Sound Of Nature
15. Rainy Ragga
16. D Funk
17. Last Day Of Winter