今回はCarroll Thompsonのアルバム

Carroll_thompson_01a
(開封前)
Carroll_thompson_02a
(開封後)
「Hopelessly In Love」です。

Carroll Thompson(本名:Carroll Edwina
Thompson)は80年代から活躍するUKの
ラヴァーズロック・レゲエの女性シンガー
です。

ジャマイカの移民の両親の元に生まれ、
イギリスのロンドンで育った彼女は、
19歳の時に発表した「I'm So Sorry」
(80年)が大ヒットし、81年に今回の
ファースト・アルバム「Hopelessly In
Love」をリリースし、ラヴァーズロック・
レゲエの人気シンガーとなります。
その後も活躍を続け、「ラヴァーズ・
ロックの女王」と称されるまでに人気を
博したのが、このCarroll Thompsonです。

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て14枚ぐらいのアルバムと、51枚
ぐらいのシングル盤を残しています。

キャロル・トンプソン | プロフィール

今回のアルバムは1981年にUKの
Carib Gemsというレーベルからリリース
されたCarroll Thompsonのファースト・
アルバムです。

プロデュースはCarroll ThompsonとBertie
Grant (C&B Productions)で、UKの
スタジオ・ミュージシャンが多く参加した
アルバムで、大ヒットした「I'm So Sorry」
や表題曲の「Hopelessly In Love」など、
いかにもUKレゲエらしいラヴ・ソングが
多く集められたアルバムとなっています。

手に入れたのはこのアルバムの40周年を
記念してUKのTrojan Recordsから
2012年にリイシューされたCD
(新盤)でした。
オリジナル10曲に加えて、貴重な12
インチ・リミックスをボーナス・トラック
5曲を加えて復刻されたCDでした。

全15曲で収録時間は63分09秒。
オリジナル曲10曲に加えて、貴重な12
インチ・リミックスをボーナス・トラック
5曲に加えた、全15曲入りのアルバムと
なっています。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

1. Yesterday
Arranged by Cleeveland Watkiss & Alan Weekes
Mixed by Bertie Grant and Mike Stevenson
Musicians:
Drums: Max Asher
Bass: Elroy Bailey
Lead & Rythm Guitar: Alan Weekes
Piano & Organ: Sonny Binns
Synthesizer: Chris Hodges
Percussion: Desmond Mohoney, Cleeveland Watkiss, Bertie Grant, Stevie

2. I'm So Sorry
Arranged by Bertie Grant & Carroll Thompson
Mixed by Bertie Grant & Mike Stevenson
Musicians:
Drums: Jah Bunny
Bass: Elroy Bailey
Lead & Rythm Guitar: Alan Weekes
Lead Guitar: Swell Radics
Piano: Ojemba
Synthesizer: Chris Hodges
Percussion: Desmond Mohoney, Cleeveland Watkiss, Bertie Grant, Stevie
Backing Vocals: Carroll Thompson

3. No, You Don't Know
Arranged by Carroll Thompson & Bertie Grant
Mixed by Bertie Grant & Mike Stevenson
Musicians:
Drums: Desmond Mohoney
Bass: Courtney Carr
Rythm Guitar: Alan Weekes
Lead Guitar: Swell Radics
Piano: Ojemba
Percussion: Desmond Mohoney, Cleeveland Watkiss, Bertie Grant, Stevie
Backing Vocals: Carroll Thompson & Cleeveland Watkiss

4. Sing Me A Love Song
Arranged by Cleeveland Watkiss & Alan Weekes
Mixed by Bertie Grant & Mike Stevenson
Musicians:
Drums: Jah Bunny
Bass: Courtney Carr
Lead & Rythm Guitar: Alan Weekes
Lead Guitar: Swell Radics
Trumpet & French Horn: Vincent Gordon
Piano: Ojemba
Backing Vocals: Carroll Thompson & Cleeveland Watkiss

5. Mr. Cool
Arranged by Carroll Thompson & Bertie Grant
Mixed by Bertie Grant & Mike Stevenson
Musicians:
Drums: Desmond Mohoney
Bass: Courtney Carr
Rythm Guitar: Alan Weekes
Lead Guitar: Swell Radics
Piano: Ojemba
Synthesizer: Chris Hodges
Percussion: Desmond Mohoney, Cleeveland Watkiss, Bertie Grant, Stevie
Backing Vocals: Carroll Thompson & Cleeveland Watkiss

6. Merry-Go-Round
Recorded Easy Street Studios
Arranged by Alan Weekes
Mixed by Bertie Grant & Mike Stevenson
Musicians:
Drums: Tim Blacksmith
Percussion: Lenny Edwards
Bass: Courtney Carr
Guitar: Alan Weekes
Synthesizer: Chris Hodges
Piano: Ojemba
Horns: Matix
Backing Vocals: Carroll Thompson & Cleeveland Watkiss

7. Simply In Love
Arranged by Bertie Grant & Carroll Thompson
Mixed by Bertie Grant & Mike Stevenson
Musicians:
Drums: Jah Bunny
Bass: Elroy Bailey
Rythm Guitar: Alan Weekes
Lead Guitar: Swell Radics
Piano: Ojemba
Synthesizer: Chris Hodges
Percussion: Desmond Mohoney, Cleeveland Watkiss, Bertie Grant, Stevie
Backing Vocals: Carroll Thompson & Cleeveland Watkiss

8. When We Are As One
Arranged by Bertie Grant & Carroll Thompson
Mixed by Bertie Grant & Mike Stevenson
Musicians:
Drums: Desmond Mohoney
Bass: Courtney Carr
Lead & Rythm Guitar: Alan Weekes
Lead Guitar: Swell Radics
Piano: Ojemba
Electric Piano: Noel 'Fish' Solmon
Backing Vocals: Carroll Thompson & Cleeveland Watkiss

9. What Colour?
Arranged by Bertie Grant & Carroll Thompson
Mixed by Bertie Grant & Mike Stevenson
Musicians:
Drums: Desmond Mohoney
Bass: Elroy Bailey
Rythm Guitar: Alan Weekes
Lead Guitar: Swell Radics
Piano: Ojemba
Synthesizer: Chris Hodges
Percussion: Desmond Mohoney, Cleeveland Watkiss, Bertie Grant, Stevie
Backing Vocals: Carroll Thompson & Cleeveland Watkiss

10. Hopelessly In Love
Arranged by Bertie Grant & Carroll Thompson
Arranged by Cleeveland Watkiss & Alan Weekes
Mixed by Bertie Grant & Mike Stevenson
Musicians:
Drums: Desmond Mohoney
Bass: Courtney Carr
Lead & Rythm Guitar: Alan Weekes
Piano: Ojemba
Synthesizer: Chris Hodges
Percussion: Desmond Mohoney, Cleeveland Watkiss, Bertie Grant, Stevie
Backing Vocals: Carroll Thompson & Cleeveland Watkiss

(ボーナス・トラックは省略)

All recordings produced by Carroll Thompson & Bertie Grant (C&B Productions).

Design by Paul Bevoir
Original sleeve photo by Desmond Bailey

となっています。

プロデュースはCarroll ThompsonとBertie
Grant (C&B Productions)となっています。

長いのでミュージシャンの詳細は省きます
が、UKのスタジオ・ミュージシャンが
集結したアルバムのようで、Black Slate
のベーシストElroy Baileyや、Matumbiの
ドラマーJah Bunnyなど、多くの
ミュージシャンが参加したアルバムと
なっています。
ちょっと変わったところでは4曲目の
「Sing Me A Love Song」に、ジャマイカ
のトロンボーン奏者Vincent Gordonが
トランペットとフレンチホルンで参加して
います。

ジャケット・デザインはPaul Bevoir、
オリジナルのジャケット写真はDesmond
Baileyとなっています。
ジャケットは3つ折りの紙ジャケットで、
表ジャケと同じ絵柄の、曲ごとの
ミュージシャンや歌詞などが書かれた
12ページの小冊子が付いていました。

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裏ジャケ

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表ジャケ(内側)

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小冊子(表紙)

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小冊子(6~7ページ)

さて今回のアルバムですが、Carroll
Thompsonがラヴァーズロック・レゲエの
シンガーとしての礎を築いたアルバムで、
内容は悪くないと思います。

まずはラヴァーズロック・レゲエについて
簡単に説明しておきます。
ラヴァーズロック・レゲエは70年代半ば
にUKで誕生したレゲエのサブ・ジャンル
で、おもにラヴ・ソングをテーマとした
ロマンティックな歌詞と、洗練された洒脱
なサウンドが特徴的な音楽です。
70年代にレゲエという音楽は世界的に
認められ世界的な音楽となりますが、その
時代のレゲエはBob Marleyなどを中心と
した、社会の不平等や黒人差別などを訴え
るプロテスタント色の強いルーツ・レゲエ
だったんですね。
ただそうしたレゲエは当時支配階級だった
白人層にはウケが悪く、UKでは誰でも
楽しめる娯楽としてのレゲエが必要とされ
ていました。
そのラヴァーズロック・レゲエの中心と
なったのが、「Lovers Rock」という
レーベルを立ち上げたプロデューサーの
Dennis Harrisと、Dennis Bovell、
John Kpiaye(ジョン・カパイ)といった
ミュージシャンでした。
政治色を排し、ある意味ラヴ・ソングのみ
を歌うレゲエ、それがラヴァーズロック・
レゲエです。

ラヴァーズ・ロック

そのラヴァーズロック・レゲエの女王と
言われたのがこのCarroll Thompsonで、
ラヴァーズの名盤と言われたのが今回の
アルバムです。
個人的にはどうもラヴァーズロックって
歯の浮くような高音のヴォーカルに、洗練
されたメロディの組み合わせがどうも
スッキリと受け止められないところがある
のですが、このアルバムに関しては当時の
レゲエのマナーが守られていて、けっこう
楽しく聴く事が出来ました。

Carroll Thompsonのヴォーカルは高音を
活かしたとてもスウィートなヴォーカル
なのですが、バックの演奏は当時流行した
ワン・ドロップのリズムや、刻むように
チャッチャッとリズムをとるリード・
ギターなど、意外なほどに硬派な演奏なん
ですね。
当時のUKのスタジオ・ミュージシャンの
レヴェルの高さが感じられる、とても
素晴らしい演奏だと思いました。
そのガシっと硬いハードな演奏が、まだ
20歳と若い彼女のスウィートな
ヴォーカルをうまく支えています。
そうしたメローとハードのヴァランスが
絶妙なアルバムなんですね。

スウィートな「Yesterday」や、ヒット
した「I'm So Sorry」、いかにも
ラヴァーズの「Simply In Love」、さらり
と人種問題を絡めた「What Colour?」、
そして悲恋をうたった表題曲「Hopelessly
In Love」と、佳曲が揃った好内容の
アルバムとなっています。

ちなみにこのアルバムは2021年刊行の
レゲエ本「REGGAE definitive」にも紹介
されたアルバムでした。

1曲目は「Yesterday」です。
歯切れの良いドラミングに、漂うような
キーボードのメロディ、メリハリの効いた
Carroll Thompsonのヴォーカルがイイ
感じ。

yesterday by carroll thompson


2曲目は「I'm So Sorry」です。
歯切れの良いドラミングに、刻むような
ギターとキーボードを中心とした
メロディ、爽やかなCarroll Thompsonの
ヴォーカルがとても魅力的。

CARROLL THOMPSON - I'M SO SORRY


3曲目は「No, You Don't Know」です。
ユッタリとしたドラミングに、チャッ
チャッと切って行くようなギター・
ワーク、スローなキーボードのメロディ、
語るようなCarroll Thompsonの感情を
乗せたヴォーカルがイイ感じ。

Carroll Thompson - No You Don't Know


4曲目は「Sing Me A Love Song」です。
ユッタリとしたワン・ドロップの
ドラミングに、ホーンと刻むような
ギター、ピアノのメロディ、情感を乗せた
Carroll Thompsonの表情豊かなヴォーカル
がとても魅力的。

Sing Me a Love Song (2021 - Remaster)


5曲目は「Mr. Cool」です。
ユッタリとしたドラミングに、刻むような
ギターのメロディ、ポンポン音の
エフェクト、伸びやかな高音を活かした
Carroll Thompsonのヴォーカルがイイ
感じ。

Mr. Cool (2021 - Remaster)


6曲目は「Merry-Go-Round」です。
歯切れの良いドラミングに、刻むような
ギター、ホーンのメロディ、甲高い高音を
活かしたCarroll Thompsonのヴォーカルが
とても魅力的。

Merry-Go-Round (2021 - Remaster)


7曲目は「Simply In Love」です。
ユッタリとしたドラミングに、漂うような
キーボードと刻むようなギターの
メロディ、情感を乗せたCarroll Thompson
のヴォーカルがイイ感じ。

Simply in Love - Carroll Thompson


8曲目は「When We Are As One」です。
ユッタリとしたワン・ドロップの
ドラミングに、刻むようなギターとキー
ボード、リリカルなピアノのメロディ、
伸びやかに歌うCarroll Thompsonの
ヴォーカルがイイ感じ。

When We Are as One (2021 - Remaster)


9曲目は「What Colour?」です。
漂うようなキーボードと刻むようなギター
のメロディ、高音のコーラス・ワーク、
心地良いCarroll Thompsonのヴォーカルが
イイ感じ。

What Colour? (2021 - Remaster)


10曲目は「Hopelessly In Love」です。
伸びやかなCarroll Thompsonのハミング
から、歯切れの良いワン・ドロップの
ドラミング、刻むようなギターと漂うよう
なキーボードを中心としたメロディ、伸び
やかなCarroll Thompsonのヴォーカルが
とても魅力的。

Carroll Thompson - Hopelessly In Love (Official Lyrics Video)


11~15曲までの5曲はボーナス・
トラックで、「Hopelessly In Love」の
12インチ・ヴァージョンなどが収められ
ていますが、ここでは省略します。
ただCarroll Thompson & Sugar Minottの
「Make It With You」など、なかなか選曲
の妙が感じられる内容です。

Carroll Thompson & Sugar Minott - Make It With You (Track Visualiser)


ざっと追いかけて来ましたが、この時代の
Carroll Thompsonの好調さがよく解る
アルバムで、内容は悪くないと思います。

その後Carroll Thompsonは「ラヴァーズ
ロックの女王」と呼ばれるほどの成功を
おさめますが、このアルバムはその第一歩
を記したアルバムとして、彼女の音楽史に
おいて、とても貴重なアルバムだと思い
ます。

機会があればぜひ聴いてみてください。


Courtney Pine ft Carroll Thompson - I'm Still Waiting (Daytime UK TV)


Carroll Thompson - I'm So Sorry


○アーティスト: Carroll Thompson
○アルバム: Hopelessly In Love
○レーベル: Trojan Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1981

○Carroll Thompson「Hopelessly In Love」曲目
1. Yesterday
2. I'm So Sorry
3. No, You Don't Know
4. Sing Me A Love Song
5. Mr. Cool
6. Merry-Go-Round
7. Simply In Love
8. When We Are As One
9. What Colour?
10. Hopelessly In Love
(Bonus Tracks)
11. You Are The One I Love
12. Your Love
13. Make It With You - Carroll Thompson & Sugar Minott
14. Make It With You (Version) - The Black Roots Players
15. Hopelessly In Love (12" mix)