今回はGentlemanのアルバム

gentleman_01a

「Mad World」です。

Gentleman(本名:Tilmann Otto)は
90年代半ば頃から活躍するドイツ人の
レゲエ・シンガーです。

ネットのDiscogsには彼のプロフィールと
して次のような事が書かれています。

Reggae musician, born 19 April 1974 in Osnabrück, Germany, now living in Cologne, Germany.
Married to Tamika Edwards Otto.
He founded Bushhouse Music in 2005, together with Stephan Schulmeister.

《レゲエ・ミュージシャン、1974年4月19日ドイツ
のオスナブリュック生まれ、現在ドイツのケルン在住。
Tamika Edwards Ottoと結婚。
彼は2005年にStephan Schulmeisterとともに
Bushhouse Musicを設立した。》

74年に宣教師の息子として生まれた彼は
兄がレゲエのコレクターだった事から
レゲエという音楽に興味を持ち、16歳の
頃から頻繁にジャマイカに旅行するように
なり、そこでジャマイカのクレオール語
(パトワ語)を習得します。
90年代頃からレゲエの歌手・ディージェイ
としての活動を開始し、98年にドイツの
ヒップホップ・バンドFreundeskreisと共演
した楽曲「Tabula Rasa」が彼の最初の
ヒット曲となります。

Mellowbag feat. Freundeskreis and Gentleman - Tabula Rasa


その後も人気のレゲエ・シンガーとして
活動し、2004年にアルバム「Confidence」
と2010年のアルバム「Diversity」が
ドイツのチャートで1位を獲得するなど、
順調にレゲエのトップ・アーティストの
地位を築いています。

ネットのDiscogsによると、共演盤を含めて
13枚ぐらいのアルバムと、115枚ぐらい
のシングルとEP盤を残しています。

ジェントルマン (歌手) - Wikipedia

アーティスト特集: Gentleman (ジェントルマン)

今回のアルバムは2022年にドイツの
Urbanというレーベルからリリースされた
Gentlemanの現時点(執筆時)での最新
アルバムです。

プロデュースはJugglerzとHägiで、表題曲
の「Mad World」や「Defining Love」、
Stonebwoyとの共演曲「Can't Lock The Dance」、
Etanaとの共演曲「Island Breeze」、
「Jah Only」など、Gentlemanの思いの
詰まった好内容のアルバムとなっています。

手に入れたのはUrbanからリリースされた
CD(新盤)でした。

全12曲で収録時間は33分38秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。
詳細なミュージシャンの表記はありません。

1. Defining Love
Music by: Jopez, Meska, Sir Jai, Patrice
Lyrics by: Gentleman, Daddy Rings
Produced by: Jugglerz
Mixed by: Jugglerz
Mastered by: Hans-Philipp Graf at HP Mastering
Background Vocals: Sherieta Lewis
Guitar: Patrice

2. Over The Hills
Music by: Jopez, Meska, Sir Jai
Lyrics by: Gentleman, Daddy Rings, Phenomden
Produced by: Jugglerz
Mixed by: Jugglerz
Mastered by: Hans-Philipp Graf at HP Mastering
Background Vocals: Sherieta Lewis

3. Fight For No Reason
Music by: Jopez, Meska, Sir Jai
Lyrics by: Gentleman, Daddy Rings
Produced by: Jugglerz
Mixed by: Jugglerz
Mastered by: Hans-Philipp Graf at HP Mastering

4. Can't Lock The Dance - Ft. Stonebwoy
Music by: Jopez, Meska, Sir Jai
Lyrics by: Gentleman, Stonebwoy, Daddy Rings
Produced by: Jugglerz
Mixed by: Jugglerz
Mastered by: Hans-Philipp Graf at HP Mastering
Background Vocals: Sherieta Lewis

5. Things Will Be Greater
Music by: Jopez, Meska, Sir Jai
Lyrics by: Gentleman, Daddy Rings
Produced by: Jugglerz
Mixed by: Jugglerz
Mastered by: Hans-Philipp Graf at HP Mastering
Background Vocals: Sherieta Lewis

6. What Them A Go Do
Music by: Jopez, Meska, Sir Jai
Lyrics by: Gentleman, Daddy Rings
Produced by: Jugglerz
Mixed by: Jugglerz
Mastered by: Hans-Philipp Graf at HP Mastering
Background Vocals: Sherieta Lewis
Drums: Big Finga
Keys: Pollensi
Sax: Johanna

7. They Don't Know
Music by: Jopez, Meska, Sir Jai
Lyrics by: Gentleman, Daddy Rings, Phenomden
Produced by: Jugglerz
Mixed by: Jugglerz
Mastered by: Hans-Philipp Graf at HP Mastering
Background Vocals: Sherieta Lewis
Brass: Nils

8. Mad World
Music by: Roland Orzabal
Lyrics by: Roland Orzabal, Gentleman, Daddy Rings
Produced by: Jugglerz
Mixed by: Jugglerz
Mastered by: Hans-Philipp Graf at HP Mastering
Background Vocals: Sherieta Lewis
Drums: Big Finga
Keys: Pollensi
Sax: Johanna

9. Far From The Rage
Music by: Hägi
Lyrics by: Gentleman
Produced by: Hägi
Mixed by: Jugglerz
Mastered by: Hans-Philipp Graf at HP Mastering
Background Vocals: Sherieta Lewis

10. Stick To The Topic
Music by: Jopez, Meska, Sir Jai
Lyrics by: Gentleman, Daddy Rings
Produced by: Jugglerz
Mixed by: Jugglerz
Mastered by: Hans-Philipp Graf at HP Mastering

11. Island Breeze - Ft. Etana
Music by: Jopez, Meska, Sir Jai
Lyrics by: Gentleman, Etana, Daddy Rings
Produced by: Jugglerz
Mixed by: Jugglerz
Mastered by: Hans-Philipp Graf at HP Mastering

12. Jah Only
Music by: Jopez, Meska, Sir Jai
Lyrics by: Gentleman, Phenomden, Daddy Rings
Produced by: Jugglerz
Mixed by: Jugglerz
Mastered by: Hans-Philipp Graf at HP Mastering
Background Vocals: Sherieta Lewis

Fotos (Photos): Tim Erdmann, Christina Gotz
Gestaltung (Layout): Christina Gotz

となっています。

長いので省略しますが、9曲目
「Far From The Rage」のみプロデュース
がHägiで、残りの楽曲はすべてJugglerz
がプロデュースしています。
ベースとなる演奏はJopezとMeska、Sir Jai
の3人で、曲によりゲストが参加して
います。
多くの曲でバック・コーラスに
Sherieta Lewisが参加しています。

写真はTim ErdmannとChristina Gotzで、
レイアウトはChristina Gotzが担当して
います。
ジャケットは見開きの紙ジャケットで、
表ジャケは印象的な岩の間にGentlemanと
思われる人物がシルエット状に写った
ジャケットです。

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裏ジャケ

アルバムには12ページの小冊子が付属
していました。
小冊子の表紙と裏面の写真は繋がっていて、
海に浮かぶGentlemanのモノクロ写真と
白抜きで「Mad World」の文字が印刷され
ています。

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小冊子(裏面と表紙)

2ページ目と11ページ目はモノクロ写真
に白抜きで曲ごとのアーティストの記録、
他のページはGentlemanのカラー写真などが
レイアウトされています。

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小冊子(2~3ページ)

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小冊子(4~5ページ)

さて今回のアルバムですが、まだコロナ禍
の影響の残る22年に発表されたアルバム
で、「Mad World(狂った世界)」という
タイトルからも解るように、彼の思いの
こもった好内容のアルバムとなっています。

このGentlemanですが↑のプロフィール
にも書いたように、宣教師の息子として
生まれ、兄の影響からレゲエという音楽に
目覚め、16歳から頻繁にジャマイカに
通いパトワ語をマスターし、ドイツで
レゲエのスターへと登り詰めたという人
なんですね。
いわば成るべくしてレゲエ・アーティスト
になった人なんですね。
その実力はレゲエの本場ジャマイカからも
認められています。

彼の音楽の特徴としては、ネットの
Wikipediaに次のような事が書かれていま
す。

「ジェントルマンはほとんどの歌をドイツ語
ではなく、英語かジャマイカ・クレオール語
で歌唱しており、「Send A Prayer」など
特定の宗教に寄らない神への信仰をテーマ
にした曲を多く発表している。」

ちゃんとジャマイカの人達にも受け入れ
られるように、若い頃からジャマイカに
通ってジャマイカ・クレオール語
(パトワ語)を勉強していたというのも、
この人の凄いところかもしれません。
また宣教師の父を持ちジャマイカに通った
という彼が、キリスト教でもなくラスタ
ファリズムでもなく無宗教でもない、
「特定の宗教に寄らない神への信仰」へ
行きついたというのも面白いところ。

そうした彼が2022年に発表したのが
今回のアルバムで、この22年は2月
24日にロシアのウクライナ侵攻があり、
まだコロナの傷も癒えない頃だったんです
ね。
その年に出された彼のアルバムのタイトル
が「Mad World」だった事は、やはりすごく
痛みの伴った衝撃があります。

「狂った世界
俺達が住んでいるのはとっても狂った世界なんだ
(狂った、狂った、狂った) 狂った世界
それは終わりなのか、それとも始まりなのか?」

Mad World (マッド・ワールド) - Gentleman : つれづれげえ日記

その彼の問いかけに私達はどう答えるべき
なのでしょうか?

残念なことにその後も23年にはイスラエル
のパレスチナ侵攻も起き、地球温暖化も
進み世界は荒廃し続けています。
そうした苦しみを止める動きはまだまだ
弱く、多くの人々が今も苦しみ続けていま
す。

「俺達が住んでいるのはとっても狂った世界なんだ」

このGentlemanの発する言葉は重く苦しく
痛いですが、こういう時代だからこそ彼の
言葉は共感を呼び、多くの人々から支持
されるのでしょう。
そして多くの人々がこの辛く苦しい現実から
解放される事を願っています。

1曲目は「Defining Love」です。
ユッタリとしたドラミングに、ギターと
キーボードのメロディ、ソフトなGentleman
のヴォーカルがイイ感じ。

Defining Love


2曲目は「Over The Hills」です。
心地良いドラミングに、キーボードと
ギターのメロディ、軽快に語るGentleman
のヴォーカルがイイ感じ。

Gentleman - Over The Hills (prod. by Jugglerz) [Official Video]


3曲目は「Fight For No Reason」です。
ビタビタとしたドラミングに、不穏な空気
感のシンセのメロディ、想いを語るような
Gentlemanのシング・ジェイがイイ感じ。

Gentleman - Fight For No Reason (Official Video)


4曲目はStonebwoyとの共演曲
「Can't Lock The Dance」です。
リリカルなピアノのイントロから、デジタル
なドラミングに、シンセを中心とした
メロディ、ソフトなGentlemanのシング・
ジェイに、合間良く入って来るStonebwoy
のトーストがイイ感じ。

Gentleman ft. Stonebwoy – Can't Lock The Dance (prod. by Jugglerz) [Official Video]


5曲目は「Things Will Be Greater」
です。
メローなキーボードのメロディに、ソフト
なGentlemanのトースト…、徐々に盛り
上がって行く演奏…。

Gentleman - Things Will Be Greater (Official Video)


6曲目は「What Them A Go Do」です。
心地良いドラミングに、浮遊感のある
キーボードとギター、サックスのメロディ、
語るようなGentlemanのシング・ジェイが
イイ感じ。

What Them a Go Do


7曲目は「They Don't Know」です。
重いシンセとキーボードのメロディに、
静かに語るようなGentlemanのシング・
ジェイがとても魅力的。

8曲目は表題曲の「Mad World」です。
ユッタリとしたピアノのイントロから、
リズミカルなドラミングに、ピアノと
キーボード、ギターのメロディ、ソフトな
Gentlemanのシング・ジェイとコーラスが
イイ感じ。

Gentleman - Mad World (Official Video)


9曲目は「Far From The Rage」です。
リリカルな生ギターのオープニングから、
浮遊感のあるキーボードとギターの
メロディ、ソフトに語りかけるGentleman
のシング・ジェイがイイ感じ。

Far from the Rage


10曲目は「Stick To The Topic」です。
ダンサブルなキーボードのメロディに、
Gentlemanのソフトでクールなシング・
ジェイがイイ感じ。

Stick to the Topic


11曲目はEtanaとの共演曲
「Island Breeze」です。
浮遊感のあるキーボードのメロディに、
語るようなGentlemanのヴォーカル、
透き通ったのヴォーカルとの絡みが
とても魅力的。

Island Breeze


12曲目は「Jah Only」です。
ユッタリしたキーボードとギター、シンセ
のメロディに、ソフトに語りかけるような
Gentlemanのヴォーカルと、コーラスが
イイ感じ。

Gentleman – Jah Only (Official Video)


ざっと追いかけて来ましたが、多くの曲
からGentlemanの思いが伝わって来るよう
なアルバムで、内容はとても良いと思い
ます。
最後の楽曲「Jah Only」でちょっと救わ
れた気持ちになる、その構成のウマさも
ホメたいところ。

この私達が生きる世界は、たった一人の
独裁者の暴挙も止められずに、ただひたすら
破滅に向かって突き進んでいるようにも見え
ます。
自分が狂った世界に生きているという認識
は、とても苦しく心の痛いものです。
そして立場の弱い人間ほど、その現実から
抜け出すのは途方もなく困難が伴います。
私達はどこから来て、どこに向かうのか?
正義が見えなくなった現代の社会では、
その答えを見つけるのは途方もない困難が
伴います。
ただその時に言葉で明かりを照らしてくれる
存在が居る事は、私達にとって大きな救いに
なるのではないでしょうか。
Gentlemanの活躍にはこれからも期待したい
と思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


Gentleman - Mad World (Live at ‪@LateNightBerlin‬)


Gentleman - Ahoi (Live ‪@LateNightBerlin‬ )


Gentleman - Full Concert - 3SAT Festival Mainz 15.10.2022


Aloe Blacc × Gentleman - Never Let You Down (Official Video)


○アーティスト: Gentleman
○アルバム: Mad World
○レーベル: Urban
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2022

○Gentleman 「Mad World」曲目
1. Defining Love
2. Over The Hills
3. Fight For No Reason
4. Can't Lock The Dance - feat. Stonebwoy
5. Things Will Be Greater
6. What Them A Go Do
7. They Don't Know
8. Mad World
9. Far From The Rage
10. Stick To The Topic
11. Island Breeze - feat. Etana
12. Jah Only