お世話になります。
うう。しまああです。
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突然だけど、『君の膵臓を食べたい(住野よる著 2015)』を読んだ私の感想は、「上手く構成された劇を本で読んだ」気分だったのだけれど、他の人はどう感じるものなのだろうか。どんな物語でもオチやストーリーというものは大して変わらないけど、私たちはその変わらなさを愛している。変わらなくても入り込んでしまう。でも、この本に関しては、台詞が演技っぽいのか、話が演技っぽいのかよくわからないけど、配置が綺麗だなあという感想が先行してしまって、物語には対して何だか入りこめなかった。かなりライトな感じのノベルという感想を持ってしまった。だから、他の人の感想が何だか気になる。
まあ、そもそも人を病気にしたり、殺したりして感動を起こそうというスタイルはずるいと思っているから、私はあまり好きではない。かと言って、ヒッチコックの"The trouble with Harry(1955)"みたいに、死体を引き摺りまくるところまでいくと、それはそれで災難だけど。
私は心がワクワクするような冒険がしたいのだ。
その点、『狼と香辛料(支倉凍砂著 2006-)』というラノベは好きである。ラノベ界でも一等輝く電撃文庫の中でも(別に電撃文庫は批評できるほど読んでないけど)、一等輝く作品の一つである。壮大な絵本を読んでいる気持ちになる本である。めちゃ面白い。ちなみに、支倉を(はせくら)ではなく、(しくら)と読んでいたのはご愛嬌。
ただ、この作品、中世やら近世やらのヨーロッパをモデルにしているせいで、遥か最果てに住む東洋人には何となく風景が想像しにくい。ヨーロッパはそれなりに山に分断された複雑な地形なので、どの地域の、どの時代をモデルにするかで風景もまるっきり違うだろうが、頭の中で風景を描くのにモデルは欲しいものである。
アニメ化されているので、アニメを見ればいいだけの話だが、実際に見た風景の中に自分が入り込めると、何だかワクワク感が違うではないか。それは、阿部欽也の本をいくら読んでいても、地球の歩き方を図書館で借りてきて眺めていても、わからない感覚である。現地に行って感じる空気感というやつだろうか。
というわけで、Bryggenに来た。
ワクワクもワクワク、超ワクワクである。
なぜならこのBryggen、中世の時代の姿を残すとされているからである。
wikipedia大先生によると、ヨーロッパにおける中世とは、5-15世紀とされる。西ローマ帝国の滅亡(476年)から東ローマ帝国の滅亡までの期間(1453年)あたりの期間である。日本では、中世が11-16世紀頃とされるのと比較すると、時期と期間にだいぶズレがあるのは面白いところである。
Bryggenの説明に関しては、世界遺産認定をしているunescoの説明が正確だと思うので、リンクを貼っておこう。
これによると、Bergenが貿易の中心都市として興ったのは12世紀ごろ。そして、1350年代には、ハンザ同盟(Hanseatic League)の外地商館が置かれる。
ハンザ同盟(12-17世紀)と言えば、ドイツのリューベックを中心とした緩やかな経済的都市同盟(Leagueは集団という意味合いが強い言葉)である。遠隔地貿易の共通利益を守り、商圏を拡大するための同盟で、14世紀にはデンマークとも戦争したこともあるほどの巨大な経済圏を形成した(世界史の窓ハンザ同盟参照)。
このハンザ同盟は、4つの外地商館を置いた。ロンドン、ブリュージュ、ノヴゴロド、そしてベルゲンである。この4つの都市の中で唯一、数百年も前の当時の姿を残しているのが、BergenのこのBryggenと呼ばれる倉庫群(地区?)である。何だか、そう聞くと凄い気がしてくる。
さらに、unescoの記述を読んでいると、ハンザ同盟はノルウェー北部のfishstock(タラやニシンなどの干し魚)の交易特権を獲得していたらしい。つまり、Bryggenにはヨーロッパにおける鰊御殿的な側面もあるのではないかと私は思う。
ヨーロッパにおけるfishstockの重要性は、『魚で始まる世界史(↓)』を読んでもらえるとよくわかる。キリスト教の宗教的な理由で、獣肉を食べられない日(fishdayなどと呼ばれ、金曜日に魚を食べる)があったので、魚の需要はとても高かったのだ。
この本は超面白い。いや、マジで。
という感じで、ほへ〜と思いながら、Bryggenを歩くと楽しいのではないかと思う。
まあ、私はそんな細かい背景知識など欠片も持たず、頭の中空っぽにして、「中世さいこー!」と思いながら、雰囲気で歩いた。別に背景知識なんてなくても、普通に楽しい。めっちゃ楽しい。ここまでうんちくを延々と垂れ流しておいて、「考えるより感じろ」派のう〜しま〜です。はい。
unescoのホームページでも説明されている通り、Bryggenは木造の倉庫群である。なので、陸側(湾の奥側)からBryggenに向かう途中で見られる同じ形の建造物はBryggenではないらしい。でも、装飾がおしゃれでカッコいいので、はあ〜と口を開けて見ることをお勧めする。ただ、いるかいないか知らないけど、スリには気をつけて。
ちなみに当時はBryggenが何かもわかっていなかったので、どこからどこまでBryggenかなんて考えもしなかった。「Bergenの現地語がBryggenなのかな〜」なんて呑気に思っていた。歴史地区が観光地だと書いてあったから行っただけである。遠くから見ても、明らかに目立っていたし。
ここからがBryggenである。
近づいてみよう。
Bryggenの表通りの建物には、ポコポコと穴(トンネル?)が空いている。元々が倉庫群らしいので、港から直線に伸びた通路があり、この穴から通路が続いている。
中に入るとこの写真のような通路が奥まで続いている。奥までは、そんなに長くはないけどね。
下を見ると、地面には石畳のように木が敷き詰められている。石畳はよく見るけど、木を敷き詰めているのはなぜなんだろうか。面白い。
上を見ると、建物の上の部分がせり出し、アーケードのようになっている。建物の上の階も通路になっている。2階部分や3階部分に扉があって、どうやって使うのかわからないのも不思議だ。
趣ある建物に、自転車が置いてあるのが、ちょっと好き。
現代とうまく交わっている感じがする。
楽しかった。
機会があれば是非是非行っていただければ、と思う。
何度でも言うが、ノルウェーはマジでモノが高いから気をつけてほしい。
続く。