奈良県安堵町の廃棄物処理補助金問題、不起訴「不当」 検察審査会に申し立て 住民訴訟「違法」判決受け
住民が不起訴不当を申し立てた奈良検察審査会がある奈良地裁=2023年12月、奈良市登大路町
奈良県安堵町が町同和地区産業廃棄物処理組合に交付した廃棄物処理の補助金を巡る問題で、町住民が町職員を背任の疑いで告発し、奈良地検が昨年3月、不起訴としたことに対し、同住民が今月1日、これを不当として奈良検察審査会に審査を申し立てた。同住民が告発と並行して町を相手取り奈良地裁に起こしていた住民訴訟に対し、今年1月、町の補助金支出を違法と認める判決があり、再捜査を求めることにした。
審査申し立て書によると、町長から補助金支出の権限を委ねられた交付申請の受理担当者は、組合名義の補助金交付申請に対し、組合に廃棄物を排出・処理した事実がないのに申請者の利益を図る目的で任務に背いて、2020年9月から2021年4月まで毎月27万900円ずつ、合計216万7200円を組合名義の口座に振り込んで、町に損害を与えた疑いがあるという。
町住民の池田忠春さんが西和署に町職員を告発したのは2022年11月。告発状では背任が疑われる担当職員について不詳としたが、池田さんが地検から受け取った処分通知書では5人を特定した上で不起訴を決定していた。後日受け取った処分理由告知書によると、不起訴理由は嫌疑不十分だった。
1月9日にあった住民訴訟の判決は、組合による廃棄物排出・処理の事実は確認できないとした上で、担当課が調査、確認せず漫然と補助金を支出したことは違法とし、町に対し、指揮監督の義務を負う西本安博町長個人への損害賠償請求を命じた。町は控訴せず1月30日、判決が確定した。しかし、組合のこの数年の活動実態や補助金の交付申請をした人物、交付された補助金の使途は裁判を経ても解明に至っていない。
池田さんは「本当に罪に問われなければならないのは、補助金を不正に申請し受け取っていた人物」とし、背任の捜査を入り口に問題の全容が解明されることを期待している。
町同和地区産業廃棄物処理組合は、合成皮革などの廃棄物を排出する靴工場などの町内事業者が排出物の収集・運搬を専門業者に委託するため、1989年に設立した。一方、町は同年、同和対策支援事業として産業廃棄物排出業者補助金交付要綱を定め、組合員が廃棄物の処理を業者に委託するための経費の一部を補助してきた。
池田さんが2021年4月に組合長から受け取ったという手紙によると、靴工場を経営していた同組合長は2017年度以降、靴製造の廃棄物を排出しておらず、組合長の職務も行っていないとし、町に対し補助金も申請していないという。