「ルールだから窓閉めて」天皇来県で沿道に
警察官、法的根拠・理由説明なし
先月の天皇・皇后来県で2人を乗せた車が奈良市の市街地を通過する際、沿道警備に当たっていた警察官が「ルールだから」と言って、ビル上階の市民に窓を閉めるよう求める場面に遭遇した。理由の説明はなく、記者が「何のルールか」と尋ねたが返事はなかった。県警と警察庁に確認したところ、そうした「ルール」は存在しなかった。法律を根拠に権力を行使する公務員は、市民に対し丁寧に説明する義務があるはずだ。特に皇室の警備にかかわって説明をおざなりにすれば、国民の間に不要な意識を広めることになりかねない。
過去の天皇来県でも奈良市の市街地で似たようなことがあった。1人の市民はビルの上階にいたところ、沿道警備に当たっていた警察官から窓から見ないで下に下りて迎えてほしいと求められた。もう1人の市民は同様の体験をした知人から話を聞き、「上から見下ろすことが失礼に当たるからなのか」などと理由を推測した。
県広報広聴課によると、今回の来県は平城遷都1300年記念祝典への出席などが目的で、10月7~10日の4日間滞在した。県警は期間中、訪問先への移動のコースとなる奈良市内の大宮通りなどに多数の警察官を配置した。
記者が当該の場面に遭遇したのは8日午後のこと。この日、天皇・皇后は平城宮跡の大極殿で開かれた記念祝典や市内ホテルでの祝賀会に出席、午後は法華寺を訪問したあと、鹿の角きりを見学した。記者は近鉄奈良駅近くのビルの3階に居た。2人を乗せた車の通過時刻を前に警察官が訪ねてきて、「ルールですから」と言って開いていた窓を自ら閉めた。
県警に「ルール」の正式名称や窓を閉める目的について問い合わせた。県警警備2課の松浦克仁次席によると、県警として沿道の警備に当たり、ビルの窓を閉めて回れというような指示は出していないという。ただ、取材を受けて調査したところ、現場の警察官の判断で市民に窓を閉めるよう求めたケースは2件確認された。物が落ちては危険だからと気を利かして行ったものだという。「ルールだから」との説明については確認できなかったとした。2件はいずれも他府県警からの応援の警察官によるものだった。
警察庁に対しても、天皇の地方訪問時の警備方針として、ビルの窓を閉めさせる、ビルの上からの見物をさせないといった指示を、各都道府県警にしているのか問い合わせた。同庁広報室は「警察庁として、そのような指導はしていない」と否定した。
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