奈良市の標準財政規模に対する「塩漬け土地」の簿価の割合が、土地開発公社を設立している全国38中核市で2番目に高いことが、「ニュース奈良の声」の調べで分かった。総務省が先月公表した土地開発公社の全国調査(2009年度)の結果から算出した。中核市は知事から大きな権限を移譲されているが、奈良市では歴代市政から引き継いだ不良資産がお荷物となり、財政面で独自施策の推進を困難にしている。
保有地簿価(億円)
(09年度総務省調査) |
柏市 |
200 |
奈良市 |
202 |
姫路市 |
239 |
尼崎市 |
171 |
高松市 |
154 |
前橋市 |
104 |
富山市 |
149 |
川越市 |
89 |
和歌山市 |
105 |
金沢市 |
127 |
東大阪市 |
123 |
奈良市土地開発公社は、銀行の融資を受けて214億7100万円分の土地を市内各地に抱えているが、そのうち91%は取得後10年以上が経過しながら何の用途もなく、金利を浪費している。市は今後、こうした用途の決まっていない土地を公社から買い戻すが、負債の全額はすべて市民の財布である「一般会計」で返済することになる。
常軌を逸したものとして、進入路のない市西部の山林、土地区画整理の換地をめぐる裁判で市が敗訴した後に買い取ったまま放置しているJR奈良駅前の土地、市議経由で買った目的不明な土地がある。また、宙に浮いた平城宮跡の工場の移転先用地をめぐっては、県や企業にも責任の一部はあるものの、異常な高値で用地を先行取得してきた当時の市政の責任が指摘されている。
「ニュース奈良の声」は、取得後5年以上が経過したいわゆる公社「塩漬け土地」の価格に金利などを上乗せした簿価が、税と地方交付税とで構成する標準財政規模(08年度)のどの程度の割合になるのかを算出。その結果、最も比率が高かったのは千葉県柏市の28.9%、次いで奈良市の27.7%だった。ただ、柏市は奈良市より財政力が高いうえ、外郭団体の負債を含む将来負担の重さを示す財政健全化法の将来負担比率が110%にとどまっている。奈良市の同比率はその2倍近い214%に上る。このため実質的には、奈良市土地開発公社が財政に及ぼす影響の方がより深刻といえる。
土地開発公社が抱える不良資産は全国的な課題。総務省の今回の調査によると、全国の府県や市町村が設立した同公社は1021あり、簿価総額は3兆2350億円。その8割の土地は取得後5年以上が経過している。長期保有地の簿価総額は横浜市土地開発公社の1596億円が最大で、府県の公社では愛知県の607億円、兵庫県の600億円が大きい。
同省によると、全国の土地開発公社の保有地簿価のピークは1996年の9兆1432億円。国は経営健全化支援や早期解散を誘導するための第三セクター改革債などを講じている。しかし財政に損害を与えた責任を取る者はほとんどおらず、先送りされることが特徴。また、額面の簿価が減少しても、遊休地の所有が公社から自治体に移転しただたけで、無駄が解消されたわけではないことは、大阪府東大阪市の包括外部監査などで判明している。(浅野詠子)