奈良市の公園 閉鎖12年も、用途変更できず
住民のマンション反対で、市が買い上げ造成
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入り口が施錠されたままの下三条町東街区公園=奈良市下三条町 |
マンション建設に反対する地元住民の要望を受け入れ、奈良市が多額の市費を投じて用地を買い上げて造成した同市下三条町の公園が、遊具の放火事件などを機に12年間、閉鎖されたまま、何の利用もされていないことが28日、「ニュース奈良の声」の取材で分かった。国庫補助を受けた都市公園で、市は「都市公園法の規定により、用途を容易に変更できない」として、転用や売却に二の足を踏んでいる。
JR奈良駅から東へ約400メートルの地点にある下三条町東街区公園。市公園緑地課によると、元はマンション建設計画が浮上した民有地で、これに反対する近隣自治会などから「用地を買い上げてほしい」との陳情があり、1991年、1051平方メートルを買収した。そこに公園を造成し、94年に開設。ところが遊具が壊されたり、放火されるなど非行少年のたまり場になり、99年、市と近隣自治会は施錠をすることで合意。数千万円をかけて設置した遊具も撤去し、事実上、遊休地になっている。
「現状でいいとは思わない」と同課の花木幸治課長は話す。一方、都市公園を廃止するには、都市公園法の規定により、新たに公園を確保するなど、厳しい条件が付いている。市内には、市土地開発公社が保有する広大な遊休地があるが、「代替の公園は、現地の近くに造らないと、国庫補助の適用を受けたことからも逸脱するのでは」としている。
長年にわたる公園閉鎖に対し、会計検査院などから国庫補助金の返納を求める勧告は受けていないという。同公園は駅に近く、都市計画法の風致地区や市奈良町都市景観形成地区ではない。あえて民間の開発を止め、市有地にする合理性がどこまであったのか不透明だ。また、4代前の西田栄三市長(故人)の時代の判断がもとで生じた事実上の遊休地をめぐり、いまだに都市公園法の拘束を受けて公園以外の活用や土地の競売が困難なことも、今後の課題になりそうだ。
公園の施錠を解いて開放してほしいという市民の要望は来ていないという。買収した当時の価格を明らかにするよう求めたが「情報公開請求してほしい」と花木課長は話した。(浅野詠子)
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