奈良市巨額借金の原因、市民が分析 白書に
奈良市の財政はなぜ悪くなったのか―。市の財政について学びたいと集まった市民が勉強会を重ね、その原因を分析、冊子「市民がつくった奈良市の財政白書―巨額債務の原因は」にまとめた。
冊子を作ったのは「奈良市財政を楽しく学ぶ会」(加門進二郎代表、15人)。
奈良市の一般会計、特別会計、企業会計、外郭団体を合わせた全会計の2011年度末の借入金は約3130億円に上る。また、市の収入に対する借金の割合を示す将来負担比率は、同年度決算で204%。全国の中核市41市中最下位。地方公共団体の財政が健全かどうかを知る目安でも、状況は厳しい。
白書は市の財政について、1989(平成元)年度から2009(同21)年度までの変化を見るとともに、全国の規模の似た地方公共団体と比較した。
分析に当たって注目したのは、市の資産と負債のバランス。借金が増えたのなら、借金をしてつくった「はこもの」などの資産も増えているはずと、市民1人当たりの資産から負債を引いた額を算出し、全国の中核市と比較した。ところが、奈良市は中核市平均より35万円少なかった。市はこれまで、借金が膨らんだ原因について、「はこもの」の建設を挙げてきたが、建設事業などの投資的経費を全国の中核市と比較しても特別、多くなかった。
財政悪化の原因として考えたのは人件費と物件費。両費用を合わせた額は1989年度から2009年度にかけ1300億円以上増えている。人件費については、直営事業が多いことが背景にあるとみた。一方、物件費については、直営事業が多いにもかかわらず、市の業務を外郭団体や民間会社に委託する委託費が半分を占めており、疑問点として挙げた。多い人件費と物件費に見合う住民サービスが提供されているのか、市は市民に説明する義務があるとする。
学ぶ会は「市民の皆さんと事実を共有し、奈良市の未来をよりよくするための解決方法を探りたい。白書をご一読いただき、意見をうかがいたい」としている。白書は市や市議にも提供した。
白書はA4判、68ページ、頒価200円。問い合わせは加門代表、ファクス0742-48-2030、電子メールkamon260@m5.kcn.ne.jp