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奈良公園の催しに制限 管理の県が許可基準 「観光客の苦情増えた」理由に
奈良市を代表する観光地、奈良公園(名勝)での催しを制限する許可基準を、公園を管理する奈良県が設けていたことが分かった。観光客誘致につながるものなど、奈良公園の特質に見合った催しに限って使用を認めるというもの。催しに対する観光客からの苦情が増えたのが理由としている。 奈良公園は広さ約660ヘクタールの県立都市公園。県によると年間約1300万人が訪れる。 これまで、公園の使用許可は県の県立都市公園条例に基づき行われていた。同条例3条は「公園において、競技会、集会、展示会、博覧会、興行その他これらに類する催しを行おうとする者は、知事の許可を受けなければならない」としている。催しを限定する規則などはなかった。 「奈良公園を使用・占用する場合における許可基準」は、この3条を補足するものとの位置付けで、昨年5月に施行された。同許可基準は、奈良公園の特質として、県の観光施策の推進上、重要な資産である▽その魅力を求めて観光客が多く訪れる▽都市公園法で掲げる都市公園であり、県民憩いの場である▽歴史的・文化的遺産、文化施設、店舗、住居地域が近接している―を挙げ、これらに見合った催しに限定して公園の使用を許可するとしている。 具体的には、基本基準の、公園利用者を排除しない▽公共の福祉、公序良俗に反しない▽政治活動、宗教活動ではない▽営利が主目的ではない―など7つ全てを満たし、かつ、特別基準のいずれかに該当するものでなければならないとしている。特別基準は、オフシーズン時の観光客の誘致、宿泊の促進につながるもの▽観光客へのもてなしの向上、リピーター確保につながるもの▽県の施策に合致し、県が実施あるいは積極的に支援しているもの―などのほかに、知事が特に認める場合というのを合わせて7つある。 県奈良公園室によると、これまで催しは何でもありだったという。学生のロックコンサートや踊りの披露など、貸し公園のような要素があった。観光客から見たくもない、聞きたくもないなどの苦情が多くなり、一つの行事に対し10~20件に上ることもあるという。いろんな人がいろんな行為の許可を求めてくるため「野放しにはできない」として、使用を許可する際の基準を整理したとする。 条例改正せず 県「裁量の範囲内」条例を上回る使用制限になるが、県議会の議決が必要な条例改正による方法をとらなかった。同室は「県の裁量の範囲内であり、当然のことを示しているだけ。これまでの反省、寄せられた利用者の意見、苦情を踏まえ、観光客の視点に立って設けた」とした。同許可基準は求めれば写しの交付を受けられるが、他の条例、規則のように県のホームページでは公開されていない。 最近許可した催しには、4月21日のアースデイ奈良2013と同27日の連合奈良などによるメーデー奈良地方大会がある。アースデイは特別基準の「県の施策に合致するもの」に、メーデーは「知事が特に認めるもの」にそれぞれ該当したという。アースデイは環境を考える催しで県が共催だった。同実行委員会によると、許可を受けるに当たって脱原発を前面に出さないよう注文があったという。許可基準施行前の前回開催時にはなかったことという。 一方、メーデーについて県奈良公園室は、政治活動に当たらないとした。労働者の祭典であり、売店やアトラクションもあり、家族連れで楽しめるものであるためとする。1965年以来、許可してきた経緯があるともしたが、当日は来賓の民主党奈良県連の前川清成代表が夏の参院選に向け決意と連帯を表明する場面もあった。荒井正吾知事も来賓で出席した。この日はゴールデンウイーク初日で公園周辺は観光客でにぎわっていた。 県は奈良公園について、平城宮跡、県営プール跡地とともに一体的に整備し、沿道の空間ににぎわいを創出するという「大宮通りプロジェクト」の拠点の一つに位置付けている。昨年2月、「世界に誇れる公園」を目指すとして、奈良公園基本戦略を発表した。 |
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