20240730

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志村菓生堂の動物ヨーチ

動物ヨーチが好きだ。それは、サクサクのビスケットの片面に甘くてカラフルなヨーチ加工を施したお菓子で、昔からある。しかし、最近気がついた事実なのだが、全ての動物ヨーチが美味しい訳ではなかった。

そもそも《動物ヨーチ》という名称は特定のメーカーが商標登録しているものではないので、様々なメーカーで製造され、様々なパッケージで流通していることはなんとなく分かっていたのだが、「この動物ヨーチは美味しいな」と感じてパッケージの製造者を確認すると、いつも同じである事に気がついた。

埼玉県志木市にある《志村菓生堂》である。

ビスケット部分はほどよくサックサクで、ヨーチ加工された部分の甘さやほろりと砕ける砂糖の粉感も絶妙で、飽きずにいくらでも食べれてしまう。志村菓生堂以外の動物ヨーチは、ビスケット部分やヨーチ加工部分が硬過ぎだったり、全体的に派手に甘かったり逆に素朴過ぎたりとバランスが良くないように感じてしまう。

志村菓生堂の動物ヨーチの愛すべき点は味や食感だけではない。

何といっても形状の不確かさが素晴らしい。動物の形をしたお菓子であるはずなのだが、形状が不明瞭過ぎて何の形か分からないものが多くて、ひとつひとつが想像力を刺激してくる。子供にとってこれはとても重要な事なのではないかと思う。

流通している動物ヨーチの中にはヨーチ加工の上にさらに精細な印刷をして、明確にパンダやトラやウサギなどの可愛らしい動物を表現しているものもあるが、そこに想像力を働かせる余地は全く無く実につまらない。製造技術的にはよく出来ているし可愛く仕上がっているとは思うが、つまらない。

その点、志村菓生堂の動物ヨーチは、座り込んだアルパカか? 走るぬりかべか? ハマグリか? 瓢箪か? という感じで、もはや動物なのか何なのか分からないものも多くて想像力しか働かない状況に追い込まれてしまう。ロールシャッハテストのように心理学の研究に応用したり、脳の発育を促すある種の教材としても使えそうなほどだ。筋肉と同じように脳もまた、使わないと発達し得ないものである以上、想像力を刺激することは重要だ。

美味しい動物ヨーチは志村菓生堂の手になるものだという事実に気がついてしまった以上、今後は動物ヨーチを購入する際には製造者を確認してから買うことになるだろう。志村菓生堂さんにはこれからも洗練されていない形状の美味しい動物ヨーチを世の中に送り出し続けていってもらいたい。

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