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伝説の名騎手ピゴット氏が死去、英ダービーを史上最多の9回優勝
プロフィール
競馬発祥の地である英国の三冠体系を範とする日本の競馬界にとって、その2000ギニーとダービー、セントレジャーの3レースは別格の響きを持って伝わっているが、それら全てを50年余り昔に制し、今なお最新の記録として保持しているニジンスキーはまさに伝説上の名馬。種牡馬として日本にも多大な影響を与えた。
英国でクラシック三冠を成し遂げるニジンスキーだが、その生まれは名馬産家のE.P.テイラー氏がカナダに所有する名門ウインドフィールズファームだった。父は不世出の名馬ノーザンダンサー、母もカナディアンオークス馬のフレーミングページで、カナダ最大のレースであるクイーンズプレート勝ちの両親ともどもテイラー氏の生産という良血馬は、同ファーム主催の当歳セールでカナダ史上最高(当時)の8万4000ドルで取り引きされた。
アメリカ人企業家のC.W.エンゲルハード氏がアイルランドのV.オブライエン調教師をセールに派遣して購買した関係で、ニジンスキーは北米のダートではなく欧州の芝が主戦場となる。このめぐり合わせがなければ、あるいは、偉業はなし得なかったかもしれない。ニジンスキーはレースのたびにイレ込んで発汗するような難しい気性だったが、オブライエン師の慎重な育成が実を結んで素質を開花。2歳シーズンをデビューからデューハーストSまで5連勝で終え、明け3歳は地元でひと叩きしてから英クラシック戦線に臨んだ。
一冠目の2000ギニーは抜け出してから鞍上のL.ピゴットが後ろとの差を確認する余裕で2馬身半差の完勝。続くダービーも先頭に並んでステッキを受けると一瞬で突き放し、再び2馬身半差と難なく二冠を達成する。さらに愛ダービーを馬なりで3馬身差の圧勝。キングジョージ6世&クイーンエリザベスSでは前年の英ダービー馬ブレイクニーらの古馬たちを相手に、ピゴットが幾度となく振り返りながら2馬身差をキープし、無傷の10連勝で欧州最強の座についた。
ところが、束の間の夏休みに入ったニジンスキーは白癬症(カビによって生じる水虫の一種)に感染してしまう。症状は重く全身の毛が抜け落ちるような状態になり、秋への調整も遅れた。オブライエン師はセントレジャーに乗り気ではなかったが、エンゲルハード氏の強い意向により参戦が決定。すると、ニジンスキーは追ったところなく1馬身差で楽勝し、1935年のバーラム以来となる英クラシック三冠を達成した。
しかし、偉業を成し遂げた一方で大きな代償を払う結果となる。ニジンスキーは次戦で凱旋門賞を狙うも体重が30ポンド(約13.5kg)ほど減少。レースでは後方から直線半ばで先頭をうかがうもゴール前で外へモタれ、ササフラをアタマひとつ捕らえ切れず痛恨の初黒星を喫した。騎乗したピゴットは批判の矢面に立たされたが、ニジンスキーは巻き返しを図った英チャンピオンSでも精彩を欠き、2着に敗れて現役を退くことになった。
いささか淋しい引き際となったが、50年が過ぎた現在までニジンスキーに続く三冠馬は誕生していない。この間、ナシュワン(1989年)、シーザスターズ(2009年)、キャメロット(2012年)が英2000ギニーとダービーの双方を制したものの、三冠挑戦を選択したのはキャメロットのみ。競馬のスピード化、距離別のスペシャリスト化が進む現在は価値観も変化し、三冠達成の環境は以前にも増して険しくなっている。
引退後のニジンスキーは544万ドルの巨額シンジケートとともに種牡馬入りし、ゴールデンフリースやシャーラスタニ、ラムタラが英ダービー、ファーディナンドはケンタッキーダービーを制すなど第二のキャリアでも歴史的な成功を収めた。日本ではマルゼンスキーが父同様に競走馬としても種牡馬としても一時代を築き、他にもニジンスキーの血を引く多くの産駒が輸入されて計り知れない影響を与えた。
生年 | 1967 |
---|---|
性別 | 牡 |
毛色 | 鹿毛 |
父 | Northern Dancer |
母 | Flaming Page |
母父 | Bull Page |
調教師 | V.オブライエン |
生産者 | Edward P.Taylor |
馬主 | C. W. Engelhard |
通算成績 | 13戦11勝[11-2-0-0] |
開催日 | 場所 | レース名 | 動画 | 着順 | 騎手 | トラック | 距離 | 馬場状態 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1970/10/17 | ニューマーケット | 英チャンピオンステークス | 2 | L.ピゴット | 芝 | 2000 | ||
1970/10/04 | ロンシャン | 凱旋門賞 | 2 | L.ピゴット | 芝 | 2400 | ||
1970/09/12 | ドンカスター | 英セントレジャー | 1 | L.ピゴット | 芝 | 2920 | ||
1970/07/25 | アスコット | キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス | 1 | L.ピゴット | 芝 | 2400 | ||
1970/06/27 | カラ | 愛ダービー | 1 | L.ウォード | 芝 | 2400 | ||
1970/06/03 | エプソム | 英ダービー | 1 | L.ピゴット | 芝 | 2400 | ||
1970/04/29 | ニューマーケット | 英2000ギニー | 1 | L.ピゴット | 芝 | 1600 | ||
1970/04/04 | カラ | グラッドネスステークス | 1 | L.ウォード | 芝 | 1400 | ||
1969/10/17 | ニューマーケット | デューハーストステークス | 1 | L.ピゴット | 芝 | 1400 | ||
1969/09/27 | カラ | ベレスフォードステークス | 1 | L.ウォード | 芝 | 1600 | ||
1969/08/30 | カラ | アングルシーステークス | 1 | L.ウォード | 芝 | 1200 | ||
1969/08/16 | カラ | レイルウェイステークス | 1 | L.ウォード | 芝 | 1200 | ||
1969/07/12 | カラ | 未勝利戦 | 1 | L.ウォード | 芝 | 1200 |
距離 | 1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 出走回数 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
~1400m | 5 | 0 | 0 | 0 | 5 | 100% | 100% | 100% |
1401m~1800m | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 | 100% | 100% | 100% |
1801m~2100m | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0% | 100% | 100% |
2101m~ | 4 | 1 | 0 | 0 | 5 | 80% | 100% | 100% |
馬場状態 | 1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 出走回数 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
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良馬場 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0% | 0% | 0% |
稍重馬場 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0% | 0% | 0% |
重馬場 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0% | 0% | 0% |
不良馬場 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0% | 0% | 0% |