一カ月に及ぶ月照との逃避行の果てに、錦江湾で入水
するものの、自分だけ命を取り留めることとなった西郷。
月照を死なせてしまった自分の甘さと決別する
ため、西郷は“悪人”として生きる決意をします。
一方、長州では松蔭の暴走がとまりません。
京へ上り、間部詮勝を討とうと企てたり、藩主である毛利敬親を
京都に拉致する計画を立てたりと、どんどん過激化が進んだため、
しまいには再び野山獄に入牢させられる羽目になってしまいます。
そんな松蔭を、作者は“こまったちゃん”と称していますが、実際
に同時代の長州人の多くがそう感じていたのではないでしょうか。
本書にも出てくる松蔭の有名な言葉〈僕は忠義をする積り 諸君は功業をなす積り〉に
は、理想だけを真摯に追求する松蔭の無私の姿勢がよく表れている反面、独善に陥り
かねない危うさも感じさせます(無論それゆえに維新の原動力となったといえますが)。
『風雲児たち』では、そんな松蔭を“無垢な
奇人”として巧く形象化していると思います。
あと、松蔭が自称する“二十一回猛士”の意味を本書
ではじめて知りました。なんというか、お茶目ですねw
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風雲児たち 幕末編 17巻 Kindle版
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密勅降下を企てた犯人捜しを始めた幕府大老・井伊直弼。薩摩の西郷にも幕府に手が。一方、長州藩では吉田松陰が…
- 言語日本語
- 出版社リイド社
- 発売日2010/7/28
- ファイルサイズ86397 KB
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登録情報
- ASIN : B00GN6R1V6
- 出版社 : リイド社 (2010/7/28)
- 発売日 : 2010/7/28
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 86397 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効になっていません。
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : 有効になっていません
- 本の長さ : 220ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 109,389位Amazonマンガ
- カスタマーレビュー:
著者について
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まんが家、まんが研究家。1947年、京都生まれ。67年、「別冊りぼん」でデビュー。70年から「週刊少年マガジン」に連載した『ホモホモ7』で一世を風靡、のちのまんが界に大きな影響を与える。2004年、『風雲児たち』で第八回手塚治虫文化賞特別賞を受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『まんが学特講 目からウロコの戦後まんが史』(ISBN-10:4046214465)が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2010年7月29日に日本でレビュー済み
追われる西郷と月照。
そして、入獄した松陰。
懊悩、苦悩が中心に描かれる巻です。
井伊直弼の苦悩も。
描かれている松陰のアップは漫画顔ながら、苦悩に満ちたところをよく表現していると感じます。
松陰の内に持つエネルギーの凄まじさですね。
多くの志士に影響を与えたのですから、これくらいは当然か・・・。
帯で、絶賛辞を贈っているのは、現代マンガ図書館館長の内記稔夫さんです。
そして、入獄した松陰。
懊悩、苦悩が中心に描かれる巻です。
井伊直弼の苦悩も。
描かれている松陰のアップは漫画顔ながら、苦悩に満ちたところをよく表現していると感じます。
松陰の内に持つエネルギーの凄まじさですね。
多くの志士に影響を与えたのですから、これくらいは当然か・・・。
帯で、絶賛辞を贈っているのは、現代マンガ図書館館長の内記稔夫さんです。
2010年9月4日に日本でレビュー済み
ここにきて、ついに、明治維新の火蓋が切られました。
吉田松陰が明治維新の口火を切ったときと、西郷隆盛が入水した時が、数日しか違わなかったことを初めて知って、歴史の動きを実感しました。
確かに、現在から見れば、吉田松陰は、ずいぶん突っ走っているように見えるかもしれませんが、それを、後の大戦の日本軍と比較するのは違うかなと思います。
もし、吉田松陰が大急ぎで口火を切らなければ、幕府の無策の結果、明治維新は間に合わなかったかもしれません。きっと吉田松陰の目には、はっきりとしたビジョンが見えていたのだと思います。決して猪突猛進ではなかったのではないかと、僕は思います。
これから、いよいよ維新の英傑達の活躍が始まるのだけど、それを堪能できるのに、まだまだ待たなければ行けないと思うと、やきもきします。
それに、この漫画が完結するまで、日本は持つのでしょうか?
吉田松陰が明治維新の口火を切ったときと、西郷隆盛が入水した時が、数日しか違わなかったことを初めて知って、歴史の動きを実感しました。
確かに、現在から見れば、吉田松陰は、ずいぶん突っ走っているように見えるかもしれませんが、それを、後の大戦の日本軍と比較するのは違うかなと思います。
もし、吉田松陰が大急ぎで口火を切らなければ、幕府の無策の結果、明治維新は間に合わなかったかもしれません。きっと吉田松陰の目には、はっきりとしたビジョンが見えていたのだと思います。決して猪突猛進ではなかったのではないかと、僕は思います。
これから、いよいよ維新の英傑達の活躍が始まるのだけど、それを堪能できるのに、まだまだ待たなければ行けないと思うと、やきもきします。
それに、この漫画が完結するまで、日本は持つのでしょうか?
2018年3月22日に日本でレビュー済み
2018年再読。
安政の大獄が始まり西郷隆盛が追われていくというくだりから、井伊直弼の策略のあたりが描かれているが、その途中に挟み込まれるようになっている(巻の編成上そうなってしまっているだけとは思うけれど)吉田松陰の話が圧巻だ。
自らを「狂人」と呼んだ吉田松陰が最後(?)に人々を動かしていくあたりの話なのだけれど、このくだりを読んで思ったのが『風雲児たち幕末編6巻』を読んだ時とほとんど変わらない。吉田松陰という人が生涯変わらない思想と行動力を持った人だったと言ってしまえばそれまでだけれど、それだけでない何かを持っている人だったからこそ、作者もまたこの作品の中でとりわけ何度も何度も取り上げている人物の一人なのだろう。
相変わらず私の知る吉田松陰は、この『風雲児たち』と『世に棲む日々』くらいからの印象でしかないけれども、もっともっと知りたいと思わせられる人だ。
そして、西郷隆盛である。奇しくも2018年のNHK大河ドラマは『西郷どん』である。ドラマで描かれている西郷はこれまでのパブリック・イメージと少々違う感もなきにしもあらずだが、この『風雲児たち』ではそのあたりがうまく描かれているように思う。また、西郷隆盛のことも含めて幕末は島津藩抜きには語ることができないのだということを改めて知らされているようにも思う。そしてその原動力となっているのこそ関ヶ原の合戦だったのだろう。だからこの『風雲児たち』はそこから描いていかなければならなかったのだということを、今更のように理解しているのだった。
安政の大獄が始まり西郷隆盛が追われていくというくだりから、井伊直弼の策略のあたりが描かれているが、その途中に挟み込まれるようになっている(巻の編成上そうなってしまっているだけとは思うけれど)吉田松陰の話が圧巻だ。
自らを「狂人」と呼んだ吉田松陰が最後(?)に人々を動かしていくあたりの話なのだけれど、このくだりを読んで思ったのが『風雲児たち幕末編6巻』を読んだ時とほとんど変わらない。吉田松陰という人が生涯変わらない思想と行動力を持った人だったと言ってしまえばそれまでだけれど、それだけでない何かを持っている人だったからこそ、作者もまたこの作品の中でとりわけ何度も何度も取り上げている人物の一人なのだろう。
相変わらず私の知る吉田松陰は、この『風雲児たち』と『世に棲む日々』くらいからの印象でしかないけれども、もっともっと知りたいと思わせられる人だ。
そして、西郷隆盛である。奇しくも2018年のNHK大河ドラマは『西郷どん』である。ドラマで描かれている西郷はこれまでのパブリック・イメージと少々違う感もなきにしもあらずだが、この『風雲児たち』ではそのあたりがうまく描かれているように思う。また、西郷隆盛のことも含めて幕末は島津藩抜きには語ることができないのだということを改めて知らされているようにも思う。そしてその原動力となっているのこそ関ヶ原の合戦だったのだろう。だからこの『風雲児たち』はそこから描いていかなければならなかったのだということを、今更のように理解しているのだった。
2010年12月26日に日本でレビュー済み
幕末篇14巻から17巻までまとめ読みしました。まさに風雲急を告げています。ページを捲る指ももどかしい。
以前、野口武彦『 井伊直弼の首 』を読んだ時、桜田門外の変の際、血みどろの泥濘と化した現場で井伊家の家来たちが片づけに走り回っている最中、通りかかった紀州徳川家の登城行列が見て見ぬ振りをして通過する描写があり、強い印象を受けました。野口がそれをどう理由づけていたか確たる記憶はありませんが(書棚から探さなきゃいけないんで……)、私はそれを「武士の情け」として理解していました。しかし本シリーズをここまで読むと、やっぱり「自業自得」と見捨てたんだろうと思えます。作者が事件をどう描くか楽しみですし、こうなると映画『桜田門外ノ変』も観たくなりました。
しかし岩倉具視が影響力を強めてからの皇室の戦略、いやらしいですね〜。家茂が攘夷決行を約束させられ、下関砲撃事件にまで至る流れが、やっと腑に落ちました。間部詮勝に対する作者の評価は厳しいですね。
18巻 を買いに走らねば!
以前、野口武彦『 井伊直弼の首 』を読んだ時、桜田門外の変の際、血みどろの泥濘と化した現場で井伊家の家来たちが片づけに走り回っている最中、通りかかった紀州徳川家の登城行列が見て見ぬ振りをして通過する描写があり、強い印象を受けました。野口がそれをどう理由づけていたか確たる記憶はありませんが(書棚から探さなきゃいけないんで……)、私はそれを「武士の情け」として理解していました。しかし本シリーズをここまで読むと、やっぱり「自業自得」と見捨てたんだろうと思えます。作者が事件をどう描くか楽しみですし、こうなると映画『桜田門外ノ変』も観たくなりました。
しかし岩倉具視が影響力を強めてからの皇室の戦略、いやらしいですね〜。家茂が攘夷決行を約束させられ、下関砲撃事件にまで至る流れが、やっと腑に落ちました。間部詮勝に対する作者の評価は厳しいですね。
18巻 を買いに走らねば!
2010年9月7日に日本でレビュー済み
上の台詞は作中でも出てきますが、松陰(吉田寅次郎)の有名なことばで、「僕はまごころをもって国家に仕えるつもりである。君たちはただ手柄を立てたいだけである」という意味。
取りようによっては嫌味に聞こえてしまいそうな、こういうことをサラリと言える……ホントに心の清らかな人だったんですね…。
ということで、関ヶ原の戦いまで遡って明治維新を描いてきた歴史大河ギャグ漫画・その幕末編の17巻目。
本巻では幕府に追い詰められてゆく西郷と勤皇僧・月照の涙の入水も描かれますが、何といっても心打たれるのは松陰の慟哭。
松陰という人は「人の心は公共のものである。人の体は私物である。私物である自分の体を、世の中のために使う人は立派な人である」と言い切った人です。
今の価値観から見ると極端とも思えますが、ここまで無私な至純な心の持ち主だからこそ、周囲の人たちを動かし、日本近代化の導火線となったのでしょう。
その松陰の動向を中心に、彼を幕府に売り渡せば済むものを、何とかかばおうとする長州藩首脳部や、師匠をいさめるあまり何度破門を言い渡されても説得におもむく桂小五郎など、弾圧による重苦しさの中にもすがすがしいエピソードが語られます。
取りようによっては嫌味に聞こえてしまいそうな、こういうことをサラリと言える……ホントに心の清らかな人だったんですね…。
ということで、関ヶ原の戦いまで遡って明治維新を描いてきた歴史大河ギャグ漫画・その幕末編の17巻目。
本巻では幕府に追い詰められてゆく西郷と勤皇僧・月照の涙の入水も描かれますが、何といっても心打たれるのは松陰の慟哭。
松陰という人は「人の心は公共のものである。人の体は私物である。私物である自分の体を、世の中のために使う人は立派な人である」と言い切った人です。
今の価値観から見ると極端とも思えますが、ここまで無私な至純な心の持ち主だからこそ、周囲の人たちを動かし、日本近代化の導火線となったのでしょう。
その松陰の動向を中心に、彼を幕府に売り渡せば済むものを、何とかかばおうとする長州藩首脳部や、師匠をいさめるあまり何度破門を言い渡されても説得におもむく桂小五郎など、弾圧による重苦しさの中にもすがすがしいエピソードが語られます。