橋本大輝、逆転の勝算でつかんだ栄光 「世界に強さを知らしめたい」

山口史朗
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 最終種目の鉄棒を残し、1位と0・467点差の3位。それでも橋本大輝には勝算があった。

 「鉄棒は(自らの6種目の中で)一番Dスコア(演技難度)が高いのに一番ミスしない種目になっちゃっているんですよね」

 ライバルたちよりも難度の高い構成で、手放し技を次々と決めていく。14・933点。2選手を一気に抜き去り、19歳の新星が逆転の金メダルを奪った。

 2年前の年明け。まだ自分の底力を知らなかった千葉・市船橋高2年の橋本を「その気」にさせた言葉がある。

 目標を「高校生の全国大会3冠」と言っていた橋本に、日本代表の水鳥寿思監督が言った。

 「代表を狙ってほしい」

 橋本は驚いた。自らの可能性を知り、そこから化ける。元々、練習の虫。技の難度を一気に上げてその年の世界選手権に出場すると、2種目で決勝に進出。「僕の体操は世界でも評価される」と、さらに本気になった。

 3兄弟の末っ子。両親は兄弟げんかを止めなかった。「勝負の世界は厳しい。けんかに負けたら従わなければいけない」という教えの中で磨かれた負けず嫌いの心。強いものを見れば見るほど燃え上がる。

 今大会は24日の予選を1位で通過すると、「決勝では世界に僕の強さを知らしめたい」と言った。

 同じ大学2年で北京五輪に出場した内村航平は個人総合で銀メダルだった。「キング」と言われた男を上回るメダルを、成長途上でつかみ取った。(山口史朗)

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この記事を書いた人
山口史朗
スポーツ部|野球担当
専門・関心分野
野球全般、体操、競馬