31日に投開票される衆院選の投票率を上げるため、各自治体がさまざまな取り組みを進めている。特に投票率が低い若年層に働きかける試みが目立つ。高校に臨時の投票所を設けたり、ネットを活用したりして、若い世代と選挙の距離を縮めようと工夫を重ねている。(伊藤良渓、福田祥史)

高校回る移動投票所

 28日正午過ぎ、日立市の県立日立北高校。昼休みを告げる予鈴が鳴ると、昇降口前に設置された投票箱に、生徒が次々に票を入れていった。衆院選の期日前投票だ。

 日立市選挙管理委員会が今回初めて実施した「移動期日前投票所」。日替わりで投票所を設ける試みで、27日から市内8校を巡回している。

 友達と投票の列に並んだ上岡遥佳さん(18)は「思っていたより緊張した。一票が重く感じた」。テレビで候補者の政策アンケートを見て、自分の考え方に近い人を選び、投票したという。

 稲敷市の県立江戸崎総合高校では、25日の放課後、同窓会館の一室に臨時の期日前投票所が設けられた。

 開場と同時に訪れた大友美咲さんは、9月に18歳になったばかり。学校では花や野菜の栽培を学ぶ。農業政策や新型コロナウイルス対策に注目し、新聞などで候補者の主張を見比べてから投票に臨んだ。「国民の意見をまとめてくれる人を選ぶ大事な投票なので、すごく緊張した」

 こうした試みを学校も歓迎する。同校の後藤光彦校長は「(投票日の)日曜日はアルバイトをしている子も多いので、学校で投票できるのは意義がある」と話した。

「茨ひより」が発信

 総務省や県の抽出調査結果によると、2017年の前回衆院選では、全国の投票率は53・68%だった。世代別で最も低かったのは20代の33・85%。県内でも20代は29・31%で、全体の52・33%を大きく下回った。

 選挙権年齢は2016年から引き下げられ、18歳以上が投票できるようになった。同年の参院選では、県内の18~19歳の投票率は44・71%で、全体の50・91%より低かったものの、20~24歳の28・62%は大きく上回った。県選管の担当者は「当時は選挙権年齢の引き下げが大きな話題となり、投票率も押し上げられたのではないか」と話す。

 しかし18~19歳の投票率は、その後は低下傾向にあり、17年衆院選では35・58%(全体52・33%)、19年参院選では30・93%(同45・86%)で、いずれも全体より低かった。

 若い世代の投票率が低いと、政策が高齢者重視のものに偏りかねないとの指摘もある。少子化の影響で、有権者に占める若者の割合が低くなってきているうえ、若者の投票率が低い状態が続けば、その世代の声がさらに政治に届きにくくなる恐れがある。

 県選管は今回の衆院選で、若い世代に選挙への関心を持ってもらおうと、県の魅力を発信しているキャラクター「茨ひより」を起用した特設サイトを開設した。「だから、私は投票する」というキャッチコピーとともに、候補者情報や政見放送の日程が一覧できるデザインになっている。

 9月の知事選でも、茨ひよりが投票を呼びかけるCMを作り、SNSで展開した。このCMを見た人から「いかにも役所、というデザインでわかりづらい」という意見が寄せられ、今回は改善したという。

 茨ひよりの起用について県選管の担当者は「若者に広報する力に期待している。若者に政治を自分ごととして捉えてもらい、大切な一票を投じてほしい」と話す。

【動画】40秒でわかる!衆院選、投票ってどうやるの?

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