ロシア軍の侵攻が続くウクライナで、スポーツ選手たちが各地の大会で手にしたメダルを売りに出しています。収益を軍や病院などの活動にあてるためです。

 そのひとりが、昨夏の東京五輪の空手男子組手75キロ級で銅メダルを手にしたスタニスラフ・ホルナ選手(33)。買い手は日本人だと言います。

 いったいどんな思いだったのか。ホルナ選手の地元、ウクライナ西部のリビウで話を聞きました。

 刈り上げた頭に、一本線の前髪が揺れる。ウクライナ・コサック伝統の髪形は相変わらずだ。だが試合時の迫力は消え、気さくで柔らかい雰囲気が漂う。

 私の名前がローマ字で刷られた名刺を渡すと、眉毛がくっと上がって笑みがこぼれた。

 「ニシムラ! ケン・ニシムラの親戚?」

 東京五輪の日本代表、西村拳選手のことだ。「残念ながら、違います」と答えた。

 ホルナ選手は笑顔のまま、東京五輪の予選、西村選手との勝負を振り返った。

 2021年8月6日、日本武道館。ホルナ選手の初戦の相手が西村選手だった。先取したホルナ選手を、西村選手が追いかける展開になった。

 「西村はすばらしい選手。難しい試合だった。勝てたものの、ギリギリだった」

 そう振り返った後に出てきたのは、この大会、あと一歩のところでメダルに届かなかった西村選手への言葉だった。

 「西村はすごく悔しかったと思う。涙も流したんじゃないかな。私も何度も味わってきたから。でも彼がすばらしい選手だということに、変わりはないんだ」

 「あなたにとっては、どんな大会でしたか」と聞くと、こう返ってきた。

 「大会の話の前に、ヒノのことを話したい」

 空手ウクライナ代表の事前キャンプを受け入れた、東京都日野市のことだ。

 東京で受けた温かいもてなし、五輪本番の忘れられない体験、メダルを売ることを決めた時の心境、日本に伝えたいメッセージ。ホルナ選手は記者に思いを語ってくれました。そしてメダルを落札した日本人男性から届いた驚きのメッセージを最後に明かしてくれました。

 空手のウクライナ代表は五輪の…

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